ここからは鋳造から上がってきた画像の指輪でサンプルリングを作っていきます。
ギメルリングは形状が特殊なので効率のよい仕上げ方を考えました。
ブライダル用の手間をかけた仕上げではなく、シルバーや真鍮のサンプルを作る省略した仕上げの方法です。
数が多いので工程ごとに流れ作業で進めていきます。
湯道取り
まず2本の指輪を繋げている柱部分(湯道)をカットします。
時間をかけたくないので大きなニッパーのような「クイキリ」でバチン、バチンとカットしていきます。
リング同士をつないだ湯道ですが、クイキリが入るようにデータを作るときに隙間を開けておきました。
2本のリングに分かれたら残っている部分もクイキリでカットします。
まずはこの作業をまとめて行います。スリ板の上にあるのがカットでできた湯道です。
湯道の処理
次に指輪のギメルで重なって見えない部分、2本の指輪の重なる内側部分のみダイヤモンドポイントをリューターにつけて湯道とバリを取ります。
直径の大きいダイヤモンドポイントの速度を速めでガリガリと削ったほうがヤスリでの作業より早く、余計な部分を削ってしまうこともありません。
2本の指輪の重なる内側部分のみリューターでサンドペーパーをかけます。
広い面は筒型で捻り部分は円錐型で磨いていきます。
この手順も1本ずつ磨くとリューターのポイントを取り付け時間がかかるのでまとめて筒形で全部磨いたら、円錐型で磨くことにして無駄をなくします。
カットして組み合わせる
ひねりにならない部分でカットして1本になるように重ねます。
サイズが変わらないように糸鋸の刃は極細のサイズを使っています。コンビリングは跡がでにくい真鍮のほうをカットしました。
ロー付け
カットした断面をロー付けします。
写真のように5本くらいずつ置いてカット面にロー剤をおいてまとめて溶接します。
ロー付け部分は染み出したロー材が膨らんでいるのでヤスリ、サンドペーパーで形を整えます。
溶接すると画像のように変色してしましまいますが、後でさっと仕上げると取れるのでこのままでOKです。
サイズ出し
2本の指輪を重ねて1本の指輪にしたら芯金に指輪を入れて木槌を使ってサイズを出します。
芯金に入れて叩いても指輪を正面から見たときに歪みがあります。
金床(かなとこ)の上に指輪、木槌を置いて上から金槌でたたくことで2本の指輪の重なる内面部分の隙間がなくなり、正面から見たときの歪みもなくなります。
接着
2本の指輪を重ねただけの状態だとグラグラ動いて作業がしにくいので組み合わさって重なる内面部分に接着材を塗って固定します。
接着材はパールの接着でも使う熱で溶けるABボンドを使います。
左手で指輪を持ったまま右手で混ぜてそのまま塗れるようにすり板に布テープを張ってその上でA材とB材を混ぜて塗っています。
通常の接着では動かないようにテープを巻いて30分ほど持ちます。
なぜ、テープを巻くのかというと接着材は固まる途中で動くので断面がずれないように固定するためです。
1本ずつテープを巻いて剥がしては手間なのでまとめて「リング差し」に入れて固定しました。
リング差しから外して確認しましたが、しっかり接着されていました。
全体の成形
ここから印台リングの形、腕の形をヤスリで成成形していきます。
最初は見えない内側だけペーパーをかけた理由はこのためです。
外側はヤスリで大きく削っていくので時間短縮のために何もしていませんでした。
まずは内面にヤスリ掛けをします。その後、内面をサンドペーパーで磨きます。
内面が終わったら側面、正面、腕回りにやすりをかけます。
ひとまずこれで途中まで完成です。(画像はサンドペーパーまでかけています)
ここから画像のように形状を変えたり、
テクスチャーをつけたりとアレンジすることが可能です。
アレンジが終わったら最後に熱湯で煮込んで接着材をはずし、組み合わさった指輪の重なる内面部分を仕上げたら完成です。
まとめ
通常の指輪と違って仕上げの方法が特殊なのでまとめてみました。
2連のギメルリングは当初は形状やテクスチャー違いでオーダーメイドの自由度が分かるアレンジを加える予定でした。
ただ、見ているうちにシンプルなつや消しのほうがコンビやデザインの違いがわかりやすいと思い、そのままにすることにしました。
同じ形のコンビリングが3セットできたので1セットは画像のような角をなくした丸みのある印台リングにアレンジする予定です。
手作り感のあるデザインも人気なのでもう1セットは角を丸くした印台リングに粗い槌目模様をつける予定です。
なので形状は
・シルバー平打印台 3本
・真鍮平打印台 3本
・コンビ平打印台 4本
・コンビ甲丸印台 4本
・コンビ槌目甲丸印台 4本
という合計18本にする予定です。
2連のギメルリングに関してはとりあえずここまでです。
3連のギメルリングができてからまとめて仕上げる予定なのでこの後のブログで詳しく書きます。
金、プラチナを1個ずつ仕上げるのと違って数の多いサンプルは加工工程も大分省いています。
ギメルリングは形状が特殊で普通の仕上げ方と違うので知りたい職人さんもいると思いまとめてみました。
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