【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
お客様から写真の3連オリジナルリングのご注文をいただきました。
今回は受注からお渡しまでの流れと作り終わった後に思い付いたオリジナルリングの改善点について書いていきます。
オリジナルリングのご注文
ご注文のお客様はNETの画像検索でシグネットリングを探していて当店を見つけて下さったそうです。
ご来店前からどの形にするかも決めていたそうで何種類かある中から写真の3連の右側に決まりました。
小指に着けたいという事でリングゲージで測るとサイズは5号でした。
指輪の制作
前回のサンプル制作でWAXパターンを多めに作っていたのでこの3連を使います。
オリジナルリングは原型があるので通常のオーダーで同じ形を作るよりも金額は安く、納期も短くなっています。
作り方は過去のブログや動画にもしているので詳しく知りたい方はそちらもご覧ください。
以前にオリジナルリングについてのブログで説明しましたが、普段と違う造形屋さんで樹脂造形をした結果、原型に凹みや欠けが多いのでWAXを盛り付けてから鋳造に出します。
鋳造に出したWAXパターンがK18イエローゴールドの地金になって戻ってきました。
湯道や盛りつけたWAXの余計な出っ張りを削って3本の指輪の真ん中になるパーツをカットして残り2本を組んでロー付けを行います。
ロー付け部分をヤスリで整えて3本を1つの指輪に組んで芯金に入れて叩いてサイズ出しと指輪同士の隙間を埋めていきます。
サイズが出て隙間が指輪同士の隙間がある程度埋まったらその隙間にパールなどに使う接着材を使って指輪を1つに固定します。こうすることで指輪全体のやすり掛けやサンドぺーパーの磨きの作業で3本の指輪が動くことがありません。
ヤスリとサンドペーパーで全体の成形が終わったらバーナーで軽く炙って接着を弱めて指輪の隙間にカッターの刃を差し込んで3本に外します。
接着材のついた指輪の内側部分と内面をサンドぺーパーで磨きます。
指輪全体をスポンジやすりでつや消しにして指輪の内面を鏡面に磨き、
刻印で金種のK18打って再度軽く内面を磨き、洗浄したら完成です。
こちらが出来上がり画像です。
オリジナルリングは木箱に入れてお渡しすることにしました。
10万円以上のご注文なのでオリジナルリングをモチーフにしたプリントが入ったノベルティトートバックもついてきます。
オリジナルリングは当初3連を2型作って途中でこの原型を生かして4連、5連も作れることに気が付きました。
以前のブログでは最初から作るなら4連を写真のような原型で作ると一番無駄がないと書きました。
4本のパーツの組み合わせで2連から5連まで作ることができます。
あとはご依頼があったときにゴム型とWAXパターンを依頼して必要な分を鋳造すればOKです。
ちなみに原型は11号で今回のご依頼は5号でした。原型から6号縮めはギリギリかなと思いましたが、特に問題ありませんでした。
大きいサイズで18号以上などの注文が入った場合は4連の原型で作り直す予定です。
指の関節が出た人向けに
ご依頼いただいたお客様は違いましたが指の関節が出ている場合は身に着けていてバラバラになってしまうので対策を考えました。
まずはノートに手書きでアイデアを書いていきます。
色々と考えた結果、指輪の内側に溝を付けて結婚指輪ジョイントのような別パーツをつけることにしました。
ただ、同じ形で指輪に溝をつけると捻り部分の強度が不安なので形を少し変えます。
凹み部分は画像のような形にして上下に動かないパーツを作ります。
このパーツが嵌る溝を指輪に作ります。
寸法は画像のように小さめです。
このパーツに結婚指輪ジョイントのように指が当たる三日月型のパーツを合わせます。
正面から見てもパーツは見えません。
このパーツも込みで4連の指輪の樹脂原型を作る場合は
写真のように4本の指輪を柱でつないで指輪の内側にパーツを入れて湯道を付けます。
角度を変えるとこのようになっています。
これで指の関節が出ているお客様にもオリジナルリングをおすすめすることができます。
指輪がバラバラになるのを防ぐ
ジョイントパーツなしで指輪がバラバラになるのを防ぐ方法も考えました。
これはNET上で見つけたのですが、上下に丸線で凸と凹をつける方法です。
指輪の厚みは1.0㎜です。半分の0.5㎜だと微妙なので1㎜厚の部分にあける穴は貫通させてしまいます。
4本の指輪の組み合わせで2連から5連まで作れるようにどこに凹凸をつけるか考えます
当初は真正面に凸凹をつけようと考えました。
原型データを動かしながら画像の位置に凹凸をつけてみると白のリングには穴をつけなくても済むことがわかりました。
画像の形の3連では上下で穴が開いたままになるのでWAXの段階で埋める必要があります。
このリングの間に凸凹をつけるタイプは通常の原型から地金で鋳造後に凹はドリルで穴を開けて、凸は穴に地金丸線を差し込んでロー付けにする方法で対応しようと思います。
まとめ
お客様と話していて今後必要になるかもしれないと思い、指の関節が出た人向けのオリジナルリングとして根本でフィットさせる方法と指に着けていて指輪がバラバラにならない方法も考えてみました。
指の関節が出ていてオリジナルリングをご希望のお客様には今回のようなアレンジもできることを説明する予定です。
実際に地金にしてみると不具合があるかもしれないので時間を見てサンプルを作るかもしれません。
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