【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
手作り指輪(セルフメイド)で、お客様が自分でできる仕上げを10種類考えて、見本の仕上げリングを作りました。
作った指輪の動画撮影、オーダーメイドの仕上げページの修正もしたので、今回はその流れを書いていきます。
仕上げを考える
少し前から手作り指輪(セルフメイド)を始めました。
艶消し、鏡面、槌目などの仕上げ見本に関してはサンプルはある程度の数を用意していますが、お客様が自分で仕上げをできるように、使う工具やマニュアル、動画を作ろうと思い、それに合わせて作業中に見本となる仕上げの指輪も作ることにしました。
・ホーニング
微細な粉末を指輪に吹き付けることでできる
均一で繊細な艶消し
のように専門ブラスターが必要な仕上げや
・タガネ荒らし
鏨(タガネ)と呼ばれる小さな鉄の棒で指輪の表面を
荒らした仕上げ
のように小さい鏨にリズミカルに小さい槌でたたくのは難しく、慣れていないと腕も疲れるので、技術的に初心者向けでない仕上げは省くことにしました。
お客様でも簡単にできる仕上げを考えていきます。
こちらが最初に作った仕上げのメモ書きです。
今回選んだ10個の仕上げの内、9個はリューターポイントで1個はヤスリで加工できます。
3㎜幅の真鍮棒をおおざっぱに丸めて、リューターポイントの形状、リューターの速度はどのくらいが良いかを試してA4用紙にまとめました。
例えば槌目などは金槌で叩いての模様付けが普通ですが、自分で狙った大きさの凹みにするのは難しいです。
径が大きいシリコンホイールをリズミカルに角度を変えて、当てていくと簡単に槌目模様ができるだけでなく、凹みの大きさも目視で確認しながら微調整することができます。金槌で叩きすぎて地金が伸びる、薄くなりすぎることも防げます。
小さい槌目は丸ドリル、更に大きい槌目ならヤスリで面を作ってから磨くことで作ることができます。
こういった試行錯誤を繰り返して、たくさんある仕上げの中からお客様が楽しんで作業できそうな10種類を選びました。
ちなみに10種類にした理由は甲丸リングの制作工程と同じA4用紙のレイアウトを使えるからです。
仕上げ指輪見本を10本作る前に2.5㎜幅で10種類の仕上げ入り真鍮棒を作りました。(写真はロジウムメッキ後の写真です。)
仕上げの差がわかりやすいように仕上げ同士の間には糸鋸で溝をつけています。
左から
①鏡面
②艶消し
③荒らし(浅め)
④荒らし(深め)
⑤槌目(小)
⑥槌目(大)
⑦岩肌
⑧木肌
⑨ストライプ
⑩クロススクラッチ
となっています。
仕上げ見本リングを作る
10種類の仕上げ見本棒ができたら仕上げ見本リングを10本作っていきます。
3㎜の丸棒をローラーで幅2.5㎜、厚み2㎜の真鍮棒に伸ばして、サンドペーパーで磨いて艶消しの甲丸指輪を作りました。サイズは12号です。
今回は10種類の仕上げリングをただ作るだけでなく、動画も作ります。
仕上げ動画を作る
手作り指輪の場合は、指輪とリューターの持ち方、リューターポイントの当て方、リズム、指輪の動かし方など、目の前でお手本を見せて実際にやってもらうと記憶を頼りにいくつかの動作を真似をすることになります。初めてでこの作業は難易度が高いかもしれません。
動画で上げておけば、スマホなどを目の前に置いて、再生しながら真似をすればどこが違うのかを確認しながら作業ができます。
指輪全体に施す仕上げに関しては動画を見ながらのほうが良いと思うので撮影してユーチューブにアップすることにしました。
今回カメラはGoProという小型のものを使っています。ユーチューブに操作マニュアルも多数上がっています。
画像のようにカメラをセットして、大事なのは模様が付いていく指輪の変化ではなく、両手の動きなので手首まで入るように撮影しています。
ヘッドスコープに取り付けて撮影すると作業するときのブレや傾きが映像に出て気になったので、カメラは上からの角度で固定にしました。
このGoProは専用アプリを入れることで、スマホで撮影中の画面を表示することができます。
画面設定や撮影スタートボタンも手元のスマホで操作できるので便利でした。
手元のスマホで撮影スタートボタンを押して、仕上げ作業、50秒で撮影ストップをして10種類の作業見本動画を作りました。
このあと出来上がった指輪は内面を仕上げて18金メッキをしました。
今回はおまけで10種類の仕上げを入れた指輪2本も作りました。
サンプルができたので撮影して動画を編集します。
仕上げ動画を編集する
動画と写真ができたら10種類の仕上げ動画をユーチューブ用に1つにまとめます。
オリジナルリングの動画の時(#018 動画制作とHPでの公開)と同様にWINDOWS MOVIE MAKERで一つにまとめます。
1つの仕上げに付き完成画像5秒表示、使用工具5秒表示、動画50秒表示の順番で合計1分使います。
1、JCTの仕上げについて説明1分
2、仕上げ10種類の説明が合計10分
というような内容で合計11分の動画を作りました。
説明欄にはどの仕上げは何分から始まるかも書いて手作り指輪の仕上げ作業のときに知りたい部分から再生できるようにします。
画像のようにユーチューブの説明欄に時間を入れるとその時間からスタートできるリンクが自動で付きます。
これでアップロードしたらURLを取得して、自社サイトに仕上げページでも公開します。
この動画編集、アップロードについては今後の事も考えてマニュアルを作りました。
HPの仕上げページを修正する
TOPページと結婚指輪ページ内でリンクを張っている「仕上げについて」のページを今回作った画像で修正します。
ホーニングとタガネ荒らしは似た仕上げがあるので削除しました。
文章の最後に先ほどURLを取得した仕上げの動画を公開します。
手作り指輪の作業の時はお持ちのスマホでこのページを見てもらいます。
WORKSのページに投稿する
「仕上げについて」のページは見ないお客様もいると思います。
10種類の異なる仕上げを入れても金額が変わらないのはウリになると思うので目に止まりやすい作品集のページにも投稿します。
指輪の名前は地金の表面の質感のことを仕上げ(テクスチャー)と言うので、複数入っているという意味でTextures(テクスチャーズ)にしました。
内容は「仕上げについて」のページとほぼ同じなので、検索順位でマイナス評価を受けないようにNO INDEXに設定しています。
SNSで公開する
インスタなどは長尺動画はアップできないので、上限の1分版の仕上げ10種類を作りました。
防塵ボックスを作る
リューターを使った仕上げ作業は研磨材や地金に粉が顔に飛んできます。
手作り指輪をしているお店では顔が汚れないように
1、何もしない
2、眼鏡やマスクをしてもらう
3、防塵ボックスやカバーを机に設置する
のどれかで対応していると思います。
当店は
3、防塵ボックスやカバーを机に設置する
で対応することにしました。
現在使っているガラス製防塵ボックスは模様付けのような仕上げをする場合を考えると手を動かしにくい欠点があります。
彫金工具のカタログを見ても仕上げ作業に合うような手を動かしやすい防塵ボックスがなかったので、ホームセンターでアクリルかプラスチックのボックスを買ってきて自分で作ることにしました。
色々見た結果、大きさや形がちょうどよい米びつがあったので、
手が入る部分を広くカットして、
断面は手に当たっても痛くないようにゴムホースでカバーして、粉が外に漏れるのを防ぐ左右のビニールカバーはマジックテープで取り外しできるようにしています。
これなら顔に両手をだいぶ近づけても粉や研磨材が飛びません。
ゴムホース部分に両手を置くことができるので作業時の安定感も生まれました。
リューターバーが滑ってケガをしないように左手には軍手をつけて作業をしてもらう予定です。
まとめ
仕上げについては以上です。
手作り指輪を始めたことでお客様でもできる仕上げということを考えて使う工具や手順などもまとめてみました。
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