【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
結婚指輪ページに新たな植物モチーフリングとしてペイズリー、ブドウ、蔓(つる)、そして12か月分の誕生花を入れた指輪を追加しました。
花や草モチーフにした指輪表面への模様や内側の刻印は結婚指輪では定番です。
そこで今回はこれまでに作った植物モチーフの指輪と合わせて、新しく作った植物モチーフの指輪をHPで公開するまでを説明していきます。
これまでに作った植物リング
Laurel & mill
「ローレル」は月桂樹のことでギリシャ神話でも神聖視された植物です。古代ローマでは栄光や勝利の象徴としてこの月桂樹で編んだ冠を勝者に送る慣習があったと言われています。
「ミル」は正確にはミルグレイン、ラテン語で「千の粒」という意味で連なった小さい粒は永遠や長寿などを表します。
その結婚指輪では定番の2つを合わせた縁起の良いローレル アンド ミルは従来の手作業ではなく、CADで作ることで正確な左右対称性を出しています。
Laurel wreath
ローレル リースは結婚指輪では定番モチーフのローレル(月桂樹)を冠(リース)にした月桂冠(げっけいかん)の指輪です。ローレル自体は基本デザイン ヒストリカルのローレル&ミルと同じ柄を使っています。
側面に模様があるので模様を目出たせ過ぎないさりげなさがあります。
Arabesque
アラベスクは蔓(つた)植物モチーフの図案を繰り返した指輪です。
「アラベスク」という言葉は元はフランス語でアラビア風という意味で、イスラム美術における植物などの規則的な装飾模様を指します。
「透かし」の唐草模様のみでは服などに引っかかるので強度を補強する目的も兼ねて上下から淵(フチ)になる板を重ねました。
Hawaian engraving
ハワイアン エングレービングはハワイアン彫り、洋彫りとも呼ばれ、専門の職人が1本ずつ丁寧に模様を彫ります。
ハワイアン エングレービングの模様は写真のスクロール&リーフを含め、定番の4種類をご用意しています。
この彫りは外部の職人さんに依頼するので別料金がかかります。
Wheat
Wheat(ウィート)とは麦のことで西洋では聖書にも登場する特別な意味のある植物です。
結婚指輪に模様として彫ったり、内側に刻印として入ることも多いこの植物をオリジナルデザインで作りました。
以上がこれまでに用意していた植物モチーフの指輪です。
新たに作った植物リング
制作方法はこれまでと同じで上半分だけ原型を作って、一つにまとめてWAXパターンでパーツの切り出し、リングにして鋳造に出してから仕上げています。
Grape
まずはブドウ柄です。
キリストは十字架に磔となる前夜に12人の弟子を集めた最後の晩餐では弟子たちに向かって食卓にあったパンを自身の肉体として、ワインを血として弟子たちに与えたことからイエスの死後、血と肉の代わりにパンを食べ、葡萄酒を飲むことで、信仰を固める行為である「ミサ祭儀」が行われるようになったそうです。このことからキリスト教ではパンの原料である麦だけでなく、ワインの原料であるブドウも特別な植物もなっているそうです。
ブドウもジュエリーや指輪の刻印に入ることが多いモチーフの一つなので結婚指輪の模様として作ることにしました。
こちらが制作風景です。
ブドウだけでなく、蔓と葉っぱも入れて立体感のあるアンティーク調の指輪にしました。
指輪の名前はグレープです。
Paisley
2つ目はペイズリーです。
勾玉(まがたま)形等が集まった「ペイズリー」模様は19世紀にスコットランドのペイズリー市でこの柄の織物が量産されるようになったことで一般に広まり、優美な曲線や模様の繰り返しにより人に安心感を与える効果があると言われています。
ペイズリー自体の起源は古く諸説ありますが、植物の種子、果実、胞子、花弁、菩提樹の葉、ゾウリムシやミドリムシなどの原生動物がモチーフとされ、発祥といわれるイランやインドでは尾を引いた形が胎児に似ているので生命力と結び付けられた意味のある模様として考えられたそうです。
結婚指輪の模様では見かけませんが、ペイズリー自体は有名な模様なので追加することにしました。
このペイズリーの勾玉柄をシンプルな形状で数パターン作り、ランダムに配置して指輪にしました。
写真の指輪は幅3㎜で、ペイズリーが一周模様として入っています。
地金は単色なので形状の違う模様がランダムに並んでいてもさりげなく、そこまで目立ち過ぎません。3㎜よりも幅広での制作も可能です。
Vine
3つ目は蔓(つる)をモチーフにした指輪です。
同じ蔓(つる)の模様はすでに先ほど出てきたアラベスクの指輪があります。この指輪は「透かし模様」の見本でもあるので刻印や内石は入れることができません。
結婚指輪としては刻印や内石が入るデザインもあったほうが良いと思い、出来たのが写真の指輪「バイン」です。
最初はアカンサスという葉をモチーフにした模様リングを考えていました。
アカンサスは鋸歯状の葉でBC400年頃からギリシャで装飾模様として用いられた唐草モチーフの一つで家具や建築でよく見かけます。
最近の指輪の作り方はこの用語辞典からどんな指輪、模様があるか調べて、
NET検索で画像検索、それを参考に結婚指輪としてお客様におすすめできるサンプルを作るという流れで完成させています。
NETでアカンサス模様の画像を集めたら、平面で3㎜幅の指輪模様を作っていきます。
立体まで作ってはみたもののイマイチだと感じたのでアカンサス模様は止めて、クルクルした形が似ている先ほどの蔓(つる)模様の指輪に変更することにしました。
蔓(つる)と葉っぱの組み合わせで数パターン作り、
前回触れたポージーリングの模様も作っています。
このポージーリングはメンズとレディースで蔓模様を変えようと思い、2本の蔓が絡み合うデザインも作りました。
これでポージー入りの蔓模様リング2本と一周に蔓模様が入ったリング2本が出来上がりました。
HPにアップするので改めて蔓(つる)とはどういう植物か、蔓(つる)と蔦(つた)の違いなども調べて、
指輪の名前は英訳のバインにしました。
Flower
最後は花の模様です。
これは誕生花12か月分も入れているので制作に最も時間がかかりました。
花の模様としてはハワイアン エングレービング の彫り模様があります。
これは外部に依頼するので別料金、追加納期がかかる事と模様も4種類と少ないので膨らみタイプでより種類の多い花模様を作ることにしました。
画像のようにレディースは花弁の形と数が違う6種類の花が等間隔に並ぶデザインで、メンズはその花と葉、枝がランダムに敷き詰められた模様リングを作りました。
当初は誕生石のように誕生花というものがあるので12か月分の花が指輪を一周覆うデザインで考えていました。ただ、この誕生花は花の種類はたくさんあるので1~12月ごとにひとつと決まっていません。
そこで特定の花の種類は決めずに花弁の形と数を変えて花ということが分かる模様で指輪を作りました。
こちらが制作途中の画像です。
6種類の花が等間隔に並ぶ指輪は女性向けと感じたので、葉や枝を足して、花も小さくして男性が着けていても違和感のない花輪(リース)をイメージしたデザインにしました。
この指輪の制作中に花の刻印サンプルも作っていて、将来的に12か月分の誕生花データは作る予定だった事と特定の花で作る場合にお客様には実際のものを見てイメージを掴んでもらいたいと思ったので指輪を追加で作ることにしました。
まずは厳密に決まっていない誕生花を花屋さんのサイトなどを見て一覧表にします。タトゥー関係のHPにも誕生花一覧があったので参考にしています。
誕生花 | 日本語 | 英語 |
1月 | カーネーション | Carnation |
2月 | チューリップ | Tulips |
3月 | フリージア | Freesia |
4月 | マーガレット | Margaret |
5月 | (ピンク)バラ | Rose |
6月 | アジサイ | Hydrangea |
7月 | ユリ | Lily |
8月 | ヒマワリ | Sunflower |
9月 | リンドウ | Gentian |
10月 | ダリア | Dahlia |
11月 | デイジー | Daisy |
12月 | ポインセチア | Poinsettia |
桜、梅、椿などの和風イメージの花ではなく、出来れば洋風のイメージで、誕生花を12か月分選んだイラストがこちらです。
それぞれ「花の名前 イラスト」で検索、
画像表示でスクリーンショット、
これを12か月分用意して、
一つの花につき、参考にする画像はスクリーンショット画像1枚でたくさんある画像からその花の特徴を選んでスケッチして完成したのが先ほどの誕生花の画像です。
12か月分を選ぶのが難しかったので、花に詳しい知人に聞いたりもしました。画像は今回の原型制作には間に合わなかったのですが、メールで送ってもらった誕生花候補です。
これに最初に作った花の模様のリングのように葉や枝を足していきます。
画像はリング状にする前の平面図です。
原型は画像のように半分ずつで出して合体させます。
1~12月まで順番に並べた誕生花の指輪はどの角度から見ても違った模様が入ります。
指輪ができたらマリッジページにUPします。
名前はそのまま「フラワー」で、
このページにはこれまで作った植物モチーフリングの一覧と簡単な説明も加えておきました。
植物モチーフリングの一覧も兼ねたこのページはTOPのフォトギャラリーにもリンクを貼りました。
まとめ
これまで作った植物モチーフリングの説明もあって長くなりましたが、植物&誕生花リングについては以上です。
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