5、お渡し
(結婚指輪制作・ディスプレイ制作)
4回目のご来店で真鍮でのサンプル確認が終わりました。
5回目のご来店でご納品となるので
・プラチナで結婚指輪制作
・ディスプレイ制作
・フォトアルバム制作
と最後まで終わらせておきます。
プラチナで結婚指輪制作
特に修正がなかったのでプラチナでの結婚指輪の制作に入ります。
Pt950素材で鋳造から上がってきた指輪を仕上げます。
手順は真鍮サンプルとほぼ同じです。
ただ
・サイズ直しをした部分のロー目消し
・鋳造のス穴を消す
・両手とハートパーツを指輪に仮付け
という目的でレーザー溶接を使っています。
お客様の誕生石のアクアマリンとタンザナイトをそれぞれの指輪のハート部分に留めて、
最終仕上げの手前まで終わらせてレーザー刻印のデータ作って依頼します。
レーザー刻印が終わった指輪の最終仕上げをして完成です。
手の組み合わせはカチッとはまるようにやっとこで曲げて微調整しています。
今回は
プラチナ鋳造依頼
↓
パーツ仕上げ、ギメルリング完成
↓
レーザー溶接機を借してもらい
・サイズ直しをした部分のロー目消し
・鋳造のス穴を消す
・両手とハートパーツを指輪に取り付け
↓
工房でパーツとリングのロー付け、
石留め、金種刻印、下仕上げ
↓
レーザー刻印依頼
↓
全体の仕上げ
という風に御徒町を何往復かしました。納期は3週間で終わったらフォトアルバムなどの画像修正もあり納期はぎりぎりでした。
指輪側面へのレーザー刻印というのは今回が初めてだったのですが出来上がりがイマイチでした。レーザー屋さんも初めて依頼するお店で口頭でカーブの調整をお願いしたのも良くなかったと思います。レーザー上りがご納品2日前で刻印消し、再依頼だと間に合いません。
そこでご納品時にお客様に結婚指輪だけはレーザー刻印を打ち直してからの宅配発送に変更をお願いすることにしました。
こういった失敗があったので画像のようにCADでデータをリングのアールに合わせて調整、レーザー屋さんでカーブさせなくて済むように修正しました。
完成したデータがこちら
受付と実際の作業が別の人の場合もあるので簡単な加工依頼書も作りました。あとは納期を短くするためにズレている刻印は消してからレーザー屋さんに指輪を持ち込みます。
こちらが後日修正した刻印になります。
ひとまず加工は終わったので出来上がった指輪と加工工程でできたものを撮影して画像修正、ご納品の準備をします。
リングケース
納品前にリングケースとリングピローのどちらがいいかを聞いておきます。
リングピローというのは結婚式の指輪交換の時に使うケースで花嫁が手づくりすることもあるそうです。
結婚式場で用意してもらうと有料の場合もあるのでその説明もしてどちらかを選んでもらいます。
ディスプレイ制作
今回お渡しする結婚指輪以外に制作過程で出来たゴム型や試作リングなどを結婚式などで飾れるようにディスプレイにしてお渡しします。
これは事前に打ちあわせしておいて味のあるアンティーク調か白でまとめたブライダル調のどちらかを聞いて作りました。
①フェデパーツ(シルバー)
②サイズ確認用リング(真鍮に銀色メッキ)
③CADデータ
④樹脂原型
⑤ゴム型
⑥WAXパターン
⑦試作リング(真鍮)
左から色が青、緑、黄、赤とグラデーションになるように並べてアクリルボックスにまとめました。
フォトアルバムの表紙に使う画像としてこのディスプレイを制作過程の順番に並べた写真も考えました。
ピンタレストで見つけた唐辛子、スパイスなどをグラデーションになるようにした構図を参考にしました。
他にも
青 タンザナイト、アクアマリン
CADデータイラスト
樹脂原型
緑 ゴム型、WAXパターン
黄色 真鍮の鋳造上がり 分割済み、
サイズ確認用ロジウムメッキリング
赤 アンティーク調のリングケースに
仕上げた真鍮サンプル
白いリングケースにご納品リング
という構図も考えてみました。
今回は会話の中でインスタグラムの話題になったとき工具が規則正しく並んだ写真が好きとおっしゃていたのでご納品する物を使って作ってみました。
いくつか表紙の候補を作ったのですが、よく考えてみると結婚式の時にディスプレイとして飾ってもらう場合、その場にないのは新郎新婦が身に着ける結婚指輪です。
最終的に結婚指輪を両手を開いてハートが見える状態と両手を閉じた状態の2つで並べた画像をフォトアルバムの表紙にすることにしたので他の候補の画像はアルバム内で使うことにしました。
ディスプレイの説明書
結婚式場で飾る場合にディスプレイだけあっても見る人にはよく分からないので一緒に並べるA4にまとめた簡潔な説明書を作ります。
①結婚指輪の画像
②結婚指輪のデザインの説明
③ディスプレイの画像
④ディスプレイの説明と制作の流れ
⑤鋳造について
⑥フェデリングとギメルリングについての注釈
画像のように
今回作った指輪をメインで文章は
②は
アンティークの指輪では定番の
フェデリング※¹とギメルリング※²を組み合わせ、
プラチナ素材でお作りしました。
両袖の部分にはお二人のイニシャルYとMを入れて
指輪を解くと現れるハート部分には
3月の誕生石アクアマリンと
12月の誕生石タンザナイトを留めています。
刻印は
お名前とご入籍日、
お二人が知り合うきっかけとなった
バスケットボールのイラストを入れました。
伝統的なアナログの彫金技法と
最先端のデジタル技法を組み合わせて
オーダーメイドでお作りしています。
両袖の部分にはお二人のイニシャルYとMを入れて
現代風のデザインでお作りしました。
という風にどんなデザインかの説明を書きました。
この文章ではフェデリングとギメルリングがどんな指輪かの説明も必要なので注釈を文末に入れました。
フェデリング※¹
2から3世紀のローマで流行した指輪で
フェデ(FEDE)とはイタリア語で
信頼や忠実を意味します。
男性と女性が握り合う手を解くと
愛情を意味するハートが仕掛けになった指輪です。
ギメルリング※²
ルネッサンス期(15~17世紀)に流行った結婚指輪で、
ギメルとはラテン語のゲメルス(gemellus)、
「双子」という意味に由来します。
繋がっている複数の指輪が
パズルのように重なり1本の指輪になります。
と短くまとめました。
それからディスプレイの説明もします。
④の文章は
制作手順
①フェデパーツ(シルバー)
②サイズ確認用リング(真鍮に銀色メッキ)
③CADデータ
④樹脂原型
⑤ゴム型
⑥WAXパターン
⑦試作リング(真鍮)
シルバー板から①フェデパーツの見本を作ります。
それと平行して作った②サイズ確認用リングで
2週間ほど試着をしていただきます。
③CADデータを作り、
④樹脂原型を3Dプリンターで造形します。
樹脂原型の⑤ゴム型を取って⑥WAXパターンを作ります。
このWAXパターンを真鍮で鋳造して
パーツを組み立てて⑦試作リングを作ります。
スムーズに3つのリングが1本に重なるか確認ができたら
再びゴム型からWAXパターンを作り
今度はプラチナでパーツを鋳造、
組み立て、刻印、石留め、仕上げをして
結婚指輪の完成です。
この文章だと鋳造がよくわからないので1枚でわかる画像⑤を添えました。これをA4で印刷して透明の下敷きに入れます。
これも一緒に並べることでこれは結婚式に来た列席者の方が新郎新婦がどんな指輪をつけているのか分かるようになっています。
今回作ったディスプレイは結婚式が終わったあとにインテリアとして部屋に飾ることもできるように考えて作ってみました。
フォトアルバム制作
今回は価格が高めのオーダーメイドだったのでホームページには書いていませんがサービスでフォトアルバムも作ります。
手作り指輪のお店などではこのフォトアルバムやお二人の作業をDVDに焼いてお渡しするサービスなどもあります。
手作り指輪では指輪を作る二人に焦点をあてたフォトアルバムですがオーダーメイドでは指輪ができる過程に焦点を当てて作っていきます。
今回は納品時にお渡しできるように画像などを用意します。文字なしのフォトアルバムなので制作にも時間がかかりません。
今回作ったのはこちら
大手家電量販店でこのようなサービスをやっていて1000円くらいから作ることができます。
専用の機械で画像を選択して今回は1時間後には受け取ることができました。
店頭まで行かなくても専用ソフトをダウンロードしてNET注文、宅配で受け取りもできるようです。
先に画像修正を終えてやや多めにデータを持っていきます。
いい写真を選んで順番の並べ替えをして注文します。
ちなみに会社員時代に手作り指輪(セルフメイド)を担当していた時はお二人の制作風景と指輪を着けた写真を撮って後日、このフォトアルバムをお送りしていました。
今回はご納品時にこのフォトアルバムも一緒にお渡しするので結婚指輪を着けた写真は抜いて作りました。
修正前のイラストや打ち合わせ風景、加工工程などを全14ページほどにまとめて1500円ほどで作ることができました。
ちなみにPNG画像は機械が読み込まないのでJPEGに変換してから持っていく必要があります。
フォトフレーム
それから表紙の画像と同じ結婚指輪の拡大写真をフォトフレームに入れてこちらもお渡ししました。
ご納品
あとはご納品です。ご来店に合わせて準備をしておきます。
こちらがお客様の目線になります。
あとでメールで今回作った画像をダウンロードできるURLを送ります。
画像のアップロードはGIGAファイルという無料サイトを使っています。
今回はレーザー刻印の修正のため、結婚指輪だけは宅配発送になるので発送時に伝票番号と一緒にダウンロードURLをお送りしますと伝えました。
正方形にトリミングしてあるのでインスタグラムにそのまま投稿もできるようになっています。
ご来店されたらご納品の一式を見ていただきます。
お支払いは振込みで終わっているのでアフターフォローの説明などをして保証書と指輪一式を持ってお店の入り口までお見送りします。
ちなみにオーダーメイドや手作り結婚指輪のお店で多いのがお渡し時に①感想のアンケートに記入、②ホームページで写真の公開などをしていいか聞くことです。
感想アンケートはお客様の立場になって考えると書くのも手間だと思うのでこちらで話を聞いておいて後でブログに書くことにしました。
ホームページでは
・お名前はイニシャル
・刻印や指輪の写真はOK
・顔が映っている写真は
画像修正で「油絵化」したものならOK
という風にどこまで公開していいかを聞きます。
顔やお名前は出したくないという人も多いので確認を取るようにします。
このブログも了解がもらえた部分だけ公開しています。
以上、受付からお渡し(ご納品)までをまとめました。
次はご納品後の反省と改善点について書いていきます。
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