【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
以前に婚約指輪をお作りした海外のお客様から結婚指輪のご注文を頂きました。
素材はプラチナ950と18金ピンクゴールドの上下コンビリングでメンズは幅3㎜、レディースは2㎜で作らせていただきました。
新婚旅行に行くまでに受け取りたいということで納期は約3週間のスピード納品となりました。
今回はこの指輪のご納品までの流れを書いていきます。
打合せ
最初の打ち合わせはお二人でご来店されました。
作るサイズを確認して
・指輪の幅はメンズ3㎜、レディース2㎜
・厚みは両方とも1.5㎜
・素材はプラチナ950とK18ピンクゴールドのコンビ
・デザインは上下かギメル
というところまで絞れたので、後でデザイン画とお見積りをメールでお送りしますとお伝えしました。
メールでは
1、上下コンビ
2、ギメル
だけでなく、
3、ギメルの溶接(上下と捻りのコンビ)
4、ツイスト(7種類)のコンビ
という打ち合わせになかったご提案もしました。
このお見積りだけでなく、レーザー刻印の見本もPDFにしてお送りしました。
この段階では正面に向けるコンビ部分が上下と捻りの2種類から選べる2か3に決まるかなと思っていました。
その後、お客様から1、上下コンビに決めたというご依頼をいただきました。
正式なご依頼となったので試着リングをご用意します。
2回目のご来店
打合せ時にサイズ確認用の試着リングはメンズはシルバー、レディースは真鍮と指定があったので出来あがりと同じ寸法で地金板を丸めて作っておきました。
その後、試着リングの受け取りに男性だけでご来店されました。
ハネムーンで日本を離れるので納期が約3週間後ということで試着期間は3日間でサイズ確認のメールをいただくことになりました。
刻印をどうするかはその一週間後までには連絡を下さいとお伝えしました。
後日、男性のお客様がサイズが少し大きかったのでゲージで再確認をしたいとのことでご来店されました。
リングゲージで測り直してメンズとレディースはサイズを0.5号小さめ、腕の厚みは1.5㎜から1.3㎜へと変更になりました。
写真赤字部分が修正箇所です。
他にも、結婚指輪は試着リングよりも表面の角を丸くしてほしいという変更点もありました。
この点を踏まえて原型を作り直します。
ちなみにお客様からサイズの測り直しの連絡があった時から指の関節の出た方だったので写真のようなサイズ調整パーツを考えました。
厚み1.5㎜なので指輪の内側に凹みを作るジョイントは強度が不安なので上の写真のような3パターンから選んでもらう予定でしたが、結果的にサイズを0.5号小さくするだけの変更に落ち着きました。
指輪を作る
今回の指輪はシンプルなので鍛造、WAX原型・鋳造、シルバー原型・鋳造、CAD/樹脂原型・鋳造のどの作り方もできます。
シンプルなので何か意味を持たせる方法と考えてイラストのようにメンズとレディースを重ねた状態で鋳造してカットして交換することで「同じ原型から取り出した地金を交換、共有する」という意味を持たせることにしました。
CADで原型データを作って樹脂原型を造形します。
WAXパターンでのサイズ直しはナシで仕上げでのヘリを考えて幅と厚みは0.2㎜プラスで作りました。
出来上がった樹脂原型のゴム型を取り、WAXパターンを取り出してプラチナとピンクゴールドを鋳造します。
左から樹脂原型、WAXパターン、Pt950、K18ピンクゴールドです。
早速、メンズとレディースのコンビリングを作っていきます。
まずはPt950、K18ピンクゴールドの指輪を上下でカットします。
側面の片側をヤスリで軽く整えて、金床でその片側を木槌を使ってまっ平にします。
ヤスリで平らにした面をサンドペーパーで整えます。
からげ線で巻いて固定してプラチナとK18ピンクより融点の低い金ローで上下を溶接します。
ロー目の出っ張りを削ってから芯金に入れてサイズ出しをします。
ロー材が流れ切ったあとに段差や隙間になっている部分はリベッターと呼ばれる電動の回転ヘラを使って段差を潰してから仕上げます。
あとは内面を磨いてレーザー刻印を依頼します。
お客様から送っていただいた画像をこちらで刻印データに変換します。
刻印を入れ終わったら全体仕上げ直して完成です。
サイズの違いが大きいので画像のように収納することができます。
ご納品準備をする
指輪が出来上がったらご納品準備をします。
こちらがご納品前です。
お渡し品は写真の木箱に入れていますが、婚約指輪の場合と違い、結婚指輪の場合は2つのケースでスペースを大分取るので小さい額は省きました。
試着用の真鍮とシルバーはミニリングケースに入れました。
店内でのお渡し風景を撮影したら画像修正をして全8ページのフォトブックを作りました。
まず、1、2ページ目では地金の種類やどんなコンビリングがあるかなどの打ち合わせの内容をまとめます。
3~6ページ目で原型制作から仕上げまでの加工工程、
7、8ページ目で出来上がった指輪とそのお渡し風景としました。
今回は納期が短くなったことと初回のお見積りでしかお二人で来られなかったのでお二人の写真は入れていません。
こちらがご納品前の写真です。
まとめ
上下コンビリングのご納品が終わりました。
オーダーメイドで凝ったデザインが可能な中で平打ちの上下コンビというシンプルな指輪をご希望だったので「同じ原型から取り出した地金を共有する」という意味を持たせることで特別感を出すことにしました。
ワークスに投稿する英語名は上下コンビなので
High & low combinationにした後、
Up & down combinationに変更しました。
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