【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
オリジナル空枠1では一つの原型でラウンド以外のイレギュラーカット宝石を使った指輪を7本作りました。
最初は一つの原型でほとんどの形の中石に対応できるオールマイティーな空枠を作ろうと考えていました。
ただ、実際に作ってみると地金やWAXになってからの調整では時間がかかる上に地金の薄い部分が出てくるなど問題があることが分かってきました。
そこでCADを使って宝石の形に合わせて調整可能な「テンプレート」のようなデータを用意してオリジナル空枠のサンプルを作り直すことにします。
デザインを考える
こちらが樹脂造形用の完成データです。
このデータで中石がラウンドの原型を一つ作り、地金になってから腕や石座を変形させて7本の形が違う空枠サンプルを作っていきます。
こちらが原型データの制作風景です。
手前から制作順で平面でスケッチして立体にしてから指輪状に丸めています。
原型は中石の石座はレール爪でハーフエタニティリングと組み合わせたフリーサイズリングになっています。
このように変形可能なデータを持っておくことでサイズ調整やメレダイヤの個数など細かい部分にまでこだわって作り込むことができます。
指の関節が出ていても多少広がるのでジャストサイズでフィットして、ハーフエタニティと組み合わせることで2本重ね付けのようにも見えます。
ハーフエタニティ部分は今後この部分だけ他の腕と組み合わせて使う予定なので正面から見たときにカーブさせずストレートにしてあります。
フリーサイズにした理由ですが、同じ時期にオリジナル空枠と並行して写真の「指の関節が出ている人向け」の結婚指輪サンプルも作っていました。
「指の関節が出ている人向け」の婚約指輪も需要がありそうなのでオリジナル空枠①のような通常の形ではなく、フリーサイズの指輪にすることにしました。
オリジナル空枠①ではイレギュラーカットの中石で宝石は緑、青、紫などの寒色で地金は銀色で作りました。
新たに作り直すサンプルでは中石はラウンドとオーバル、色は赤、オレンジ、黄などの暖色系で地金もイエローやピンクを入れて7本の指輪を並べた時に華やかに見えるように作ります。
それから中石だけだと寂しいのでハーフメレの石座も原型データの段階で作っておきました。
メレはサンプル制作用に大量に仕入れておいた1.5㎜のキュービックジルコニアを使います。
メレの留め方は4本爪留めで指輪の幅ギリギリで作ります。
何本かはイラストのようなコンビリングにします。
サンプル制作
CADデータを樹脂原型にして真鍮で鋳造を依頼します。
フリーサイズなので隙間が空くようにゴム型取りを依頼しました。
その後、鋳造屋さんから隙間が埋まってしまったと連絡があったので添付のような柱を立てたデータを送って再造形もお願いしました。
鋳造上がりの前に暖色の宝石も用意しておきます。
サイズはラウンドが直径5㎜、オーバルが4×6㎜です。
キュービックジルコニア、合成ルビー、ガーネットなどの安価な石で揃えました。
鋳造に出していた指輪が地金になって上がってきました。
ヤットコを使って指輪を曲げて正面から見た時の形を変形させます。
フリーサイズと溶接して隙間の空かない形、石座と腕のカーブ具合など7本とも微妙に形が違います。
サンドペーパーで磨いたら石留めをします。
艶消し仕上げをして内面を磨き、メッキに出します。
コンビリングはメッキから上がってきたらマスキングをして再メッキに出します。
メッキ上がり待ちの間にホームページ用に地金の1枚板を丸めて作る過程の画像も作ります。
左2枚は1.7㎜の角線を丸めて作りました。
一番左は板を丸めただけ、左から2番目はメレ部分は糸鋸で溝を付け、中石石座部分は丸めて溶接しています。
実際の制作過程とは異なりますが、この画像で言葉での説明がなくても1枚板を丸めて作っているデザインということが伝わると思います。
1枚板がベースのデザインということが伝わるイラストも作りました。
HPに投稿
これでエンゲージやリフォーム用のお店のオリジナル空枠が完成しました。
指輪の撮影と画像修正が終わったらできがった指輪の画像をホームページに投稿していきます。
ダイヤモンドの指輪だけでなく、イレギュラーカットの色石指輪もオーダーできるという事が伝わるようにHPを書き換えます。
まずはワークス(作品集)のページに投稿します。
名前の意味、価格事例、どんなアレンジができるか、先ほど書いたデザインのポイントなどを簡潔にまとめます。
空枠なので料金表は中石代抜き、脇石代と加工代込みでの表示にします。
腕の地金量が少し多めですが、オーダー基本料の価格で作れることにしました。
TOPページではエンゲージリングの下の
「オーダーメイドでは、
中石の形と大きさ、
それに合わせた石座と腕を決めてから
周りに脇石を入れるなどすることで
無限にデザインを
生み出すことができます。」
の文章の下に画像とその説明を差し込みました。
エンゲージリングのページにもこの内容を追加してWORKSに飛ぶリンクも張っておきます。
まとめ
これでオリジナル空枠の公開が終わりました。
当初は1つの原型でほとんどの形の石に対応できる空枠と考えましたが手作りで試作を作ってみた結果、バランスなどが難しいことが分かったので修正が簡単なCADデータ原型を持つことにしました。
ご希望のデザインやご予算に合わせて指のサイズや地金部分の幅と厚み、メレ石の個数やサイズを変えることでアレンジも色々と考えられます。
これで
他で見ない指輪→オリジナルリング(ギメルシグネット)
他で見ない結婚指輪→JOINT
他で見ない婚約指輪(空枠)→ENFOLD
と、お店オススメの3デザインが出来上がりました。
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