【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
関節の出た指用リング①では中折れ金具を使った指輪を作りました。
関節の出た指用リング②では金具を使わないデザインを考えていきます。
海外サイトYAHOO.COMでRING SIZE ADJUSTERで調べると指輪の後付けでサイズ調整器具としてプラスチックのコイルを巻き付けるものがありました。
日本では指輪の内側にプラスチックを取り付ける「ピタリング」という調整器具が有名です。
ただ、どちらも指輪の外側から調整金具が見えているのでより目立たないデザインを考えます。
こちらが出来上がりのデザインです。
指輪の内側が空洞のなっていて指輪を根本まではめた状態でこの空洞に別パーツを差し込むことでサイズをきつくさせることができます。
通常の指輪のようにグルっと回したときに表面のデザインを崩さずに繋ぎ目がない指輪と考えて作ってみました。
平打ちタイプは指輪の内側に1㎜幅の出っ張りを作り、パーツの1㎜幅のへこみと重ねることでパーツが横に動くことを防ぎます。
甲丸タイプはこの出っ張りとへこみは作らず、パーツの上部に丸いでっぱりを作り、そこに爪を引っかけて指の内側に押すことで楽にパーツを外すことができるようにしています。
このアイデアの元は会社員時代に一部のエタニティリングやグルっと一周模様が入る指輪はサイズを小さくするのに内側に板を溶接していました。
工房併設型のお店だったので若干きつめに作っておいてお客様の試着してもらい、微調整はその場で行っていました。
ただ、指の関節が出た方にはこの方法では対処できません。
そこで、このパーツを取り外できるようにして溝の差し込む形で作ってはどうかというのが今回のサンプルです。
サンプル②制作
まずはシルバーと真鍮でサンプルを作ります。
加工工程は比較的簡単で写真もあまり撮っていないので言葉メインで説明していきます。
甲丸
まずは写真のような内側が凹んだ甲丸リングを作っていきます。
手作りなら地金の甲丸を作ってダイヤモンドポイントやキクギリ(丸いドリル)で削るWAXで甲丸を作ってスパチュラーで内側を削って鋳造に出すのが定番だと思います。
ただ、これだと時間がかかるので以前に作ったシルバーの4㎜幅のパイプがあるのでこれを活用していきます。
長さ6㎝程のパイプを真っ二つにして断面をやすりで整えます。
パイプの板厚は1㎜弱なので幅2㎜の真鍮丸線を重ねてやっとこで丸めていきます。丸線が芯の役割をしているのでパイプが変に歪むことを防いでくれます。
シルバーの断面を合わせてロー付けします。この段階では楕円形です。
シルバーの内側の凹みに写真のような2つの真鍮丸線を入れます。このまま芯金に押し込んで木槌で真円を出します。
先ほどヤットコで曲げた時と同じようにこちらも丸線が芯の役割をしているのでパイプが変に歪むことを防いでくれます。
パイプの外周が真円になったら丸線を外して内側をリューターバーで削って形を整えます。
平打ち
平打ちの作り方は真鍮の幅3㎜、厚み1㎜のリングの上下に幅1㎜、厚み2㎜のリングで挟みます。
ちなみに幅3㎜、厚み1㎜のリングは工具屋さんで10個セットで売っていた彫りの練習用リング、
幅1㎜、厚み2㎜のリングは以前にワークスのフェデトリニティでゴム型をとった3連リングを使っています。
この3本の指輪を上下に挟んで溶接すると内側には幅3㎜×深さ1㎜の凹みができています。
これで平打ちのサンプルも出来上がりました。
内側のパーツの試作
指輪の外側ができたので内側のパーツを作っていきます。
平打ちリングの内側は3㎜幅の角棒を丸めて削って作りました。
甲丸は厚み1㎜のフリーサイズリングを入れる方法を考えました。
ただ、実際にやってみると拡がった指輪が固く取り出しにくいので平打ちと同じようなパーツを作ることにしました。
最初に書いた通り完成形ではパーツの上部に丸いでっぱりを作り、でっぱりをに爪を引っかけて指の内側に押すことで楽にパーツを外すことができるようになっています。
制作方法は写真を撮っていませんが、パーツに1.1㎜のドリルで穴を貫通させて1.0㎜の真鍮丸線を通して溶接、カットした丸線の先端を整えています。
実際にご注文がある場合は
・指輪とパーツをピタッとサイズで作る
・ロー目を出さない
・指輪の厚みや幅の調整
ということを考えてCADでの制作がいいと思います。
まとめ
幅5㎜の平打ちと幅4㎜の甲丸でサンプル②が出来上がりました。
途中でフリーサイズリングは取り出しが難しくこの指輪には適さないという失敗もありましたが完成しました。
このデザインの利点は外側に模様の入った指輪でもカットせずに内側のパーツの交換でサイズ直しができる点です。
出来上がって気が付きましたが、靴が緩い場合に中敷きを入れるインソールと仕組みは同じです。
正面から見たときにサイズ調整部分が目立たない利点はありますが、パーツを外すのがスムーズではないという欠点が出てしまいました。(特に平打ちが)
また指輪の内側の厚みが1㎜なので指と指輪の間の空洞が多く、強度的にも不安です。
内石や刻印なども入れることができません。
最終的にはこのサンプル②を発展させて上に書いた欠点を補った④が完成したのでこの後の「#011関節の出た指用リング③」で説明していきます。
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