ダイヤモンドの原石の説明が終わったので研磨後のダイヤモンドの説明をします。
婚約指輪のダイヤモンドはどうして
・あのカクカクしたラウンドブリリアントカットなのか
・カットのグレードが良くないといけないか
お客様に簡潔にダイヤモンドの魅力が伝えられるようにまとめてみました。
ダイヤモンドの説明①ではその価値は数億年前に地中深くで出来たダイヤの採掘の手間や大きさ、色、品質込みの希少性だったのに対して、この②ではカットの歴史や研磨することで生み出される付加価値について説明していきます。
というのも4Cの中でカラット、カラー、クラリティ―と違い、このカットだけは人間が手を加える事ができます。
ルビーは赤、サファイアは青、エメラルドは緑のように色石の魅力が色の鮮やかさならダイヤモンドの魅力はカットが生み出す「輝き」にあります。
そしてこの「輝き」がダイヤモンドを他の色石とは違う特別な石にしているからです。
耐久性だけでいえば無色のサファイヤはダイヤに次いで硬度が高く、靭性(じんせい)と言って割れにくさでいえばダイヤモンドより上で研磨も難しくないので希少性もありつつ、扱いやすい石といえます。
ダイヤモンドは天然石では最も硬度が高く、ダイヤモンド、もしくはその粉を使って研磨するしかないという加工の難しい石です。
そもそも4月の誕生石でもあるダイヤモンドの語源はギリシア語のadamas(アダマス)=征服できない、懐かないという意味に由来します。
その名前の通り、紀元前4世紀にインドで発見されますが、硬度が高すぎて加工する方法が分からず、15世紀まで研磨されず、原石のままのポイントカットでした。
その後、テーブルカット、シングルカット、マゼランカット、オールドマインカット、オールドヨーロピアンカットという風に変遷を重ねて1900年代初頭にマーセル・トルコウスキーという数学者がラウンドブルリリアントカットを発表します。
一番有名なラウンドブルリリアントカットは100年程の歴史しかないということになります。
この形の何がすごいかというとダイヤモンドの高い屈折率を数学的に計算していて理想的なカットは入った光が内部で乱反射して観察する人の目に戻って来て虹色に輝くようになっています。
ラウンドブリリアントカットは他のカットと違い、ダイヤモンドのために屈折を計算した意味がある形という事になります。
透明なサファイヤやクオーツなどでは同じカットを施してもこの輝きが出ません。
カット面それぞれに適正な角度が決められていて一つでもその範囲を外れてしまうと下のグレードになってしまうほど厳密に決められています。
硬度が高いダイヤモンドのブリリアントカットは他の宝石とは研磨方法も異なります。
ダイヤモンドは傷がモース硬度が10で引っかき傷などには強いですが、靱性(ジンセイ)といって割れや欠けに対する強さはルビーやサファイアの8より低い7.5です。
硬度と靭性は紛らわしいですが、例えるとガラスのコップを爪で引っかいても傷はつきませんが床に落とすと割れます。(硬度が高く、靭性が低い)
反対にプラチックのコップは爪で引っかくと傷がつきますが床に落としても割れません。(硬度が低く、靭性が高い)
靭性が最も高い天然宝石はヒスイで、繊維が絡み合っているので割れずらく中国では彫刻などにも用いられます。
一方、ダイヤモンドは硬度は10とどの天然石より引っかきなどの摩擦には強いですが、「劈開(へきかい)」と言って割れやすい方向があり、瞬間的に強い衝撃を与えると割れます。
ダイヤモンドはこの性質のために一気に研磨する事が出来ません。
そのためダイヤモンドの粉を塗ったカッターで原石を真っ二つにする画像のソーイングという工程は1時間で1~2㎜しか進みません。
ダイヤモンド同士をこすり合わせて輪郭を丸くするブルーティングという作業も同じで無理に力を加えると割れてしまうので少しずつ削っていきます。
こうして出来上がったラウンドブリリアントカットの中でも最上位グレードのエクセレントはアイデアル(理想的な)カットとも言われ、その輝きを最大限に引き出します。
ちなみにGIAでは「輝き」を3つの種類に分けてグレーディングしています。
ブライトネスは主にテーブル面に見られる白色の輝きです。
パターンはシンチレーションとも呼ばれ、動きに伴う「きらめき」でペンライトなどで光を当てて確認します。
ファイアはディスパーション(分散)とも呼ばれる虹色の輝き。
ダイヤモンド内部に入った光が反射を繰り返すことで起こるクラウンに集まる輝きのことです。
カットグレードが良ければこの3つの輝きを最大限に引き出します。
輝き=美しさなのでラウンドブリリアントカットの中でも婚約指輪にはエクセレントが使われる最大の理由がこれではないかと思います。
ラウンドブリリアントカットが完成されたのはここ100年ほどです。
現代人はそれ以前の時代の王様や貴族でも手に入れることが出来なかった輝きのダイヤモンドを手に入れる事が出来るようになったという事になります。
ダイヤモンドの価値というと希少性と4Cで語られてしまいますが、人間が歴史の中で自然にある固いだけのダイヤモンド原石を2000年以上の時間をかけて
1、数学的知識と職人の技術で
虹色に輝くカットを生み出して、
2、それを誰にでも分かりやすいに
4 Cという美しさの評価基準を作り、
3、一般の人にも手に入るようにした
という点に価値があるのではないかと思います。
ダイヤモンドの接客用の話は以上です。
今回の内容はGIAで学んだことをまとめました。
そもそも婚約指輪はどうしてダイヤモンドなのか、どうして透明な固いだけの石が値段が高いのか、お客様には①と②の説明で納得してもらえるのではないかと思います。
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