【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
ポージーリングに結婚指輪アルファベットブロックのコンビタイプと
植物の蔓(つる)をモチーフにした指輪で上下に重ねると文字が現れるタイプの2つを作りました。
今回のポージーリング②では前回の流れからこの2種類のポージーリングができるまでを説明していきます。
前回のポージーリング
ポージーとは詩を意味するフランス語で、ポージーリングとはその名前の通り、メッセージなどを彫った指輪の事です。
13世頃から始まったとされるほど歴史があり、指輪の内側に文字刻印を入れた指輪もポージーリングと呼ばれることがあります。
前回はこちら↓
オーダーメイドの指輪を作る過程#095ポージーリング
前回は店頭で用意している結婚指輪のメッセージ刻印サンプルは平成元年生まれで一番多い名前の翔太さんと愛さんのイニシャルを取ってSとAを入れているという話から
CADでの記念日とイニシャルの上下分割デザイン、
書体を変えたカリグラフィーリング、
結婚指輪の新型としてオリジナルのブロックはAlphabet block(アルファベット ブロック)、
点字を意味するBraille(ブレイル)、
モールス信号を意味するMorse code(モールスコード)の3つをそれぞれ結婚指輪ページに投稿した話をしました。
この中でAlphabet block(アルファベット ブロック)はアレンジ例として文字の部分だけを異素材にするコンビリングを作ることにしました。
新型ポージーリング①
こちらが完成したコンビ素材のアルファベット ブロックリングです。文字のパーツは板で繋げて後ろから差し込む仕組みにしています。
以前にお客様からこの指輪のように文字部分だけ別素材のデザインで嵌め込んだ甲丸リングを作れないかというご相談がありました。
その時は表面に文字部分の凹みを作り、そこに文字パーツを嵌て溶接するという制作方法を考えていたのでご希望のデザイン通りに作ると文字数分のパーツを作り、溶接するので金額も高くなったこともあり、ご依頼とはなりませんでした。
また同じようなご依頼がある場合に備えておきたいという事で、写真のような裏から差し込むタイプを作りました。このデザインなら文字パーツは1つで済んで、溶接個所も少ないので金額もそこまで高くなりません。
それではここからは制作方法とHPにUPするまでを説明していきます。
まずはアルファベット ブロックリングをベースにCADデータを作ります。
文字は同じ「S AND A」で作りますが、パーツを差し込む関係上、「N」は強度が弱くなりそうな中心の溝部分を太くして「S」は文字が視認しやすいように横の溝を深めにしました。
文字が決まったら平面上で膨らませた文字の下に板を取り付けてリング状にカーブさせます。
指輪の下から文字パーツを差し込めるように微調整をして、
データが完成したら樹脂造形に出します。
パーツの部分だけを他の原型と合体させて、ワックスパターンなって戻ってきたら必要な部分だけ切り出して、
ワイヤーワックスで腕を作り、指輪と文字パーツは1つにまとめて真鍮で鋳造します。
3本あるうちの一番右側は、
指の関節が出ている人用に結婚指輪ジョイントのパーツと合体させました。
真鍮にしてから文字パーツを差し込み所まで仕上げたのですが、ジョイントに比べて指輪表面より高い文字パーツは指の横から差し込むことはできないことがわかったので今回は写真の未完成の状態で終わらせました。
最初に予定していたコンビ素材の2本はできたのでHPにアップします。
文字部分が裏からの嵌め込みコンビリングということが分かる写真をアイキャッチ画像にしてAlphabet block / inlay(インレイ)という名前にしてWORKSのページに投稿しました。
Inlay(インレイ、インレー)とは、一つの素材にそれとは別種の素材を嵌め込む技法の事で、
日本語では象嵌(ぞうがん)と言って象が「かたどる」、嵌が「はめる」を事を意味します。
結婚指輪のコンビリングは一部、ハーフ、上下、内外が定番です。
今回作った象嵌(ぞうがん)コンビはこれまでになかったのですが、
加工の手間もそこまでかからず、溶接個所も少ないので追加料金は20000円にしました。
画像のように文字は膨らませずに、リング表面と面一(つらいち)にすることもできます。
新型ポージーリング②
2つ目の新型ポージーリングは上下に重ねると文字が現れるタイプです。
この後に公開予定のブログで説明しますが、生命力が強く途切れることなくを伸びることから繁栄・長寿などの意味を持ち、縁起の良い植物とされる蔓(つる)をモチーフにした結婚指輪の新型を追加しました。
通常であれば一周同じ模様なのですが、以前に作ったカリグラフィーリングで指輪表面に対して文字が凹んだ植物文字を入れたので新型の蔓(つる)モチーフリングには一部に立体的に膨らませてた「S&A」を入れることにしました。
幅3㎜に立体で植物文字の「S&A」は細かすぎて見ずらいので上下分割タイプとして作ります。
手順としては最初に蔓(つる)模様を作ってそれに合わせて「S&A」の植物文字を作っていきます。
&の右上には隙間があったので、2本を重ねた時にレディースの指輪ということもあるので同時期に作っていた花のパーツを配置しました。
あとは先程と同じようにパーツ部分だけ造形してワックスパターンになってから組み立てて仕上げます。
出来上がりはこのようになります。
このポージーリングは新型の結婚指輪Vineのページでアレンジ例として説明しています。
まとめ
2つの新型ポージーリングについては以上です。
この2種類の指輪も初めてHPを訪れたお客様には見てもらいたのでTOPページのフォトギャラリーに画像を入れてリンクを貼ったカリグラフィーのページでも説明しています。
前の記事 | > View More |
次の記事 | > View More |
職人向け 記事一覧 | > View More |