【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
パーツのオーダー事例がある程度できたので次は結婚指輪に新しいデザインを追加することにしました。
指輪のフィット感を考えた場合、指の関節が大きく出ていると指輪のサイズはその場所を通るように作るのでキュッとなっている根本では隙間が空いてクルクルと回ってしまいます。
指の関節が出ている方は多く、また、体重が変わらなくても年と共に指の関節は出てくるものなので長く身に着けているとサイズ直しが必要になってきます。
そこでパッと見ても普通かデザインとして違和感がない形、自分が欲しいと思えるお客様にもおすすめできるような指の節が出た人向けの指輪を考えることにしました。
写真は出来上がった4ペアのサンプルです。
試作品(サンプル)を4ペア作り、最終的にこの中から一番完成度の高い④を結婚指輪ページに追加することにしました。
この指の節が出た人向けの結婚指輪をデザインを考える所から完成までの流れとHP上での公開までを
1、デザイン決めとサンプル①の制作
2、サンプル②の制作
3、サンプル③④の制作
4、サンプル①~④をWORKSに投稿、
サンプル④を結婚指輪ページに追加
と、全4回に分けて書いていきます。
デザインを調べる
まずは指の関節が出ている人向けにどんなデザインの指輪があるかインターネットで調べます。
調べないで思いつく形だと定番はファッションリングのムーブチェーンや
指輪の真ん中が開いたフリーサイズリングなどをよく見かけます。
指の関節は英語では
FINGER SECTION、FINGER JOINT、FARANGE(ファランジ)と言います。
国内だけでなく海外サイトも上の言葉にRINGなどを足したり、SIZE ADJUSTなど関連キーワードを考えて検索しました。
予測変換のキーワードも調べます。
指輪のバネを内側に溶接したり腕部分が可動パーツになっていたりと指の関節が太い方向けの指輪はいろいろと出てきました。
まずは良さそうなアイデアをパソコンのフォルダに集めます。
正直、今回はNETはあまり参考にならなかったのでノートに書いて考えています。
写真はデザインの見本スケッチです。ノート4ページ分くらい考えました。
サンプル①制作
考えた中からシルバーと真鍮で実際にサンプルを作ってみます。
スケッチした中から「地金の細い部分の強度が不安」「デザインがカッコよくない」などダメなものを省いていきます。
色々と見た結果、まずはフープピアスのような開閉式の指輪を作ることにしました。
カチッとなる部分の仕組みをどうするか金具のカタログを見ながらアイデアを探しているとキヘイネックレスなどでよく使う中折れクラスプがありました。
チェーン用の金具は多数ありますが、ベルトのバックルのようなデザインは指輪の正面のデザインとして悪くなく、他の金具に比べて強度もあります。
当初は買ってきた金具の仕組みを見てCADで寸法などを縮小したサンプルを作ろうと思っていました。
ただ、この中折れクラスプはシルバーでは4㎜幅、金、プラチナなら3㎜という小さいサイズから取り扱っています。
まずは試作なのでコストのかからない方法で作ってみることにしました。
シルバーでは4㎜幅から売っていたのでサンプルの指輪はこの幅で作っていきます。
リングタイプ
リングタイプは金具の反対側に指輪が開くための可動部分を作る必要があります。
腕の形はピンを差し込む可動タイプにする事と中折れクラスプと組み合わせて甲丸よりデザインの違和感がない平打ちで作っていきます。
4㎜幅の平打ちリングに凸と凹の2つの溝をつけます。動かしたときに引っかからないように凸の方は角を丸くしておきます。
あとは側面から0.9㎜のドリルで穴をあけて0.7㎜のSVポストを差し込んでヤットコで片側をかしめてピンを外れなくします。
あとは仕上げて完成です。
ワークスにはペアで金銀の2色を投稿します。
もう一つの指輪は金具は同じで腕は違った形と考え、チェーンを使うことにしました。
チェーンタイプ
中折れクラスプはキヘイチェーンの金具として使われることが多いので指輪もそれに倣います。
金具が4㎜幅なのでシルバーのキヘイチェーンを10cmほど仕入れてきました。
あとは金具と溶接して仕上げ、メッキをして完成です。
結婚指輪にキヘイはどうなのかと思いましたが、いくつかのブランドやオーダーのお店でこのチェーンリング(金具なし)をマリッジリングとして販売していたので地金の腕を板ではなくチェーンで作ってみました。
チェーンはもちろんキヘイだけでなく小豆、ベネチアン、ボールなども作ることができます。
あとでこのサンプルはWORKSに投稿するのでこのチェーンの話もお客様向けに簡潔にまとめます。
もしご注文を受ける場合は金、プラチナの金具は3㎜幅からあり、腕がチェーンの場合は仕入れて作るのでフルオーダーで作る必要はなさそうです。
もしオーダーのご依頼が来た場合、金額は結婚指輪のオーダーではなく、金具代、チェーン代、チェーンと金具の溶接代(サイズ調整込み)を足すアザースの料金体系で計算していきます。
腕部分が稼働するタイプの場合は腕部分のみフルオーダーなので結婚指輪のオーダー料金に金具代、金具と腕との溶接代を足した金額で計算する予定です。
まとめ
まずは指の関節が出た人向けサンプルリングが1ペアできました。
実際にサンプルは取り外しして確認して特に問題もありませんでした。
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