猫の顔と様々な模様を入れたコンビの結婚指輪をお作りしました。
素材はメンズがK18WG(YGL)をベースにして溝の部分にK18PGメッキ、レディースはPt950をベースにしてK18YGメッキをしています。




どちらの指輪も最大幅は5.0㎜、最小幅は3.0㎜でメンズの仕上げは鏡面、レディースは艶消しになっています。
模様部分は槌目などの手作業で入れた仕上げ以外にペイズリー柄、麻の葉文様を入れました。
メンズとレディースで違う部分として
メンズは中心の溝にだけPGパーツの象嵌、
レディースはダイヤを後光留めという風に
しています。
猫の顔の裏側にはオッドアイ風にお二人の誕生石4月のダイヤ、9月のサファイアを留めました。
刻印はお互いの手書き文字で結婚記念日が入っています。
こちらがご納品セットです。
ここからはこの指輪が完成するまでの流れを説明していきます。
指輪のデザインを決める
画像は今回の指輪の展開図です。


当店のオーダーメイドは
指輪の①幅 ②素材 ③仕上げ(テクスチャー)
④石留め ⑤刻印 ⑥基本デザイン(形状)を
順番に選ぶことで誰でも簡単に
デザインを決める事ができるようになっています。
打合せでは
店頭のサンプルリングを見ながら
幅、素材、仕上げなど
デザインの詳細を決めていきます




サンプルリングは8枚のトレイに約600本を用意しています。
まずはデザインを決めるのに
大きいリングトレイから小さいリングトレイに
気になる指輪を移して、
その指輪を参考にデザインを決めていきます。




今回ベースになった指輪は
猫の顔とクレイジーパターンの2つです。
この2つを合わせて
クレイジーパターンの溝部分には
本体とは違う色でメッキをした
他では見ないオリジナリティの強いデザインに
することになりました。
Cat




猫の指輪は何パターンかある中から顔タイプを選ばれました。
猫は平安時代の文献にも飼っていた記録が残っているほど昔から人に身近で、招き猫に代表されるように幸運の象徴としても扱われる特別な動物です。
欧米の一部の地域では不吉とされる黒猫もイギリスでは黒猫を飼う船乗りは無事に航海できる、自宅の玄関先にいると幸せが訪れる等の言い伝えがあり、日本でも江戸時代に結核が流行した時には黒猫は夜でも目が見えるので厄除け・魔除けの象徴として人気のペットになったという歴史があります
写真の猫顔リングは正面の最大幅が5.0㎜、腕は3.0㎜で作っていてシンプルな指輪の上部に三角の耳を付けるだけで猫の顔であることが分かります。
アレンジ例として目、鼻と口、髭、左右に肉球も付けてみました。
それぞれ目の部分と左右の肉球の丸い凹み部分には1.0㎜の宝石を入れることもできるのでお二人の誕生石を入れるのもおすすめです。
猫の部分は表面の4分の1ほどに入ります。迷う場合は正面と背面で違う猫模様を入れる2面タイプもおすすめです。
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Crazy pattern




“クレイジーパターン(不揃いな模様)”という言葉は和製英語でカラーや柄の違うものを複数組み合わせた洋服などに使われます。
この指輪は複数のテクスチャーをパッチワーク状に組み合わせていて、見本は幅3.0、4.0、5.0、6.0㎜、正方形のブロックの中にそれぞれ違った仕上げ、中心のマスにはそれぞれ異なった彫り留めをしました。
正面のクレイジーパターンはインパクトがあるので、後ろ半分はシンプルな甲丸にして正面に向ける向きで2面から選べるようにしています。
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打ち合わせの結果、様々な模様が入るクレイジーパターン部分には石留めと仕上げ以外にペイズリーとアサノハ模様を入れることになりました。
ペイズリーとアサノハの2つは地金になってから入れる仕上げと違い、原型に模様として入れておきます。
Paisley




勾玉(まがたま)形等が集まった「ペイズリー」模様は19世紀にスコットランドのペイズリー市で、この柄の織物が量産されるようになった事で一般に広まりました。
この模様には優美な曲線や模様の繰り返しにより人に安心感を与える効果があると言われています。
日本では勾玉、松毱(しょうきゅう)模様とも呼ばれ、そのモチーフは植物の種子、果実、胞子、花弁、菩提樹の葉、ゾウリムシやミドリムシなどの原生動物と言われています。
発祥といわれるイランやインドでは尾を引いた形が胎児に似ているので生命力と結びつけて考えられたそうです。
この勾玉柄をシンプルな形状で数パターン作り、ランダムに配置して指輪にしました。
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Asanoha




日本には古くから吉祥文様(もしくは吉祥柄)と呼ばれる幸福や繁栄、長寿、厄除けなどの願いが込められた模様があります。
麻の葉模様(文様)は着物などに使われる日本の伝統的な吉祥文様で形が麻の葉に似ていることから名前が付けられた幾何学柄です。
正六角形を基調とした麻の葉文様は平安時代からあるほど古く、麻は成長が早くまっすぐに育つ植物なので江戸時代には赤ちゃんに健やかな成長を願ってこの柄の産着を着せることが流行しました。
現在は海外でも人気で英語の直訳(Geometric)hemp leaf patternから近年はAsanohaという言葉としても定着しつつあります。
見本の指輪は3.0㎜幅の彫り風模様で2本を上下に重ねると正六角形が現れ、麻の葉文様であることがより鮮明に分かるようになっています。
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画像は打ち合わせで決まった平面図です。
クレイジーパターンは
・長方形部分は全体の半分を少し超える位
・溝の幅は0.5㎜
・溝の部分には本体と別の色でメッキ
・レディースの中心の長方形には後光留め
・メンズの中心の溝にはメッキと同素材のパーツの埋め込み
という風に決まりました。
打合せ後に良いご提案が思い浮かぶこともよくあります。
今回はご希望のデザインとは別に
・長方形部分を1つ減らす(全体の半分を少し超えない位)
・メンズはレディースの後光留めとペア感の出る後光彫り
・メッキ部分が目立つ溝の幅は1.0㎜
という組み合わせで全4種類から選んでいただくことにしました。
レディースは本体がプラチナで溝にK18YGメッキ、
メンズは本体がK18WG(YEL)で溝にK18PGメッキの立体図を模様を入れる前の状態で作って画像をお送りしました。
色を付けてあるので完成形がイメージしやすいと思います。
その後ご返信があり、
・長方形部分は打ち合わせ時と変更なし
・溝だけ0.5㎜から1.0㎜に変更
・レディースの正面の猫の口は無しに変更
となりました。
リングサイズが決まり、デザインと立体データににOKが出たら樹脂原型の造形に進みます。
仕上げ以外のペイズリー、アサノハ、猫の顔は原型に模様として入れておきます。
・メンズの中心の溝にはメッキと同じ素材のパーツの埋め込み
上記のパーツは原型本体と一体化させておきます。
パーツと本体を繋ぐ円柱は正面の溝の穴と同じ径にしています。パーツの円柱をこの穴に差し込んで溶接することでパーツがずれることを防ぎます。
樹脂造形から指輪の完成まで




宅配で樹脂原型を確認していただいたら指輪の完成まで進みます。
樹脂原型からゴム型を取って、WAXパターンを取り出し、




貴金属で鋳造、サイズ出しをします。




パーツの溶接、石留め、全体の仕上げをしてレーザー刻印後にマスキングを行います。
このマスキングを行うことで、見えている地金部分にのみメッキがかかります。
メッキが終わったらマスキングを剥がして槌目などの仕上げを入れて完成です。
こちらが出来上がった指輪です。
内側にはお二人の手書き刻印、猫の目部分には誕生石のダイヤモンドとサファイアを入れました。2つの誕生石の位置はあえて左右逆ににしています。
指輪のお渡し
今回の指輪はクレイジーパターンと猫の顔のどちらも正面として使えるので、メインの写真は2方向から撮影して1つにまとめました。特典のフォトブックにはこの画像を表紙に使っています。
こちらがご納品したリングセット一式です。
制作過程で出来た原型などは木箱に入れてお渡ししています。




ご納品時には記念撮影をして、特典のフォトブックは後日発送しました。