ジュエルクラフト東京

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オーダー結婚指輪を作る職人用
接客で必要な技術③

前回のパソコンに続いて大きなテーマで書いています。

必要な技術の2つ目は書くことです。

自分は文章を読むのは好きですが書くのが苦手です。
加工手順や仕事の資料などは必要なので書いていますが、特に感情を入れた文章を書くのが苦手です。

ホームページの更新も仕事なのでしていましたが、加工工程や金額の内訳などの「情報」などはいいのですが、お客様の「想い」などを文章にして事例として上げるのが本当にイマイチでした。

前回も書きましたが、もともとアナログ派なので道具や手作りに興味があるのですっとパソコンを触るなんて・・・と同様に書くこともしたくないと思っていました。

職人の大多数は「作り手であってデザイナーではないから考えるのは好きではない」、「作ったもので語るから言葉はいらない」ではないかと思います。

そもそもどうやればやる気を出してもらえるか、パソコンでも書きましたが文章を書くことの利点と書かない事での不利益がわからないと始める気もおこらないと思います。

いざ、書くならどうやって、何を書くのか、これが今のところ正解ではないかと思っていることを書きます。


写真のミニノートはこの業界に入ってからつけていた仕事ノートです。

基本は技術的な事が書いてあります。

ちなみに自分はメモを取りますが、昔の職人さんはメモを取ると先輩から見て覚えるように言われたそうです。
なので年配の人だと知識はすべて頭の中です。

自分のいた職場はそこまで厳しくありませんでしたが、さすがにメモを見ながら仕事をするのは許されないので(よく手順などを忘れてこっそり見直していましたが)同じことを何度も聞いて怒られないように次までに覚えていってました。

メーカーだとほぼ全員が最初に仕事を覚えるときは先輩の説明を聞き、作業を見ながら字が汚い事と話に集中するために素早くメモして仕事のあとに綺麗にまとめて書き直していました。
そうすることで復習にもなるのでこの方法がベストだと思っていました。

同年代の職人さんはこういう方は多いのではないでしょうか。
この方法を30歳くらいまで続けていました。

この方法は良くない。

と、今ははっきり言えます。

どうすればいいかですが、メモをとったら

パソコンでまとめる

です。

ここで接客に必要な技術①のパソコンが出てきます。

パソコンの利点は文章を書く機能以外に今後ホームページを自分で更新するための写真の画像修正、イラストを描く、NETをつないで他社のホームページと自社の比較、CADが使えるなどがあります。

これらの機能と組み合わせて文章を書くことで手書きでは到底及ばない商談資料や見やすい仕事ノートを作ることができます。

そんな当たり前の事?と思う方もいるかもしれません。

ただ、最初に入った会社の先輩や同僚がデジタルに強い人でない場合、パソコンの事は言いません。

そして今までの職場を思い出してみてもジュエリーを作る職場ほど周りは口頭で手書き文化でした。

パソコンを使わないのは便利さと長い目で見た時のその利点を知らないからだと思います。

自分もそうですが本来、ものすごいアナログ人間です。

同僚などを見てもジュエリーを作りたいという人はその傾向がある気がします。なのでパソコンの話には結構拒否反応を示します。

ただ実感として手書きで書くことと比較したパソコンで書くメリットは

・早くて書けて読みやすい
・疲れないので量が書ける
・修正が楽
・作った文章を他の人に配ることができる

などがあります。

自分も教える立場になったときにそのメリットに最初は気が付かず教わったように口頭で伝えていました。

ただ、自分が書いたメモを思い出しながら話しても伝え漏れ、メモを取った側に確認すると書き漏れがあったりと、下手な伝言ゲームのようになっていました。

教える側になったときに自分の覚え方は「誰かに教える」ということを考えていない覚え方だったことに気が付きました。


それからはメモの内容をパソコンでA4の紙にまとめて渡して、実際に仕事を見せて必要なら余白に書き込んでもらうようにしました。

この方法も最初は感覚を言葉で伝えるのは無理だし、仕事を覚えるのは自主性が大事、見て盗むくらいの気持ちを持っている人間は仕事の覚え方まで指示されたくないのでは?と、思っていました。(自分も先輩からメモを取るなと言われた時はそう思いました。)

ただ、こちらで内容を紙にして渡すことでこちらの伝え漏れが防げ、聞く側が必死になってメモを書いたり、後で清書する手間が省けます。

また、最初は手間ですが一度作っておけば、次に新しい人が入ったときに作業前に渡して予習してもらえれば、相手も準備ができているので教える時間の短縮になり、さらにスムーズに伝えられます。

そして人に伝えるときにどうすればわかりやすいか考えるので自分のためにもなります。

本当は教える側はデータで渡して、聞いた側が自分の意見などを加えて返してもらい確認するなどすれば、相手の理解度も分かり、自分の伝え方、書き方が悪かったことも分かります。
作ったデータは社員全員で共有することもできるし会社の財産にもなります。

ちょっとショックだったのは自分は工夫で考えついた内容はほとんどがパソコンの話で触れた職業訓練指導員の講習会で「正しい指導法」としてすでに分厚いテキストにまとめてありました。

講師の方が昔の「見て盗む」は古い!と言って資料を配り、パワポを使い、説明しているのを見て、もうちょっと早く知っていればと思いました。

あとはこの文章を書いているときもそうですが、順番に書いているのではなく、自分は思いついた文章をバラバラにしておいて最後に並び替えて修正して書いてます。

コピーして文章を挿入する、並び替えるということも手書きではできません。

書いて覚えることに関しては、今の大学生は教授の板書をカメラで撮るのでノート自体を取らないそうです。

昔の感覚からすると「けしからん」という気がしますが、書いているときは話を聞けないので話を聞くときは書かないというのは理にかなっています。

今の若い人はデジタルネイティブ世代らしいので、ここで触れなくても手書きのノート文化は廃れてパソコン入力に自然と変わるならここで言わなくてもいいのかもしれません。

独立を目標にする人のほとんどはいずれは自分のホームページを持つことを考えていると思います。

サイト自体はWEBの会社に頼んでもHPの文章は自分で考えることになります。

指輪と写真だけで他との差異を出すのは難しいので言葉で説明することが必要になってきます。

パソコンで文章を作っておけば、内容によってはこのブログのようにだれかに教えるための内容はHPにそのまま転用することもできます。

結論としては独立も視野に入れるなら、覚え方は誰かに教えることも考えて手書きでメモやノートではなく、

メモ→パソコンでまとめて印刷

に切り替えるほうがいいのではないかと思います。

以前の職場で新しく入った人にも同じ過ちはしてほしくないので、仕事で覚えたことは手書きではなく、パソコンで書く方が良いという話はしていました(強制はしてません)。

ただ、自然とそうなってもらえるように最初にいた会社の先輩のことを引き合いに出して説明していました。

最初に入った会社では自分の直属の上司は60代、役職は石留め課の部長職でした。過去には百人以上の部下に指導をした経験を持つベテランです。

腕は素晴らしく、留めていた石は大粒のダイヤからタンザナイト、パライバトルマリン、パパラチアサファイアなど高級色石の中石メインで留めていました。金額は高いものだと小売りで数千万円クラス以上もありました。

留めの上手さに関してはIJT(国際宝飾展)でたくさんジュエリーを見てもその部長と同じレベルの留めはほとんどない、そのくらい腕が良かったです。

自分はこの上司から仕事を教わり内容をメモしていました。

その部長と自分が机を並べている前の机に年齢が40代の地金課の課長がいました。大手メーカーでは会社によって変わりますが基本は石留め職と地金職(原型制作など)に分かれます。

その課長は上司から「この仕事は誰でも最初は失敗する、失敗しないのは課長くらい」という、抜群の評価をされていました。

その地金職の課長も石留め部長から一緒に石留めを習うことになりました。

自分はこまめにメモを取ってます。その課長はほぼメモは取らず(覚え方は昔の職人さんです)、後でパソコンでイラスト入りの作業手順書を作って印刷、翌日に部長に合っているか確認していました。

その後課長は「こうやって他の人に説明できるように書くんだよ」と言ってその作業手順書をくれました。

ページ左が自分、右が課長がくれた作業手順書です。

教えてくれた方のノウハウがありもらったものは公開してはいけないと思うので内容はぼかしておきます。

ただ、パソコンができない自分は作業手順書をもらってどうしたかというと言われた通りに「他の人に説明できるようにメモを書く」という方法で仕事を続けました。そうしてできたのが先ほどのミニノートたちです。

今は課長がどういう意図で作業手順書を渡してきたのか分かります。

たぶん、この方法を覚えた方がいいと考えいたけれど、自分の直属の上司ではないので部長の教え方に口を出すようなことはせずに気が付くように仕向けてくれたんだと思います。

「人に伝わる書き方」の方に目が行ってしまいましたが、パソコンという「道具の使い方」も説明しようとしていたんだと思います。残念なことに当時は全く気が付かず、自分が使うようになってそのことが分かりました。今となってはどのソフトで絵をかいて文章を書いたのかも不明です。

もし、今の考え方で当時に戻れるならまずそのソフトの使い方を習って、もっと効率よく仕事を覚えていたと思います。

今は文字はエクセル、絵はCADで画像も貼り付けて仕事ノートを作っています。ただ、ほとんど独学なので習得に無駄に時間を使っていると思います。

自分は教える側になったときに職人仕事であっても、人に伝える場合に手書きで覚えて口頭説明は良くないと気が付きました。

なので、これを読む人はパソコンで文字を書くということをおススメします。

もっといいのは印刷した紙だけ渡すことより、

メモ→パソコンでまとめて印刷して渡す+データも渡す

だと思います。

今になって当時に自分が正しいと思っていたノートで書いて覚えた方法が良くない方法だとわかったように、あくまで現時点で最善ではないかと思う方法の一つです。

というのも、自分がたくさんの会社を回って気がついたことは全てができる神様みたいな人はいないということです。

それぞれの分野で詳しい人を見つけて得意分野だけ学ぶ、それを何社か回って比較する、そこで学んだことを自分でまとめる事が仕事を覚える近道かもしれません。

教える側もベテランになっていれば後輩の前で不安な顔はできないので、俺の言う通りやればいいんだ!というしかない。確かに自信のない人に誰もついていきません。

でも本当は

「自分はこの分野は他の人より上手いけど、ここは詳しくないから他の人から学んで。自分の詳しい分野に関しては教える、でもこれはあくまで現時点の話だから、教えた事を基に自分なりの工夫を加えて考えながら仕事をして自分より上手くなって。」

というべきなんだと思います。

この事は恐らく変わらない考え方なので教えた人達にはこれは印刷して渡すべきでした。

後輩は仕事を覚えるときは全力で信じてみてまずは言われた通りやる。そこからしばらくして他の人の意見も合わせて本当にこれでいいのか自分の頭で考えて自分なりの方法を生み出す。

自分は仕事を教えた人たちに各種マニュアルを作って印刷して渡しましたが、今はデータも一緒に渡して自分で書き換える習慣を身につけてもらう方が正解だったと思っています。

メモ→パソコンでまとめて印刷して渡す+データも渡す

教え方に関してはパソコンで文章をまとめる、そしてデータも一緒に渡す。
この次の段階としてホームページで公開するという方法もあります。

メモ→パソコンでまとめて知識の一部をホームページで公開する

会社に属しているのであれば

・会社に対しては
検索上位を目指して集客目的

・部下に対しては
仕事のマニュアル

・お客様に対しては
技術的に詳しい事などの宣伝効果や商談時に使う

・自分にとっての
確認作業

と4つの利点があります。

メーカーではブランドからの仕事もあるので秘密厳守のために公開することはできません。

ただ、一般のお客様と商談するお店などの場合はどこも了解をもらって加工工程などを公開しています。

自分も管理していた修理リフォームサイトではBEFORE、AFTERと加工の手順ごとに写真を撮りかなり細かく手順を載せていました。
広告費は0円、それでも内容を見たお客様が来てくれました。
そして公開した内容は印刷して商談用のファイルを作り、過去の事例として接客で使っていました。

会社に所属している場合は使う道具などを載せない、もしくは一部しか載せないようにするなど他社にわからない工夫はしておいた上で、公開して良いか上司に聞いたほうが印象がいいと思います。

ただ、できる職人は他の人ができるとわかれば写真1枚から推測して出来てしまいます。逆に言えばすぐわかることは技術とは言えないので公開してもいいかもしれません。

NETで公開するメリットの一つとして教わる側の自主性を尊重して「これを見ておいてね」という方法があります。
NETに上がっているので印刷して渡したものと違い、通勤中などに気軽に見ることができます。

これを読んでいる方がもし今は教わる側でもいずれは教える側になります。

独立するとお客様に説明する必要も出てきます。ほとんどのお客様はそこまでジュエリーの知識がないのでこれはある意味新しい人に仕事を教えるのと一緒です。

サンプルがあればそれで説明できる場合もありますが、オーダーや修理リフォームなどはこちらが提供できるものは何なのか、「目の前にないもの」を説明することになります。

その時知っている内容をすべて口頭で説明する職人とパソコンで自社サイトを使って画像付きで説明したり、もしくは学んだ内容を印刷して商談用ファイルを準備している職人のどちらがお客様にとっていい接客かは言うまでもないと思います。

仕事の覚え方、仕事の教え方、お客様への伝え方、そして最終的にホームページを作るということにつながってくるのでいずれ独立希望で手書きメモ派の方はパソコンで書くという仕事の覚え方に変えることをおススメします。

そして作った文章はホームページで公開するのでパソコンで文章を書くことはいずれ必要になります。

それなら若いうちは技術を覚えることに専念して必要なら独立してから考えるからいいよという人もいると思います。最初は自分もこの発想でした。

早く一人前になりたくて会社でやっていない業務を覚えるために会社が終わって自費で彫金教室に行ったこともありました。

でも、当時に戻れるなら手書きメモをパソコンで書いて文章をまとめてストックしておくことに時間を割きます。

ちょっとイメージしてもらいたいのですが、30歳から職人を目指したいという人に彫金学校の先生は仕事を見つけるのは難しいというはずです。
お給料が安くて家族を養うなど考えると一般的に一人前になるまで10年はかかります。
雇う側も会社を引っ張ってくれる存在になる可能性が高い最初から癖のない若い人を雇いたいと考えます。
頭が柔軟な若いほうが出来るようになるという考え方です。

文章を書くことも同じで30歳から始めるのと柔軟な若いときから始めた人間が30歳になったときではとてつもない差になります。

一般の方同様に最初はジュエリーを作る仕事を手先が器用で才能がないといけないと特別視してましたが、今は正しい手順で数をこなせば自然とうまくなりある程度まで出来るようになるとおもっています。(技能グランプリなどは才能なのかもしれませんが)

最初は文章も同じで特殊な仕事だから頭のいい人が書けばいいと思っていました。

必要に迫られてやってみた感想として文章を書く事も加工と同じだと思っています。
書けばその分、上達します。たくさん書くことでスピードも上がり、頭の中も整理されていきます。

むしろ今は書かないと考えていることはまとまらないと思っています。

そして遅くてもできますが早く始めた方が上達が早いです。

そして文章を書くことが話すことにつながっていきます。

それを次の3つ目の技術、話すことで説明します。

 

 


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