【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
少し前に結婚指輪のポイズンリングをこれまでの蓋取り外しタイプから本体と一体型の開閉タイプに変更しました。
今回はどのようにこの開閉タイプに変更したかについて書いていきます。
これまでの流れは
#006 ポイズンリング
#031 ポイズンリング②
に書いてあります。
ポイズンリングとは小物を収納できる空洞部分がある蓋つきの指輪です。
16世紀のヨーロッパで流行したこの指輪はボックスリングやロケットリング、シークレットコンパートメント(秘密の収納)リング等と呼ばれます。
この指輪をマリッジリングとして使えるシンプルなドーム型(月形甲丸)でデザインしました。
蓋を本体に取り付ける仕組みで良いデザインが思いつかなかったので、画像のような取り外しタイプにしました。
この指輪は蓋は本体から取り外しできることで構造が簡単でコンビリングにも変えられるメリットがあります。
ただ、作ってみて改めて本体に取り付けてあったほうが紛失する心配もなく開閉も楽そうなので考え直すことにしました。
指輪を作る
WAXパターンは多めに作ってあったので、
指輪の内面の蓋を埋めて、
片切り鏨で金具の可動部分の深い溝を作り、反対側のカチッとする部分に浅い溝を作って、
本体と蓋を合体させて、
真鍮で鋳造してみました。
ただ、ここから作って金具が可動するか確認して分解、蓋と本体を合体させて焼きゴムで型を取ってWAXパターンからペアで作ると手間になりそうです。
そこで腕の部分は以前に作った原型とWAXパターンがあるので蓋と本体の仕組み部分(指輪の上半分)だけをCADで作ってWAXパターンの腕と合体させて作ることにしました。
以前に作ったポイズンリングのデータを生かして金具の仕組みを考えます。
この金具の仕組みは色々考えられますが、鋳造で強度が保てることも考えて画像のようにしました。
蓋左側の出っ張った部分を鏨でたたいて押し込んでかしめる仕組みにします。
蓋が引っかかる1㎜の円柱の位置は指輪の中心に対して左右対称に作ってあるので蓋はどちらの向きでも取り付けることができます。
刻印を入れることを考えると本体は左右対称に作っておくことで右利き、左利きでどちらに開くか選べるという利点も生まれてきます。
指輪の上半分のデータが出来たら同時期に作っていたクラダリング、スネークリングと共に1つの原型に収めて樹脂造形をします。
左の緑色が以前に作ったWAXパターンで紫色が今回作ったWAXパターンです。
画像のように指輪を上下に分割するイメージでカッターで切り分けます。
あとは画像のようにWAXパターン同士をアルコールランプでスパチュラーを熱しながらくっつけました。この形をメンズとレディースの2個分作ります。
真鍮になって上がってきたら全体の形をヤスリで整えます。
蓋を閉めて開閉の支点になる部分の出っ張りを本体に押し込んでカシメます。
当初は鏨とオタフク槌でかしめるつもりでしたが、蓋を閉じた状態でスリ板に押し当ててグッと力を入れるとピタッとはまりました。
あとは全体を仕上げてメンズはロジウム、レディースは18金メッキをして完成です。
HPで公開する
こちらが完成したメインの写真です。
蓋の先端に出っ張りがあるおかげで片手の爪で簡単に開けることができて、蓋を閉じる時は気持ち良くカチッとなりました。
結婚指輪ページのポイズンリングは今回の蓋と本体の一体型に差し替えました。
スクロールして読むと過去の蓋取り外しタイプも選べることを書きました。
加工の手間はほぼ変わらないので金額は蓋と本体の一体型、分離型のどちらも同じにしています。
まとめ
ポイズンリングの修正については以上です。
蓋の開閉の仕組みがどうすればいいか強度面も考えて試行錯誤した結果、組み立ても簡単で、可動部分もそこまで目立たないスッキリした形になりました。
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