【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
当店の結婚指輪のカテゴリー ヒストリカルは歴史の篩(ふる)いにかけられ、今に残っているデザインを現代風にアレンジした指輪で追加、修正を繰り返して現在は11型をご用意しています。
今回、新しいデザインとアレンジ例等を3型加えることにしたので、その過程を
#062 新型ミル打ち月桂樹リング
#063 新型フェデリング
#064 新型ギメルリング
というタイトルで順番に更新していきます。
このブログでは平打ちをベースにしていた結婚指輪ローレル&ミルの甲丸タイプを新型として作ったので作り直した理由から制作、HPで公開するまでを書いていきます。
ローレル&ミルとは
写真のローレル アンド ミルは結婚指輪では定番の2つのモチーフを組み合わせた指輪で色々なブランドでよく見るデザインの一つです。
「ローレル」は月桂樹のことでギリシャ神話でも神聖視された植物で古代ローマでは栄光や勝利の象徴として月桂樹の冠を勝者に送る慣習があったそうです。
「ミル」は正確にはミルグレイン、ラテン語で「千の粒」という意味で連なった小さい粒は永遠や長寿などを表すと言われています。
このローレルとミルの組み合わせは昔からあり、模様は地金に鏨で彫ってミル打ちが一般的ですが、個人的に立体感があるデザインが好きなのでCADで作ることにしました。
今回、月桂樹の画像を検索してみると花が咲く前は枝に無数の白い蕾(つぼみ)があるので指輪のローレルと一緒によく用いられるミルはこの蕾を模しているのかもしれません。
ちなみにローレル アンド ミルはCADデータは両サイドミルだけでなく、インサイドミルタイプも作っています。
このローレル(月桂樹)を冠(リース)にした月桂冠(げっけいかん)の指輪も結婚指輪では定番のデザインなので基本デザインに加えています。
腕回り(指輪正面)には模様が入っていないので月桂樹模様は目立ちすぎて苦手という人にはこちらがおすすめです。
月桂樹模様を指輪の腕回りに入れるならローレル アンド ミル、側面に入れるならローレルリースと考えて並べて比較しやすいようにどちらも平打ちで作っています。
植物モチーフの指輪はCADデータのみも含めて何型か作っていますが、デザインに結婚指輪にふさわしい意味があることも含めて、このローレル&ミルが一番のおすすめです。
ただ、HPで何度も見返している内に自分が身に着けるなら甲丸にしたいと思う事と模様が平らな平打ちと、丸まった甲丸で比較して好きな方が選べるほうがいいかもしれないと思い、新たなサンプルを作ることにしました。
指輪を作る
ローレル&ミルは一番最初からある結婚指輪サンプルなのでこのブログではそこまで詳しく説明していなかったので最初から製作方法を書きます。
まずは「月桂樹 指輪」などで検索して他のお店がどんなデザインにしているか、月桂樹の指輪のスタンダードな形はどんなものかを調べます。
平打ちで手彫りのデザイン、サイドにミルの入った指輪が多い印象でしたが、自分が着けたいと思うのは立体感のある月桂樹の指輪だったのでCADで作ることにしました。
CADデータを作るので「月桂樹 イラスト」で検索して、
葉の部分の画像を参考に模様のスケッチをして立体に起こしていきます。
サイズは男性でも入るサイズの15号、厚みは2㎜、幅は3㎜に収まるように作りました。
月桂樹とミルのパーツはこのサイズに合わせて模様の繋ぎ目がわからないように等間隔に配置します。樹脂原型の模様部分などは0.3㎜の隙間がないと造形ができず、ゴム型を取ることもできないのでその部分も考えて作っています。
今回の甲丸は平打ちリングの制作途中のデータを横にコピーして甲丸の断面に合わせてローレルを曲げてミルは位置を下げて微調整することで1から作る手間を省いています。
その後、CADデータを樹脂造形してゴム型を取り、真鍮になって全部で3本出来あがって来ました。これを仕上げて金とロジウムメッキをします。1本は予備です。
仕上げに関してはミル打ち部分は上から鏨でなぞって丸の粒の形を整えるだけです。画像の鏨はナナコ鏨の先端の丸い部分を砥石で削って正方形にした即席ミル鏨で平打ちリングからミルを打つ場合はオタフク槌で叩いて球状を出していきますが、CADである程度まで丸くなっているので鏨を木の柄に差して手でなぞって丸い輪郭とテリを出すだけにしています。
あとは仕上げてロジウムとK18 でメッキをして完成です。
平打ちと甲丸の各2色で合わせて4本のリングができました。
HPを修正する
ローレル&ミルのページのメイン画像はレディースを平打ちから甲丸に変えました。これでローレル&ミルは平打ちと甲丸の2種類を選べる事が分かると思います。この2種類から選べるようになったので結婚指輪ページの内容を書き換えます。
金額は平打ちも甲丸も変わらないのでそのままです。
他の植物模様リングについて
結婚指輪サンプルでは植物模様のサンプルとして唐草模様の「アラベスク」、
ハイビスカスの「ハワイアン エングレービング」、
植物モチーフサンプルは実物はこれだけにして、他にはCADデータのみで見せることにしています。
聖書にも登場する麦の穂(wheat)、和テイストの桜、洋服などの生地でよく見かける草花や原生動物がモチーフとされるペイズリーなど、植物モチーフはイラストをまとめて管理していつでも指輪にできる状態で保存しています。
他に結婚指輪のモチーフになる植物だとバラ、マーガレット、ユリ、プルメリア、オリーブ、ブドウ、クローバーなどがあるので時間があればCADで指輪の幅に合わせたイラストだけは作っておきたいと思います。
麦の穂(wheat)に関してはこの後のブログでサンプル制作とHP上での公開も予定しています。
まとめ
これで月桂樹リングに関しては終わりです。
NETで画像を探していて月桂樹模様の指輪は平打ちが多かったので甲丸を作ろうとは思わなかったのですが、作り終えて比較してみると雰囲気が大分変わることが分かったので作って正解でした。
次のブログでは新型のフェデリングについて書いていきます。
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