【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
オーダーメイドでアメシストの指輪をお作りしました。
今回は通常の婚約指輪のオーダーではなく、スリムリングに既成の石座を取り付けて原型を作る方法で制作したのでその流れを書いていきます。
打合せ
お客様はアメシストのルース(裸石)のお持ち込みで指輪の制作をご希望でした。
デザインにこだわることができるエンゲージリングコースと
シンプルで細身な部分価格を抑えることができるスリムリングコースの説明をしました。
スリムリングで石座は4本爪か覆輪かで迷っていらしたので、お見積りをメールでお送りしますと約束したところでその日の打ち合わせは終わりました。
その後、ホームページの石座ページを見ながら4本爪と覆輪でお見積りをまとめたPDFをお送りしました。
覆輪留めに関してはお持ち込みの石が大き過ぎた事とプラチナのオーバル石座でサイズがなかったので石座は特注で作る(シルバーで原型を作る方法)方法で計算してあります。
後日のご来店で見本としてシルバーの4本爪と覆輪爪の枠を用意して宝石を石座に乗せてみてどのような雰囲気になるか見てもらい覆輪留めに決まりました。
素材はプラチナ、腕は平打ち、テクスチャーはクロススクラッチで石座にも入れることになりました。
指のサイズは以前に作ったスリムリング用の1.5㎜幅のゲージを使って測っています。
指輪の制作
お客様に見てもらったシルバーの既成石座はペンダントなら問題ありませんが、指輪にして底の部分をリングの内面に沿って丸く削ると宝石のキューレットが出てしまいます。
1から作ってもいいのですが、今回は時間の短縮で既成の石座に底の部分だけを足して作り直すことにしたので、まずは写真のような石座の厚みよりやや厚い板を用意します。
この板を石座と同じ形に巻いてロー付け、楕円の芯金に入れて形を整えます。楕円の芯金がなければ丸の芯金で成形してから横から潰して楕円にしてもOKです。
石座と作った楕円板を上下に溶接します。
溶接したら出っ張っている部分をヤスリで削って側面のサンドペーパーで磨きます。
用意しておいた真鍮リングと石座を溶接します。あとは石座の底を指輪の円に合うように削って、
芯金に入れてサイズ真円を出して、
全体を軽く磨いたらゴム型、プラチナでのキャストを依頼します。
焼きゴムは縮みが激しいので原型リングは出来上がりサイズの0.5号大きめで作りました。
プラチナになって鋳造から上がってきました。
サイズ変更なしで12号になるように鋳造から上がってきたので湯道を削って磨いていきます。
今回は全体にクロススクラッチ模様を入れるので全体を艶消しにします。鏡面でもいいのですが引っ掻き部分は光るので模様を目立たせるために艶消しにしておきます。
覆輪留めのレール爪部分にもクロススクラッチ模様にするので艶消しにしたらまとめて模様入れ作業ができるように先にアメシストを留めてしまいます。
今回はシンプルで価格を抑えるという点に重点を置いています。下のイラストのように宝石のガードル部分が厚く、爪を倒すと宝石の上部が大分出てしまいます。石座の内側を削って宝石を沈めると今度はキューレットが出てしまうのでこのまま留めます。
留め終わった爪はサンドぺーパーで仕上げます。
この爪部分にキサゲでクロススクラッチ模様を入れると宝石に刃が当たる可能性があります。そこで今回は宝石に傷がつかないようにパール用の接着材を塗ってコーティングしてから模様を入れました。
模様を入れ終わってからお湯で煮込むと接着材は簡単に剥がれます。
クロススクラッチ模様に関しては原型で一度練習してから本番に移りました。キサゲを持った右手は常に同じ動きで指輪を持った左手を動かして当たる面を変えていくと模様も均一になります。
模様を付けたら内面の仕上げをして金種と石目の刻印を打って完成です。
形はシンプルですが、手彫りの模様が入ったことで手作り感のある長く使えそうな指輪になりました。
今回は深さが足りない既成の石座の底に地金を足すという変則的な方法で原型を作りました。
ホームページの料金表にも書いていないので石座のみオーダーメイドで作っても良かったかもしれません。
ラウンドのダイヤモンドはカットグレード評価があり、数学的に内部で光を乱反射させて輝かせるための角度が決まっているため横から見た深さなどはそこまで変わりません。
一方、色石は色を濃く見せるために今回のようにガードルが厚かったり、横から見たときに深くなっていたりすることもよくあります。
既成の石座では上から見て輪郭は問題なくても指輪に使う場合は底面を指輪の内側の円に合わせて削る必要もあるのでお客様にはオーダーメイドで受けて規制枠が使えるかは実際に石を合わせて確認を取ってから連絡のほうが良いかもしれません。
WORKSに投稿する
こちらがワークスの投稿画面です。
今回お預かりしたアメシストは一部分が透明です。
ワークスに投稿するアイキャッチ画像はムラのない紫色に見える斜めの角度のものを使います。
クロススクラッチ模様が分かりやすい背面からの画像も用意します。
デザインがシンプルなので4面図風の写真も作りました。SNSの投稿にはこの写真を使います。
まとめ
今回は通常のオーダーメイド(エンゲージメントリング)ではなく、価格を抑えたスリムリングに既成の石座を使う方法でリフォームしました。
細身でシンプルなデザインで価格は安いリフォームは需要があるので、宝石をお持ち込みの場合は通常のオーダーメイドの説明後にこのスリムリングでのオーダー方法をお伝えしています。
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