必要な技術3つ目は話す事です。
話す事は会話することでお客様の話を聞いて、こちらも話すというコミュニケーションのことです。
これが技術って・・・と、一般の方が見たら呆れられるかもしれませんが、最初に言った通り、この業界で職人を目指す人は①アナログな人が多く、②難しいことを考えるのが嫌いで③人と話すより作業に没頭したいという傾向があります。
本人は話すことが得意と思っていても一方的に話している場合もあります。
自分もこれが一番苦手で・・・メーカーの時は仕事中は話さないので1日10単語位しか使わない日もありました。
いざ、接客でいろんな年代のお客様と話すと会話のテンポが合わず変な間が生まれたり、今は大分改善されました(笑)
話すことを技術と考えた場合、話すことが下手なら話し方セミナーに通うなど考えると思います。
ちなみに会社でプレゼンセミナーに行かせてもらったことがあります。
その場でお題を与えられて周りの参加者に向かって5分話すという内容でした。
やってみてビックリしました。
その場で考えられない、言葉が出てこないので、全然話せない。
そのあと改善方法も聞きましたが、実践しても大して上達しませんでした。
そのセミナーはいろんな業種の方がいました
ウエディングプランナー、ホテルマンなど普段から話すことを仕事にしている方はその場で考えをまとめて話すことが上手かったです。
自分たちが黙って作る事に時間を使ったようにその人たちは話すということに時間を使ったから出来るようになった。そう考えると話すことも技術ではないでしょうか。
ブライダルマリッジリングの接客に限定していえば大体がお二人でのご来店です。
日常会話はできても聞かれたことに専門知識で応えながら長時間話すというのは普段話し慣れていないとハードルが高い気がします。
自分はその場で考えて長く話したり、言葉で相手にイメージしてもらうということが苦手でした。
オーダー結婚指輪を作る職人に接客で必要な3つの技術①の具体例で触れたメーカーにいた中途採用の方もこれではないかと思います。
この問題をどうすればいいか。
普通は話し方を改善したり、先輩の話を横で見ていてメモを取って暗記、スタッフ同士でロールプレイングだと思います。
ただ、この方法だと自分が出来るようになっても新しい人が入ったらその人はまた同じ作業をすることになります。
そして、できるようになるのに全員同じようにとなるまでに時間がかかります。
そこで考えた解決策はこれです。
接客が一番長時間に及ぶセルフメイド(手作り結婚指輪)を例にとって説明します。
お客様の指輪作りをサポートするのがメインになるセルフメイド(手作り結婚指輪)は打ち合わせ1時間、制作3時間と合計で4時間程前後は接客になります。
自分の場合はそもそも話すことができないのは話す内容が頭に入っていないからだと思っていました。そして暗記しても忘れる。
なので、手作り指輪という会社の商品の特徴をパソコンでイラストメインのA4の紙にまとめて本当に大事な事のみ文字で書いておきました。写真の左ページです。
そうです。①パソコンで②文章を書くです。
そして商談用の資料としてファイルして接客の時はそのイラストを指します。
タイトルやイラストを見ると内容が思い出せるようにしておきました。話す順番も決めておきます。
例えば鋳造の話なら左の画像を順番に指差し、暗記した右の青枠文章を読み上げます。
※左の画像のそれぞれの絵の下の文字は専門的すぎるので一般の方にもわかりやすい青枠文章を作りました。
補足説明だけ覚えておいて画像を見ると何を話すか思い出すことで会話するときの負担を減らしていました。
そして話す補足説明が長くなる場合は別の紙にパソコンでまとめて台本のようにしておきました。
写真の右ページです。
新しく入ってきた人にもこの補足説明「台本」を渡して覚えてもらいました。
例えば指輪の素材を説明する場合、実物を見てもらったあと画像の円グラフを指して
「18金は4分の3が金で残りの4分の1に違う地金を混ぜることで色の違いを出すことができます・・・・。」(この画像は簡略化しすぎですが)
と、いった具合にお客様にも視覚で分かりやすく、自分も思い出しやすくしていました。
この考え方で何を話さないといけないか、何を聞かれるかをパソコンに書き出します。
話す事が多い場合は
1、お客様に見せるA4用紙 画像とタイトルのみ
2、補足説明(お客様に見せない台本)
の2枚が必要になります。
最初は手間ですが自分で書いた事は整理されているので話すときに戸惑いません。
考えながら話していないのでスラスラ話せます。
更にお客様の質問に先回りして考えているプロフェッショナルという印象を与えられます。
この方法なら準備しておいて暗記するだけなので新しい人も短期間である程度までできるようになります。
そして書いた内容をパソコンで入力しておけば、ホームページにコピペして「指輪の素材について」でブログの記事が1本書けます。
そうしていると、接客時にお客様から予想外の質問が来ます。
「同じ白色地金でプラチナとホワイトゴールドは何が違うのか?」
この質問にもどちらが人気か?どちらが高価か?アレルギー反応はどうなのか?どちらが傷付きにくいか?などいろいろな意味が含まれています。
その場で答えられなければ先輩に代わってもらい、その答えを覚えておいて後で文章にします。
更に踏み込むと先輩が言った内容をそのまま使うのではなく、本で調べたり、NETで他のお店がなんと書いているかも調べます。
それを自分で解釈して書きます。
そのままコピー&ペーストはホームページで公開時はグーグルから検索でペナルティを課される危険と自分で考える習慣がつかないのでよくありません。
その質問に対する答えを文章で書いてまとめておくと、知っていることなので話せるようになります。
オーダーはまだいいのですが、手作り指輪(セルフメイド)だとお客様と一緒に作るので打ち合わせ込みで長いと4時間以上は会話します。
世間話もしながら初めてのお客様に手順と道具の使い方を教えて写真や動画も撮ります。
これも最初は感覚でやっていましたが、ある程度数をこなすと考える余裕も生まれます。そして何が必要かも分かり、マニュアル化できます。
・手作り指輪で使う工具一覧とその仕入れ先
・お見積りを出すための地金重量表
・手作り指輪の加工工程手順
・手作り指輪の加工工程のトーク
・工程ごとに写真を撮る構図・・・
といったように増えていきます。
これを自分で書けるようになると話す事のストックが溜まっているので会話が詰まることがありません。
「見て盗む」「教わった事を完璧に行う」よりも話す事が苦手なら何が必要かを考えて①パソコンで②文章を書いてそれを基に③話すという方法なら短期間である程度まで解決できると思います。
という訳で長くなりましたが、オーダー結婚指輪を作る職人に接客で必要な3つの技術の話を終わります。
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