㉚オリジナルリング1でデータができたので樹脂造形を依頼します。
この樹脂造形も指輪1本なら普通に依頼すれば造形屋さんがベストな方法で出力してくれます。
今回は①~④の合計4本の指輪をどうすれば
・コストを抑えて作れるか
・地金になったときの仕上げが楽か
を考えて造形を依頼します。
CADはデータが作れればOKではなく最後の仕上げまで考えて原型は作ります。
今回作った指輪はオーダーメイドのサンプルなのでサイズ直しなどは考えません。
まずCADデータから指輪になるまでは
①樹脂原型を造型機で出力して
②ゴム型を取って
③WAXパターンを作って
④地金で鋳造
という手順を踏みます。
この①~④を全部している会社もあれば一部の会社もあります。自分は普段、①②をA社、③④をB社という風に分けています。
今回のギメルシグネットですが、まず1番に考えたのは4本の指輪をうまく重ねて1本のリングとして造形、ゴム型を1つなら安いのでは?ということです。
画像はリング同士の隙間を地金の時に分割しやすく、ゴム型が確実に取れる2㎜開けた場合です。
幅3㎜のリングを4本組み合わせて幅15㎜の1本の指輪としたデータです。指の入る円を対称にして2本の柱(湯道)をつけています。
シルバーのファッションリングでは幅15ミリなど珍しくないので問題なく造形、鋳造もできてこれが一番安いのではないかと考えました。
ただ、
・2本の柱の太さは
どのくらいなら地金が問題なく流れるか
・指輪が大きいのでその分のデータ造詣代、
ゴム型が高くなるかも
という疑問が浮かんだので
2本の指輪を上下に組み合わせる組み合わせを
2パターン考えました。
幅が5.5㎜と7㎜を考えました。7㎜のほうが湯道削り後の仕上げが楽ですが、造形時間で長くなると金額が変わるので幅5.5㎜のほうが安くなります。
とりあえず、4本ずつ造形してゴム型4つが
一番高くなるのは間違えないので
①2個合体セット 2本 幅5.5㎜
②2個合体セット 2本 幅7.0㎜
③4個合体セット 1本 幅15.0㎜
のデータを持ってお世話になっている造形屋さんに相談に行きました。
①~③のデータを見てもらうと
・樹脂原型は同じ素材のサポート(柱)を付けるので
④はきれいにゴム型が取れないかもしれない
・地金がリング全体に流れるかも心配
・①と②なら何の問題もなく造形できて金も同じOK
・捻り部分のゴム型取りが難しいかもしれないので
ゴム型は専門の鋳造屋さんで依頼したほうがいい
という回答をもらいました。
リング同士をつなぐ湯道の大きさも相談して(太すぎると仕上げるときに手間で細すぎると地金がきちんと流れないので)後でメールで完成データを送りますと伝えました。
その後、①の隙間をゴム型がとりやすい2.0㎜にして指輪の幅を少し大きくして7㎜に収まるようにしてデータを完成させて造形依頼をしました。
ちなみにメールで送るときはファイルデータが重いと添付できないのでSTLという軽いデータに変換しています。
造形依頼の流れはここまでです。
①どういう形で樹脂原型を造形するか考える
②データ見本を持って造形屋さんに聞きにいく
③修正してデータをメールで送る
という流れでした。
データと一緒にメールでの見積もり依頼が一番無駄はないと思いますが、説明が難しい場合などは足を運んで情報などを仕入れています。
CADがあっても造形機がない場合にどうすればコストを抑えられるかという参考例として書いてみました。
鋳造依頼
依頼の翌週には樹脂原型が出来上がってきました。
普段はゴム型も一緒に出来上がってきますが、ゴム切りが難しいとの事で今回は鋳造屋さんに依頼します。
ここではまず、ゴム型について簡単に説明します。
画像はTOPページでも使っているゴム型です。左のオレンジ色の方は焼きゴムと言って地金の指輪に熱を加えて型を取ります。
右の透明な方は液ゴムと言って熱を加えると溶けてしまう樹脂原型の型を取るゴム型です。
このゴム型の隙間に溶けたWAXを流し込んでWAXパターンを作ります。
CADの樹脂原型ではこの液ゴムを使います。ちなみにゴム型は10年ほどで経年劣化するといわれているので大手メーカーではシルバーや真鍮で地金の原型をもっています。
樹脂原型が出来上がったら鋳造屋さんに依頼しに行きます。
指輪は1つに対して
・液ゴム1個
・真鍮リング 6
・シルバーリング 6
・WAXパターン 10
で注文します。
ギメルリングは2本の指輪を組み合わせるので偶数で注文します。
「地金の湯口はギリギリでカットして下さい」というと余計な地金代がかかりません。銀や真鍮ではそうでもありませんが、金やプラチナで頼むときはこれでお支払いが安くなります。
今回のようなひねりデザインの場合は湯口の位置も仕上げが楽な部分にマジックで目印をしておきます。
WAXパターンは1個100円~200円と安いので後でデザインが思いついたとき用として多めに注文しておきます。
地金の指輪は注文するときにバレル研磨をかけるか聞かれます。
バレル研磨は指輪を金属の棒や玉を水と一緒に洗濯機のように回すことで細かい部分にも磨きをかけることができます。
ただ光るだけでなく地金の表面がしまって磨いたときにス穴が出にくくなる効果もあるそうです。
1個100円ほどですが、細かい部分のあるデザインではなく、結局全体を磨くので安く抑えるために「バレルなし」で注文します。
ちなみに今回は加工依頼のあとに電話があり「VMDゴム」という焼きゴムがあり、低温で型取りするので樹脂原型にも使えて透明の液ゴムより安いとの事。
金額が下がるといわれたので液ゴムからそのVMDゴム型に変更をお願いしました。
後日、シルバーと真鍮の指輪、WAXパターンが出来上がってきました。(画像の緑のWAXパターンは加工途中のもの)
出来上がりを受け取るときにグレーの樹脂原型は壊れていてその代わりだと思うのですが、ブルーのゴムで原型を渡されました。
忘れていましたが、普段、造形を依頼するお店でもゴム型までお願いする場合は何も言わないと樹脂原型は返却されません。
初めてお願いしたときはビックリしましたが、地金のゴム切りと違って樹脂は壊れやすく返却不要は当たり前のようです。
不透明の型のゴム切りなのでしょうがないのかもしれませんが、気になるようなら液ゴムで頼んで樹脂原型の返却をお願いしたほうがいいかもしれません。
お客様に樹脂原型もお渡しするなど必要な場合は依頼するときに確認を取ったほうがよさそうです。
恐らく液ゴムにすれば中の樹脂原型が見ながらゴム切りができるので多少の傷はつくと思いますが、お願いすれば壊さずに返却してくれると思います。
樹脂原型の造形依頼、鋳造依頼は以上です。
次のオリジナルリング3では地金指輪の仕上げを説明をします。
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