【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
指輪のデザインとどんな写真を撮るかおおよそ決まりました。作っている途中でデザインの変更などもあると思いますが、まずは30本の結婚指輪を作っていきます。
1、平打ちリングを作る
2、指輪の形状を整える
3、テクスチャーを入れて仕上げる
4、石留めをして仕上げる
5、ロジウムメッキをする
撮影もするので1本ずつ作っていくのではなく、まとめて30本を上の1工程ずつ順に終わらせて一度に完成させます。
サイトでは加工工程の写真も使うので今回は制作手順も詳しく説明していきます。
1、平打ちリングを作る
まずはサイズ12号、幅2.5㎜、厚みは2㎜で30本の平打ちリングを作ります。
一番楽なのはキャストですが、一番コストがかからない真鍮棒を曲げて作っていきます。
このブログでは何度か書いていますが、東急ハンズで3㎜×3㎜幅の1メートルの真鍮角棒が700円ほどで売っています。
この棒をローラーで幅2.5㎜、厚みは2㎜に伸ばすので1本あたり指輪10本分は取れるので30本分で角棒を3本用意します。
実際に伸ばしてみると予想より伸びて2本から50本分以上カットしてもまだ残りました。
真鍮リングをキャストすると1本500円はするのでかなり安くサンプルを作ることができます。
まず2.5㎜×2.5㎜まで伸ばしてこの片側を2.0㎜まで伸ばします。2.5㎜×2.0㎜厚に出来たら12号にしたいので長さは57㎜でカットします。
地金を伸ばしたことで硬くなったので一度なましてからヤットコで丸めます。
口を合わせてロー付けします。ロー材は真鍮ローです。
ロー付けが終わったら芯金に入れて木槌で叩いて真円とサイズを出します。
今回は数が多いので叩く時間を短くするためにサイズ伸ばし器でおおよその円にしてから芯金に入れてサイズ出しました。ちなみに今後のことも考えて20本ほど余分に作っています。
サイズが出たら金床の上に指輪、木槌を置いて上から金槌で叩きます。これで指輪の歪みを取って平行を出します。
ヤスリで成型して、サンドペーパーで表面全部を磨いてまずは平打ちリング完成しました。
この後削って成型しますがケガキがしやすいようにサンドぺーパーをかけています。
まずはここまでで撮影用にカットした角棒、ロー付け前の指輪、ロー付け後の指輪、ヤスリで成形した指輪の4つを持っておきます。
2、指輪の形状を整える
30本の平打ちリングができたらそれぞれのデザインに応じて指輪にケガキで削る位置の目印をつけて、荒目のヤスリで形を削り出します。
形状によっては糸鋸で溝を入れてそこから溝を広げるように削ったりもしています。
形状の削り出しが終わったらサンドペーパーで磨いて撮影をします。
V字カーブも作ります。
カーブさせる方法はいろいろありますが、今回は木床に凹みを作って鏨で上から叩いてV字にしました。
V字にしたら糸鋸で溝をつけて、
ヤスリで一部を丸くします。平らな部分は宝石が入るのでそのままにしています。
3、テクスチャーを入れて仕上げる
指輪の形を出すところまで終わりました。
テクスチャー(仕上げ)に関しては板のサンプルを9種類ほど用意しています。
鏡面とつや消しの抜かして指輪にミル打ちと毛彫り鏨で模様を彫るパターンなど定番のテクスチャーを入れます。
これまで指輪の形状に関しては他では見ない指輪を考えてこのブログでもその過程を書いてきました。
今回は海外サイトなども見て珍しい、目を引くテクスチャーはないか調べてから作業に取り掛かりました。
普通に考えるとテクスチャーは鏨で叩くスタンプ、鏨で彫る、先端工具やヤスリで削る方法などがあります。デザインがいろいろ作れるので鏨で彫る方法は今回は省きます。
まずはリューターの先端工具やヤスリを使って出来るテクスチャーからつけていきます。
深めの荒らし模様は先端をギザギザにした鏨を金槌で叩いて模様を付けます。
机で叩くと振動が大きいので金床の鉄の部分を外して彫刻台を置いて模様をつけています。
ミル模様も定番です。
まずは平打ち、鎬、甲丸の順番で削って、
中心ライン上のミルは真ん中に糸鋸で溝を入れて幅の細いシリコンゴムで溝を磨いてミルを打っていきます。
あとはミル鏨で模様をつければ完成です。
両サイドミルは甲丸リングを擦り板の側面に当てて糸鋸で段差をつけてシリコンゴムで磨いています。こちらは中心ライン上のミル打ちと違い片側に壁がないためにミルがズレることがあるので写真のように2本の平打ちリングで挟んでからミルを打っていきます。
30本の指輪にテクスチャーまで終わったら全体をスポンジやすりでつや消しにして内面を研磨材で磨きます。
この状態で一度写真撮影をしておきます。
どのような角度と背景で撮影するかなども事前に決めましたが多少変更しました。
3、石留め前の指輪の正面写真(メッキ前、背景ライトグレー)
真鍮で金色 1と同じ角度で背景も同じの画像は
スリ板の上で撮影してセピアにした画像に変更しました。
5、真鍮板、平打ちリング、下穴リング、完成品メッキなし
この写真は下穴なしで撮影しておきます。後で石留めを入れるかも考えましたが、撮影と修正が楽なので左から①真鍮板、②平打ちリング(ロー付け後)、③平打ちリング(ヤスリかけ後)、④石留め前の4本が並んだ状態で撮影しました。
4、石留めをして仕上げる
指輪にテクスチャーを入れた指輪が30本出来ました。この指輪に透明石を留めるので下穴を開けていきます。
透明石は1.0、1.3、1.5㎜を使うので同じ径のドリルを用意します。
完成図を見ながらどの位置に穴を開けるかヘラの先端で目印の点を付けて1.0㎜のドリルで下穴をあけます。
ハンドドリルのバイスに取り付けてもいいのですが、穴が深くないので微調整しやすいのでピンバイスを使っています。
この下穴が開いた状態で何本か撮影をします。
1.0、1.3㎜のドリルはピンバイス、1.5㎜はハンドドリルに取り付けて1本ずつ留めていきます。
下穴を空けたら石留めをします。
留め方は上の5種類があります。この定番以外にもありますが、形状とテクスチャーで十分個性的な指輪になっている事と他の指輪と比較がしやすいように爪留めと覆輪留めの2種類だけに絞りました。
連彫りは毛彫り鏨や片切り鏨を使って溝を作っています。
事前にこのデザインならこの留めと個数が合いそうというのを決めています。
透明石は1.0、1.3、1.5㎜を用意してあるので面によっては大きさを変えて留めます。
30本を作る中で何本かは止めて新しいデザインに変更もしました。
留め終わって内面を仕上げたら再度、撮影をします。
5、ロジウムメッキをする
真鍮の指輪を銀色のロジウムメッキをしたら再び1本ずつ撮影します。
これで結婚指輪のサンプル30本が完成しました。
次のホームページでの公開について書いていきます。
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