【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
新しい結婚指輪サンプルとして写真のような正面に指紋の模様が入ったリングを作りました。
この後に公開する#069刻印&内石サンプルリングと#070カリグラフィーリングを含めてお客様がシンプルなマリッジリングをご希望の場合について考えたので順番に説明していきます。
シンプルな結婚指輪をご希望の場合
過去に結婚指輪のお見積りで画像のような
男性が幅2.5㎜の平打ち、女性が幅2.0㎜の甲丸、鏡面仕上げというシンプルなデザインをご希望のお客様がいらっしゃいました。
オーダーで色々なデザインを用意している所が当店の強みなので特殊なデザインでもなく、どこでも作れるシンプルなデザインをご希望の場合、既製品よりは高いのでこういった場合にどうすれば良いかを考え直してみました。
分かりやすい方法だと素材は18金よりも純度の高い22金、24金も用意するという事を考えました。鋳造屋さんが用意しているので取り扱いは可能です。
ただ、女性は特にそうですがネックレスやピアスなどは強度の問題で18金が一番上の純度なことが多いのでジュエリーとセットで着ける場合に統一感が出ません。プラチナもPt950が一番と思っていますが同じ理由でジュエリーや他の指輪とセットでつけることも考えてPt900も用意しています。そう考えるとやはり金は18金が一番なので素材で他と違いは出そうと思いませんでした。
価格は他に安いお店があって素材は他と同じという中でどうすればお客様に選んでもらえるかを考えて
1、オーダーで作る1点物であること
2、刻印のご提案
3、内石のご提案
4、制作方法で意味を持たせる
という4点で違いを説明しています。
1、オーダーで作る1点物であること
HPのトップでも書いていますが、手作りだけでなく、CADも併用することで多少難しいデザインにも対応することができます。シンプルな形の場合はオーダーで作る1点物であること、世界で一つという点がおすすめの理由になると思います。
2、刻印のご提案
指輪内側の刻印は手書きなども入れることができるレーザー刻印がオーダー基本料に含まれます。どんな文字やイラストを入れるかの見本などを5ページほど作ってあるので打合せ後にこのPDFを送っています。
3、内石のご提案
オーダーメイドの専門店なら12か月分の誕生石とカラーダイヤで合計20種類くらいの用意だとおもいますが、他より少し多めの約40石を用意しています。
4、制作方法で意味を持たせる
当店では鍛造、WAX/鋳造、地金原型/鋳造、CAD樹脂原型/鋳造の4つから選べます。
打合せで鍛造の説明をしてもお客様にあまり響かない場合はCADでの制作をお勧めしています。CADはこの数十年で生まれた最先端の技術である事と写真のような2本の指輪を同じ鋳造地金になった後にカットすることで同じ地金を共有するという意味を指輪に持たせることができます。
他には特典として制作過程で出来る原型などもついてきます。木箱にディスプレイしてトートバックに入れてお渡ししています。この付属品も他との違いとしてお客様アピールしています。
指紋リングについて
シンプルな結婚指輪がどうすれば特別な指輪になるかですが、オーダーメイドでは指輪の内側もしくは外側にレーザー刻印で指紋という世界に一つの模様を入れるというデザインをよく見かけます。
4つの制作過程を説明用に作ったSignet/fingarprintは印台リングにこの定番デザインの指紋を入れたサンプルになっています。
追加料金なしになるようにサンプルは印台の正面のWAXを温めて指を押し当てて指紋の型を取っています。この方法なら追加料金はかかりません。
当店では指輪外側へのレーザー刻印はデータ制作代と外注費がかかるので別料金になっています。(結婚指輪WORLDなど)
今回、シンプルな甲丸マリッジリングでおすすめできる形と考えて定番の表面に指紋刻印でサンプルを作ることにしました。
できれば無料にしたかったのでワックスで試してみると甲丸はきれいに型を取るが難しく、お客様からご依頼があった場合に困ったことになりそうなのでCADで指紋の部分を模様として入れる方法を考えました。
この方法なら紙に指紋をスタンプで押してもらいデータに変換するのでお客様に後日メールで画像を送ってもらうこともできます。
CADの造形に必要な0.3㎜の隙間を開ける調整に手間がかかりそうですが、データにすれば拡大、縮小ができるので正面から見てどのくらいまで指紋模様をいれるかも調整できます。
制作方法ですが、まずは紙に指紋を何個か取ります。HP上で公開するので指紋認証で使わない指にしてます。
画像修正ソフトでコントラストを調整して程よい濃さにしたらイラストレーターでデータをアウトライン化します。「プリセット→写真→高精度」という機能で指紋がくっきりしたのでこのデータを使っていきます。
CADにこの画像をインポートします。
指輪の幅に合わせて使うので指紋の中心から横長に3㎜幅で切り出します。
これを立体にします。今回は自分の指の右に傷があり見本として指紋と分かりにくくなってしまうので左側を反転させて調整しました。
この指紋パーツを幅3㎜厚み2㎜の甲丸の断面に合わせてカーブさせます。
サイズは16で指輪にしてパーツと指輪の重なった部分を消すと表面から0.5㎜凹んだ画像のような指紋模様になります。
サンプルは結婚指輪見本なので金色と銀色の2本を作ります。指紋部分だけを他の原型データと合体させます。
樹脂造形とゴム型取りを経て上がってきたWAXパターンを分解します。
指紋のパーツをワイヤーワックスと合体させて2本の指輪ができました。細かい部分は地金になってから調整していきます。
真鍮になって2本の指輪が上がってきたら、
ヤスリを使って削り、仕上げていきます。
次にメッキをするのですが、今回はこの指輪の内側にレーザー刻印と内石見本も入れます。その内容は次の#069刻印&内石サンプルリングで詳しく説明するのでその部分は飛ばしてメッキ後から説明していきます。
HPで公開する
写真の指輪ができたら結婚指輪ページに追加します。
内容はここまでに書いてきたことやアレンジ例、指紋は世界で一つの模様であることなどをお客様向けにまとめました。
金額は基本料に幅の追加料金だけでレーザー刻印に比べて安いことも書きます。
この指紋リングは指輪の正面だけに模様が入っています。
最初は基本デザインのどれでもないのでアザースに追加しようと思っていたのですが、前回作ったマウンテンもサンプルは正面にしか模様が入って言いません。基本デザインのパターンについては「パターンは模様(図柄の繰り返し)のことで植物、多角形、幾何学模様などが一周入った指輪です。」という説明をしているので「…模様などが一周、もしくは表面の一部に入った指輪です。」に変更して指紋リングもこのカテゴリに追加しました。
なのでアザースにあった結婚指輪WORLDも基本デザインのパターンのカテゴリに移動させて、これまでに投稿した関連ページの文章と画像も差し替えて修正しました。
まとめ
これでオーダーメイドでは定番の指紋リングの甲丸型ができました。
この指輪の内側には内石とレーザー刻印の見本も入れたので次のブログではその説明をしていきます。
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