【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
オーダーメイドの指輪を作る過程#031、#032では結婚指輪の基本デザインヒストリカルのクラダリングの修正にサンプルとしてフェデリング、ポイズンリングを新しく追加をしました。
他にで結婚指輪に追加できそうなアンティークのデザインはないか探すと「スネイクリング」というものが見つかりました。
文字通り「蛇」をモチーフにしたこのデザインは19世紀のイギリスでヴィクトリア女王が婚約指輪として身に着けたことで流行したそうです。
NET上にはこのデザインが19世紀に手とハートのデザインに(フェデリングとクラダリング)に取って変わったとも書いてありました
蛇をモチーフにすること以外の決まりはなく、デザインの自由度も高そうなのでこの指輪をマリッジリングのサンプルとして作ることにしました。
ちなみに英語のSNAKEはカタカナでスネイクとスネークがありますが、今回はスネイクにして書いていきます。
スネイクリングのデザインについて
画像はスネイクリングのデザインの参考にNETで集めた指輪の画像です。
西洋では蛇は旧約聖書のアダムとイブを唆して禁断の果実を食べさせエデンの園を追放させた原因となったためにあまり良いイメージの動物ではないと思われがちですが、一方で脱皮をする事や長期の飢餓状態にも耐えることができる生命力から再生や不死のシンボル、神の使いなどとして崇められてもきました。
現在では海外の有名ブランドのブルガリ、ティファニー、グッチなどでも幸運の象徴として蛇をモチーフにしたジュエリーが見受けられます。
特に有名なのはブルガリで1948年に誕生した蛇をモチーフにした「セルペンティ(serpenti)」というジュエリーで2016年には過去の作品を一堂に集めた展覧会を東京でも行ったそうです。
ちなみにserpentiという英語はなく、「serpentine(蛇のような)」、「serpent (蛇)」を少し変えているようです。
このコレクションには言われないと蛇をモチーフにしたとはわからない指輪もありました。
NET上ではヴィクトリア女王が着けた婚約指輪の画像は見つかりませんでしたが、それを模したアンティークはパッと見て蛇とわかる具象系の指輪なので今回はそちらを参考に作っていきます。
アンティークを参考に今、結婚指輪として着けていても違和感のないデザインにしたいので
・鱗模様を入れるか入れないか
・鱗模様はリアルかデフォルメするか
・目の代わりに宝石
・蛇は一匹か2匹が絡むデザインか
・普通の形の指輪かフリーサイズリングか
と選択して考えることにしました。
完成予想図
こちらが今回作ることにした指輪のデザイン画です。
蛇の尻尾が口の中に入ったデザインは定番のようですが、尻尾は溶接をせずに口の中に入っているので指の関節が出ていても前後に動いて根本のサイズにフィットさせることができます。
パッと見てサイズ調整できることがわからないほうが結婚指輪のデザインとしてお勧めできるのでこの形にしました。
今回も先に完成したサンプルの写真を見てもらってから制作過程を説明していきます。
長く使うことを考えるとシンプルなほうが良いので蛇という好き嫌いの分かれるモチーフで男性でも身に着けられるデザインを考えました。
正面から見ると蛇モチーフとはわからないように口にしっぽが入ったシルエットのみのデザインにしています。
目の部分に点のふくらみか凹みを入れてより蛇と分かるデザインも考えましたがシンプルさ重視で頭の大きさも極力抑えました。
レディースは金色で尻尾は口から出したフリーサイズリングも1本作りました。
そして蛇が宝石を咥えているイメージで口の中には直径3.0.㎜の透明石を入れています。
目には直径1.3㎜の透明石を入れていますが、実際のオーダーメイドの場合はこの部分に新郎新婦の誕生石でもいいと思います。
赤ちゃんが生まれたら口の中の宝石も誕生石にして3人の誕生石が入っている指輪もいいかもしれません。
ちなみに自らの尻尾を咥えた蛇はウロボロス「尾を飲み込む(蛇もしくは竜)」という古代のシンボルが有名で自らからの尾を食べることで、始まりも終わりも無い完全なものを意味するそうです。
蛇の指輪デザインでちょうどいいから口に尻尾を咥えているだけはなかったようです。
ウィキペディアによるとこのウロボロスには、1匹が自分で自分を食べているタイプと、2匹が輪になって互いの尻尾を食べているタイプがあるとのことでした。
制作過程
早速、原型を作っていきます。
当初は写真のようにCADで原型を作ろうと思っていました。
ただ、比較的シンプルな形に決まったのでコストを抑える目的でシルバーと真鍮を使って地金原型に変更しました。
まずは3m幅のシルバーのパイプと真鍮丸棒を5m幅のシルバーパイプで繋ぎます。
溶接して3㎜幅のパイプをカットすると写真のような状態になります。
先端部分を蛇の頭の形になるようにヤスリで削っていきます。
頭が出来たらパイプの縦に糸鋸で溝を入れて蛇の口部分を作ります。
丸棒を曲げて指輪の形にします。
真鍮は固いのでバーナーでなましてから曲げていきます。
地金の原型ができたら焼きゴムを取って真鍮で鋳造します。
このうち2本を仕上げてメッキをして結婚指輪のサンプルにします。
ヤットコで尻尾を口に入れて仕上げます。
あとはメッキをして完成です。
残った真鍮リングの両目部分に1.3㎜、口に3.0㎜のキュービックジルコニアを入れて金メッキをしてアレンジ例も作りました。
結婚指輪ページに追加する
指輪が完成したら写真を撮ってマリッジページに投稿します。
書く内容はここまで書いてきた内容でスネイクリングの歴史やどんなアレンジができるかを書きます。
特に蛇というモチーフは好みが分かれると思うのでメンズのデザインは「蛇感」を弱くしてあること、指の関節が出ていても根本でフィットする作りになっていることなどを強調します。
まとめ
基本デザインのヒストリカルに新しいデザインが加わりました。
蛇という個性的なデザインになりそうなモチーフだったのでマリッジリングで男性でも違和感なく着けられるように極力シンプルにして指関節の対策にもなる指輪にしました。
追記20210507
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