【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
先日、男性のお客様から写真の婚約指輪のご注文をいただきました。
デザインはシンプルですが沢山のお店と比較して当店に決めてくださいました。
そこで今回のブログでは職人さん向けに婚約指輪の打ち合わせをどうしているか等を中心に書いていきます。
ご予約・1回目のご来店
最初はメールでエンゲージリングのご相談予約をいただきました。
この少し前にHPのエンゲージページにはサンプルリングに型番と「打合せの時に見たい指輪があればそれぞれのページにある型番をお教えください。」と入れました。
メールには空枠で見たい形があるとのことでサンプル型番が8つ書いてあったのでご来店までに用意します。
この段階では男性一人か女性と一緒のお二人でのご来店か不明です。
宝石の大きさがおおよそ決めているということで、ダイヤモンドのお持ち込みではないことは分かっているのでルース(裸石)の価格表の用意はしておきます。
それから婚約指輪のお見積りでご来店される方には以下の3つをお渡しすることにしました。
1、ダイヤモンドルース価格表
ルース価格は最近値段を下げました。
理由としてはNETで調べてご自身で仕入れるなどダイヤモンドのお持ち込みの方が多いので指輪自体のオーダー代=材料費+デザイン提案や加工技術料でお代をいただければいいと考えるようになったことなどがあります。
価格を下げたのでダイヤモンドは鑑定書代込みはやめて別途5000円いただくことにしました。
こうすることでご予算内で5000円で鑑定書を付けるか、グレードを上げるかを選ぶことができます。
2、ダイヤモンドグレード表
ダイヤモンド価格表と照らし合わせて見れるように4Cの分かりやすいイラストが入ったグレード表もお渡しすることにしました。
4Cでは書いていない蛍光性についてもまとめてあります。
3、他店一覧MAP
ほとんどのお客様が色々なお店を見てからどこで指輪を購入するかを決めます。
そこで調べる手間が省けるように東京都内、近郊をNETで調べた時のオーダー、手作り結婚指輪のお店の一覧もお渡しすることにしました。
以上の3つはホームページ上ではすでに公開している内容です。
安い買い物ではないので家に帰ってからじっくり検討できるようにプリントアウトして渡すことにしました。
最初の打ち合わせ
男性一人でのご来店で
・婚約指輪を贈ることを彼女さんは知っている
・彼女さんが欲しい形は決まっている
とのことでした。
ご来店時には相当たくさんのお店を回られたそうでダイヤモンドのグレードのこともわかっていて作りたい形も決まっていたので打ち合わせはとてもスムーズでした。
お話しているとご希望のデザインの画像をお持ちということで見せていただくことができました。
某有名海外ブランドの指輪で写真のような4本爪で中石を留めるソリテールで指輪の3分の2にダイヤモンドが入ったデザインでした。
その日の打ち合わせでは婚約指輪の基本料、脇石ダイヤに留め代が1ピースと金額の説明をして指定サイズで希望のデザインを作るといくらになるか後日メールするというところまで終わりました。
お見積りのメールを送る
CADを使って脇石ダイヤモンドが何ピース必要か計算します。
・指輪の3分の2まで1.5㎜のダイヤモンドを入れる場合は20PC必要(中石は直径4㎝、0.25ctで計算)
という見積りがでたのでお客様にメールをお送りします。
これでご予算からいくらの中石ダイヤモンドを選ぶことができるかもわかります。
あとはご予算に合わせたダイヤモンドを探してお見積りメールをお送りします。
ダイヤモンドは業者用のWEBサイトではなく御徒町のダイヤモンド屋さんで写真を撮らせてもらい、ご予算に合わせて良いものを7石を選んでおきました。
若干、ご予算オーバーでもご提案すると決まることがあるので入れておきます。
今回は④0.303 F VS1 3EXに決まりました。
重さもギリギリ0.3キャラットを超えていてカラーレスギリギリのFカラーと価格とグレードのバランスもいいです。
石座側面の形
ご希望デザインの側面の形は写真がないということでこちらで調べてお送りしました。
デザインは①の形とほほ同じだったのですがお客様から他のデザインはないかという返信が来ました。
そのブランドのデザインがお好きでなかったようなのでこれならオーダーメイドで作る意味もあります。
①爪だけの石座
②爪と石座の合体型
③爪と石座の一体型
④爪と石座の合体型(透かしあり)
など定番の4つの画像と説明を書いてを添付して、お相手の誕生石を入れるご提案などをしました。
1から2㎜程度の宝石が入るだけなので金額もそこまで上がりません。宝石価格のリンクも貼ります。
メールには書いてありませんでしたが、もっと個性的なデザインをご希望かもしれないので商談ファイルで使っているPDFで2枚ほど提案しました。
最終的に中石の石座は①、脇石の数はハーフになるように片側7ピースに決定しました。
ハーフにすることに関してはこちらからは何も言っていませんでしたが、指輪の正面から見える脇石は半分までなのでそれ以上の脇石を増やすよりも中石の大きさや品質を上げるほうが個人的にはおすすめです。
デザインが決まったのでCADで原型データを作っていきます。
原型データを作る
以前作ったハーフエタニティリングのCADファイルを開きます。
ここに石座のファイルをインポートします。
今回は見本デザインがあるのでそれをもとに石座を作っていきます。
平面を立体の指輪にしてデータを完成させてお客様に4面図と360度好きな角度から見える原型データ、お見積り、納期と利用規約もメールでお送りします。
ここまでは無料で原型造形から正式なオーダーとなることをお伝えしてご返信を待ちます。
後日、お客様から正式なオーダー依頼のメールが届いたので、樹脂原型の造形とダイヤモンドの仕入れ、鑑定書の手配をします。
2回目のご来店/原型確認
お客様に樹脂原型と鑑定書を取ったダイヤモンドを見ていただきます。
イメージ通り出来上っていたとのことで、修正の必要もないので次回がご納品となります。
原型確認じは内側のレーザー刻印はまだ決まっていませんでした。
後日メールで送って下さるということで商談ファイルで使っている刻印見本をPDFにしてお客様に送りました。
樹脂原型の確認が終わったらゴム型をとって地金に鋳造します。
仕上げと石留めをして、
届いた写真をデータにします。
こちらの筆記体はお二人のイニシャルを一つにしたものだそうです。
元の写真は影があったので画像修正してからイラストレーターでレーザー刻印が打てるアウトライン化したデータに変換しています。
刻印を打って仕上げたら完成です。
3回目のご来店・ご納品
こちらがお渡しする指輪のセットです。
以前の公開した八角形エンゲージリングでは
蓋が取り外しできる桐の箱に入れてご納品しました。
今回からは
WAXパターン、シルバー、樹脂原型などと一緒にロゴ入りの金具での開閉式の木箱に指輪を入れることにしました。
ロゴはトートバックのデータで作ったスタンプで押しています。
今回から額に入れた4面図も入れることにしました。
こちらがご納品前の写真です。
ご納品後にはメールでご注文のお礼と今回の制作過程でできた写真をお送りしました。
以上がご納品までの流れです。
まとめ
今回はシンプルなデザインですがお客様曰く、探すとなかったそうでオーダーメイドとなりました。
加工的にはあまり書くことがなかったのでご予算内に納める提案方法やオーダーの流れに焦点を当てて書いてみました。
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