【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
お店のオープンから2年を過ぎて指輪サンプルは400本ほど作りました。
この中でオーダーメイドの際に使う幅確認用リングは平打ち、つや消しで2から6㎜までの1㎜ごとに用意していて、アルミニウムのパイプをカットしただけの簡単なものです。
艶消しのサンプルリングはたくさんありますが、結婚指輪の幅見本として甲丸で鏡面仕上げも用意しておいたほうがいいこと、お客様の幅確認の様子を見ていて男性で指の大きい方には入らないのでサイズは30号で作り直すことにしました。
この幅見本リングを2種類作ったのでそれぞれの制作過程を詳しく説明していきます。
幅見本リング①
幅見本リングは普通の甲丸で鏡面仕上げリングを幅違いで作ってもいいのですが、今回は幅の確認で何度も着脱しなくていいように画像のような指輪を作りました。
お客様の幅確認の様子を見ていて2㎜と3㎜を交互に着けて幅の比較をする手間がかかっていることに気がついたので写真のような一本だけ指にはめて回して幅の確認ができる4つの幅見本が1本になった指輪にしました。幅は5㎜まであれば問題なさそうなので6㎜は入れません。
作業手順は幅2、3、4、5㎜の甲丸リングを作り、上から見て三等分します。カットした2、3、4、5㎜のパーツを1つのリングに溶接して最後はメッキをします。サイズは多少大きくなるので削って30号になるように調整します。
制作過程ですが、まずは幅2、3、4、5㎜の甲丸リングをコストをかけずに作っていきます。
工具屋さんで幅10㎜、厚み2㎜、サイズ15号の真鍮リングが百円位で売っています。恐らく鏨彫りや彫り留めの練習用として売っているものだと思いますが、4、5㎜幅のリングを作るのに丁度良いのでこの真鍮リング上下に糸鋸でカットして使っていきます。
糸鋸でカットした部分はヤスリをかけてバリを取ります。
4、5㎜の平打ちリングが出来たら幅2、3の平打ちリングを作ります。画像は東急ハンズで仕入れた真鍮角棒をローラーで伸ばして3㎜×2㎜と2㎜×2㎜にしてカットした状態です。サイズが15号の場合は全長59㎜の板で作るとピッタリでした。
幅2、3㎜の角板をバーナーでなましてサイズは15号になるようにそれぞれ丸めて断面同士を溶接します。
幅2、3㎜の指輪を芯金に入れて真円とサイズ出し、側面のヤスリ掛けをして4種類の幅の平打ちリングができました。
次に平打ちリングをヤスリで削って甲丸リングにします。
1㎜ごとに幅が違う4本の甲丸リングが出来たら上から見て3等分できる位置にマジックで目印をします。指輪の外側は研磨材で磨くところまで終わらせておきます。
目印をした1か所をカットしてサイズ棒に入れて木槌で叩いて30号の位置になるまで拡げます。
この4本の指輪をそれぞれ3等分の位置でカット、断面をきれいにして2、3、4、5㎜で1本に指輪になるように並べます。
カットしたパーツにはそれぞれ断面の中心にドリルで1㎜程度の穴を開けて短い丸線を差し込んで1本の指輪にします。
丸線を挟んでいるので溶接の時にパーツは動かずに4か所の断面を1回で溶接できます。
溶接が済んだら指輪を再び芯金に入れて真円とサイズ出し、
全体を鏡面仕上げにして3本の指輪ができました。
指輪の繋ぎ目には糸鋸でラインを入れて2、3、4、5㎜幅の違いを分かりやすくしています。
こちらがメッキから上がってきた状態です。ロジウム、YG、PGメッキの3本の幅確認用リングが完成しました。
指にはめて回すことで2、3、4、5㎜のどの幅がいいかを1本に指輪で確認することができます。
幅見本②
ロジウム、YG、PGメッキの3本の幅確認用リングが完成しましたが、
ピンクゴールドを選ぶ人は多くないので幅の確認用リングはロジウム、YGだけでもいいかもしれません。
制作途中に同じ材料でロジウム、YGだけで良ければもっと簡単に幅確認リングができるアイデアを思い付いたので追加で作ることにしました。
画像のようなフリーサイズのロジウム/イエローゴールドメッキのコンビリングになります。
まずは先ほどと同じ工程で2、3、4、5㎜幅の真鍮リングを用意します。
鏡面仕上げまで終わったら糸鋸で指輪をカットして芯金に入れて木槌で叩いてサイズが30号になるまで拡げます。
糸鋸でカットした部分はバリが出ているのでヤスリやシリコンゴムで丸く処理をして指に当たっても痛くないように仕上げます。
全体の小傷を取って仕上げ直したらまずはロジウムメッキに出します。
メッキから上がったら半分マスキングしてからYGメッキに出すのですが、順番が逆でYG→ロジウムだとYGメッキ部分がくすんでしまいます。
指輪の半分にマスキングをするときはまず、セロハンテープを指輪の中心辺りに一周巻いて指輪の半分にネイルエナメルを塗ります。
乾かす時はスリ板に紙を巻いて輪ゴムを何本か使って固定、輪ゴムと紙の間に指輪を差し込んでネイルエナメルが乾くのを待ちます。
セロハンテープを剥がすと真っすぐなマスキングの境目も出来ているので今度はYGメッキに出します。
メッキから上がってきたらリムーバーでネイルエナメルを拭き取って超音波洗浄機で洗って完成です。マスキング作業は彫金用のマスキング液とトルエンでもOKですが、金額が安いので100均でネイルエナメルとリムーバーをセットで買って使っています。
これで2つ目の幅確認用リングができました。幅が決まれば1本の指輪でプラチナと18金でどう見えるかの確認ができます。
今回作った2種類の幅見本リングですが、制作の手間を考えると上段のリングよりも下段のリングのほうが簡単だと思います。
まとめ
お客様が指輪を何本か着けて外してを繰り返して幅の比較をする姿を見て今回の幅確認用リングを思いつきました。
上段の指輪なら素材→幅、下段の指輪なら幅→素材の順に1本の指輪を指に着けて回すことで素材と幅の違いを具体的に比較することができます。
また、用意している結婚指輪サンプルは女性も着けることを考えて大きくても男性用が16号で作っています。
実際に打ち合わせをしていると気が付きますが、男性で20号オーバーの方も珍しくないのでその場合はリングゲージしか試着することができません。
今回、サイズゲージと同じ最大の30号で作ったのでこれでサンプルリングが指に入らない場合でも地金の色と鏡面の甲丸で着けたときにどう見えるかという幅の確認だけはすることができるようになりました。
今回の幅見本リングは作品集のページには投稿しないのでお客様向けには結婚指輪ページにリンクを張ってある「指輪の幅について」に画像と説明を書いておきました。
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