Fingerprint / 
twist
- フィンガープリント / ツイスト -
正面にお互いの指紋とイニシャル、背面に180度捻りと槌目模様を入れた結婚指輪をお作りしました。
素材はPt950で、全体の仕上げはお客様のご希望で鏡面と艶消しの中間(鈍い鏡面仕上げ)というオリジナル仕上げにしています。
  
 
 
 画像は今回の指輪の展開図です。
  
 
 
 メンズは幅3.0㎜で内石はφ1.0㎜のタンザナイトとφ1.5㎜のラピスラズリ、レディースは幅2.5㎜で内石はφ1.0㎜のアイスブルーダイヤとφ1.5㎜のラピスラズリを入れました。
  
 
 
 指紋模様は正面の上半分、上面、内面と3つの面にまたがるという変わった入れ方をしています。
  
 
今回の指輪はお二人の趣味であるテニスもデザインに取り入れています。
180度捻り部分に入っているラインはテニスボールの軌道で、内面を見ると斜めの捻り部分をネットに見立ててお二人がラリーをしている姿になっています。
刻印は金種以外はお客様のお持ち込みで
・寄り添うお二人のシルエット(中心の正方形は新郎から新婦へ送ったフラワーボックス)
 ・大切な記念日を2つ(書体はALEGREYA SC)
 ・筆記体で書いたお二人のお名前の間にテニスラケット
というこだわったデザインになっています。
  
 
 
 こちらがご納品セットです。
  
 
 
 ここからはこの指輪が完成するまでの流れを説明していきます。
  
 
指輪のデザインを決める
当店のオーダーメイドは
 指輪の①幅 ②素材 ③仕上げ(テクスチャー)
 ④石留め ⑤刻印 ⑥基本デザイン(形状)を
 順番に選ぶことで誰でも簡単に
 デザインを決める事ができるようになっています。
打合せではこのサンプルリングを見ながら幅、素材、仕上げなどデザインの詳細を順番に決めていきます。
  
 
サンプルリングは8枚のトレイに約600本を用意しています。(2025年10月時点)
まずは8枚の大きいリングトレイから小さいリングトレイに気になる指輪を移して、選んだ指輪を参考にデザインを決めていきます。
今回は事前に送っていただいた詳細なデザイン画を中心に打ち合わせを進めました。
形状のベースになったのは下記の指紋、カット面、180度捻りの指輪の3つです。
  
 
Fingerprint
指紋は人間の指先にある溝模様の事で一人一人異なり、胎児のときに形成されて一生変わらないという特徴があります。
その人自身を象徴する世界に一つの模様なので、離れていても繋がっているという意味を込めてお相手の指紋を結婚指輪に入れるデザインは定番になっています。
指輪に指紋を入れる方法は
1、WAX原型に指を押し付ける
 2、レーザーで地金に彫る
 3、CADで立体データを作る
という3つが一般的で、今回は3番の方法で模様を入れました。
  
 
 
Equally divide
イクォリー ディバイドは「等分、均等に分割」をモチーフにした形状の指輪です。
写真の銀色リングは幅2.5㎜で
 左上の平打ちリングから表面に5等分線を入れ、
 そこから手作業で出来る模様の見本リングを
 数種類作りました。
この中の一つのカット面が気に入っていただけたのでこの面に指紋を入れてその周りにメンズはY、レディースはMのイニシャルに見えるラインを入れることになりました。
指紋は上半分だと模様の面積が少ないので、初めての試みとして側面、内面にも繋がる模様にする事に決まりました。
  
 
 
Twist
ツイストは
 平面の板を捻ってから丸めることで
 膨らみと凹みが生まれる
 立体的な形状の指輪です。
この中で
 長方形の片側を180°捻って繋げることで
 裏表がなくなる「メビウスの輪」は
 「永遠」を意味するということで
 結婚指輪の定番デザインとして定着しています。
サンプルは幅2㎜(金色)と3㎜(銀色)で
 全7種類をご用意していて、
 指輪の名前の90、180、360などの数字は捻る角度、
 ()内は緩く、きつく、戻すなど
 板の状態でどのように捻るかを表しています。
今回は180度のきつめ捻りに決まりました。
  
 
 
仕上げ
仕上げは全10種類から選ぶ事ができます。
仕上げ(テクスチャー)とは地金の表面の質感のことで、
①鏡面/②艶消し/③荒らし(浅め)/④荒らし(深め)
 /⑤槌目(小)/⑥槌目(大)/⑦岩肌/⑧木肌
 /⑨ストライプ/⑩クロススクラッチ
から選べて、複数でも金額は変わりません。
①鏡面仕上げは使っていくうちに②艶消しに近くなっていきます。そういったユーズド感のある仕上げにしたいということで全体は①鏡面と②艶消しの中間=鈍い鏡面仕上げを入れて、捻りの正面部分だけは⑥槌目(大) にすることになりました。
  
 
 
石留め
店頭では内石用に約40種類の直径1.5㎜石をご用意しています。
今回は内石に新婦様が好きなラピスラズリを入れることになりました。
事前にメールでご相談があり、店頭のサンプルにラピスラズリは無かったので、数件の石屋さんを廻ってご希望のサイズを探してきました。通常の内石に使われるファセットカットがなかったので、カボションカットになります。
ラピスラズリは12月の誕生石でもありますが、結婚指輪の内石になることがあまりないのは硬度が低く、汗や酸などにも弱いためです。新婦様にはそのあたりをご説明して、留めた後は上から透明樹脂でコーティングするご了解をいただきました。
  
 
 
ラピスラズリは「石」を意味するラテン語の「ラピス」と「青」を意味するアラビア語の「ラズリ」を組み合わせた名前の宝石です。和名では仏教における七宝の一つにちなんで「瑠璃(石)」と呼ばれます。
瑠璃色(紫みを帯びた濃い青色)にバイライトと呼ばれる金色の粉を振りかけたような見た目は夜空を彷彿とされるので古くから人気があります。最も有名な産地はアフガニスタンで6000年前から採掘されていました。
芸術の分野でもラピスラズリは有名で、フェルメールの「青いターバンの少女」に使われた絵の具はラピスラズリを砕いた物が使われています。この絵の具は「ウルトラマリンブルー」と呼ばれ、当時は同量の純金よりも高価だったと言われています。
  
 
この打ち合わせ後に
・捻り部分の複数にまたがる面にボールの軌道
 ・ボール部分に直径1.0㎜に宝石を石留め
 ・捻りの横幅サイズを選択
 ・イニシャルの半円ライン部分をなくす
 ・刻印の配置変更
等の変更があり、
  
 
 
 最終的に決定したデザインが上記のイラストになります。
  
 
原型データ制作から樹脂造形まで
指輪の制作方法は大きく分けると
1、鍛造(たんぞう)
 2、WAX原型/鋳造(ちゅうぞう)
 3、シルバー原型/鋳造
 4、CAD・樹脂原型/鋳造
の4つがあります。
現在、オーダーメイドでは
・人の手では難しい細かいデザインが制作可能
 ・デザイン画から原型ができるまでの時間が短い
 ・PC上で好きな角度から形状の確認が出来るので、
  出来上がりとのイメージの誤差がない
 ・原型修正が簡単で早い
といった理由で主にCAD・樹脂原型/鋳造で制作を行っています。
  
 
 
 原型データの制作はまず指紋部分から作っていきました。
  
 
 
 指紋模様は正面の上半分、上面、内面と3つの面にまたがる形状に指紋を切り取って、
  
 
 
 平面の棒状に模様として入れてから指輪状に丸めていきます。
  
 
 
 指輪にしたデータ確認で変更があり、イニシャルの半円ライン部分をなくして、縦のラインだけ残すことになりました。
  
 
 
 画像のよう平面図に戻って修正してから指輪データにしていきます。
  
 
 
 捻りの部分は10、13、16㎜の3つの範囲から1つを選んでもらい、
  
 
正面以外の3つの面にまたがるテニスボールの軌道を入れて180度捻っています。
この後のメールでの打ち合わせでこのテニスボール部分には1.0㎜の宝石を入れることになりました。
  
 
 
 
 こちらが完成した原型データです。
  
 
樹脂造形から指輪の完成まで
宅配で樹脂原型を確認していただいたら指輪の完成まで進みます。
CADデータを3Dプリンターで造形、樹脂原型からゴム型を取って、WAXパターンを取り出し、
  
 
貴金属で鋳造、サイズ出し、テクスチャー入れをします。
  
 
今回はラピスラズリは石留め後に透明樹脂でコーティングしました。主に汗で宝石が劣化する事を防ぐためですが、こうすることで石座の隙間に汚れが溜まらなくなります。
レーザ刻印を入れてさっと仕上げたら完成です。
  
 
 
 
 こちらが出来上がった指輪です。
  
 
指輪のお渡し

 今回の指輪は指紋と捻りのどちらも正面として使えるので、メインの写真は2方向から撮影して1つにまとめました。特典のフォトブックにはこの画像を表紙に使っています。
  
 
 
 こちらがご納品したリングセット一式です。
制作過程で出来た原型などは木箱に入れてお渡ししています。
  
 
ご納品時には記念撮影をして、特典のフォトブックは後日発送しました。
デザイン上のポイントは
・複数の面にまたがるお互いの指紋
 ・指紋部分はよく見るとお相手のイニシャル
 ・結婚指輪では珍しいラピスラズリの内石留め
 ・全体は見本にはないユーズド感のある鏡面仕上げ
 ・180度捻り部分の正面だけ槌目仕上げ
 ・180度捻り部分をネットに見立てて、
  複数の面にまたがるテニスボールの軌道
 ・テニスボール部分にお二人の好きな宝石
 ・ボールに見立てた〇模様と宝石部分の横に
  ボールを打つお二人の姿の刻印
 ・お二人の名前の刻印に間にラケット模様
というように数が多いので、全8ページのフォトブックはご両親へ見せるときに説明書の役割も果たせるように通常とは変えたレイアウトで作っています。
  
 
 
 
 今回のこだわりが詰まった指輪は新婦様がラインに画像を添付して具体的に指示して下さったので、修正などもスムーズにご納品まで進む事ができました。
当店のオーダー結婚指輪の特徴は
1、お客様がデザイナーになれる独自の仕組み
 2、多種多様なサンプルリングを用意している事
の2つです。
お客様が当社のサイトを読み込んで、デザインについて深く考えて下さったおかげで素敵な指輪を作ることができました。