接客をしている、もしくは独立していずれは接客もする予定のジュエリー職人さん向けに、ジュエリー業界で特に重要なスキルや知識をまとめました。
一口にジュエリー職人と言っても黙々と作業をする原型職人、量産ジュエリーの職人、CADオペレーター、キャスト職人など職人の種類も多いので分業ではなく接客、仕入れ、制作と全部を一人で完結させたい、いずれは独立して一人でお店を立ち上たいという方を想定して書いていきます。まずはオーダー結婚指輪を作る職人向け接客で必要な3つの技術です。怪しいビジネス書のタイトルみたいですが宝飾店オーナーの経営論や職人が考える仕事観や精神論でもなく独立して一般のお客様と直接話す機会がある職人さん向けの技術の話になります。
そして、大人になってからの「若いときにもっと勉強しておけばよかった」と同じで実際に宝飾店でお客様と話すようになって早くから覚えておけばよかったと自分が一番反省している内容でもあります。この技術の話はジュエリー加工に関してはメーカーにいれば先輩の仕事を見て、ジュエリーを作るという業務なのでこの内容は不要かもしれません。一般のお客様と直接話す機会がある職人さん向けの技術の話になります。長くなったので全部で4回に分けました。
オーダー結婚指輪を作る職人が接客で必要な技術
- ①必要だと思った理由
- ②必要な技術 その1、パソコンを使う
- ③必要な技術 その2、文章を書く
- ④必要な技術 その3、話す
必要な技術3つに関しては分けるのが難しく、重なっている部分もありますが結局この3つは分けて考えられないと感じます。というのも、一般のお客様と直接話すお店ではなにが必要か考えて①パソコンを使って商談用の資料を用意して②文章を書いて内容を覚えその2つを使って③話すことで仕事を受けているからです。
この業界ではない人からすればそんな当たり前の事?と思う方もいるかもしれませんし、加工の技術的なことではないのかと思う人がほとんどだと思います。なぜこのことを書くかというとこの業界で職人を目指す人は
- ①アナログな人が多く(パソコンは使わず)
- ②難しいことを考えるのが嫌いで(書く習慣がなく)
- ③人と話すより作業に没頭したい(会話が苦手)
という傾向があります。
もちろん、違う人もいなくはないですが店舗責任者として採用なども行っていてその傾向が高いことに気が付きました。自分も20代までメーカーだったので一般のお客様と話す仕事は30代になってからです。そこでもっと早くから覚えておくべきだったと思う技術がこの3つです。加工業に没頭する仕事だとこの3つの技術は習得する時間がないですし不要です。先輩方も知らないので教えられません。この話はすでに個人店で独立している職人さんには共感してもらえると思います。
具体的な例でご説明します。
少し前に以前の職場の同僚からメールが来ました。「新しく入った職人が期待していたほど仕事ができない」という内容でした。その方の年齢は35代半ば位で誰でも知っている大手メーカーから来た男性職人とのことでした。その年齢まで大手で残れていたということは後輩に指導する立場か技術的には一通りのことを習得しているはずです。
その同僚がどうしてできないと言ったのかはなんとなく想像できます。
自分がいたその職場は職人が一般のお客様と話すオーダーのお店なのでお客様との話ができず、受注ができなかったではないかと思います。
メーカーとは、違い一般小売店であれば仕事を受注できる人が仕事のできる人です。どんな方法であれ受注できれば仕事ができる人になります。
話すことがある程度決まっている既製品ではなく聞かれた事に専門知識を交えて答える、更に同業他社ではなく自社を選んでもらうというのは普段多少話せる人でも難しいです。出来上がりの見えないオーダーメイドだとなおさらではないでしょうか。
そう考えるとオーダーメイドは金額・デザイン・作り・素材などある程度全般の知識と話す技術が必要で出来るようになるまで時間がかかる提案力込みの個人技と言えます。
大手でも
・デザイナーと職人が分業のオーダーのお店が多い
・フルオーダーと言いつつデザインを絞った
パターンオーダーになっている、
・どのお店もブランド化して既製品を売りたがる
という理由がこのあたりにあると思います。
その同僚は(というか10歳上の女性職人ですが)そんなメールをくれるので自分のことは認めてくれていたという事だと思います(たぶん)。
なぜそう思うかというと自分はその同僚の後に入社しましたが前職で接客の経験があり①パソコンを使って商談用の資料を用意して②文章を書いて内容を覚えその2つを使って③話すことで受注できていたからです。その男性職人さんにはお会いしていませんが年齢もそこまで違わないならこの3つ①パソコンを使う②文章を書く③話すを覚えることで出来るようになると思います。
ちなみにその女性職人さんは話すのが上手で臨機応変で話題も豊富な感覚タイプです。
自分は話すのがそこまで得意ではない、頭も良くない準備する理屈タイプです。
タイプが違うので一緒に働いていたときはお客様が何を重視するのかなどによってどちらが担当するか変えていました。
話を戻すと作ることに特化した職人と接客のできる職人がいるので前者はメーカー、後者はお客様と話す宝飾店が適材適所です。
同じ職人でもメーカーでは時間内で検品を通り、数を上げることのできる人が、接客込みの宝飾店では受注できる人が仕事ができる人です。(極端な話、加工は他の人に振ることもできます)
逆に自分とその同僚が今、その新しい職人さんのいたメーカーに入って納期に間に合うように検品を通す加工をやっても若い人たちに勝てない、仕事のできない人になると思います。
以前、何かの記事で新しい会社に転職して仕事ができる人は10パーセントと書いてあるのを読みました。
最初の会社に入ったときは先輩や上司は万能で職人仕事は特殊だから黙って言われた通りにやる、言われた通りにやっていれば勝手に仕事ができるようになると思っていました。
ある程度、経験した今だからわかりますが職人の仕事は多岐に分かれていて分業になっているので全てができる職人はいないし、出来る職人と出来ない職人がいるわけではありません。職場によって「仕事ができる人」に求められる能力が変わります。
才能とかよりも知っているか、知らないか経験しているのか、まだしてないのか位の違いです。
この仕事をしていると向いてないなどの心ない言葉を言われて自信を無くすこともあるかと思います。なのでこの話を頭の片隅にとどめておくと心に余裕もできて楽になります。
少なくとも一般のお客様と話す仕事は話すことが下手でも①パソコンを使って商談用の資料を用意して②文章を書いて内容を覚えその2つをうまく③話すことで自分の弱点をカバーできます。これは誰でも習得できます。
そしてこの3つの技術を覚えてから加工しかしていなかった以前に比べて自分の頭で考えるようになったと実感しています。その技術を
・どうして覚えた方がいいのか
・どうやって覚えるのか
②必要な技術 その1、パソコンを使う
③必要な技術 その2、文章を書く
④必要な技術 その3、話す
の3回に分けて書いていきます。
職業訓練指導員という資格の講習会で教えてもらったのですが人に教える時はまずは「動機付け」つまり、覚えるとどんないいことがあるかを説明しないといけないそうです。ちなみにその講習会は試験に受かったのはある程度実務経験のある技術者、各分野の国家検定1級取得者なのでその話を聞いた反応は
「俺たちの時代はそんなことは言ってられなかった・・・」
「仕事ってのはそうやって覚えるものじゃない・・・」
「これだから現場を知らない講師は・・・」
という空気が教室中に・・・(個人的感想です)。ただ、この文章も最後まで読んでもらうことを考えた場合、そして読み終わった後にやってみようかなという気になってもらうため説明していきます。
実際に職場で新しく入った人に教えていたときも「本人の自主性を尊重」を言い訳に基本、作業の手順しか教えていなかったので反省しています。というのも、この内容は若い人向けにかいているので技術を習得するまで会社で働くことも必要になってきます。
ジュエリーは贅沢品で必需品ではないので景気に左右されやすく、会社の売り上げが良くないと仕事ができない、もしくは必要ない人材からリストラ候補になります。
そうなったときに家庭があるかなども考慮されると思いますが加工の技術力だけで判断される場合は再就職しやすいなどの理由で経験の少ない若い人が残ることは難しいです。ただ加工の経験が少なくてもこの3つを覚えることで他に代わりがいない会社から必要な人材だと思われます。このことも30歳を超えてから気が付きました。
自分が30歳を超えて会社で重宝されていた理由は
・メーカー数社にいたので加工全般ができた
・職人にしては社交的
・資格を持っていた
事以上に
①パソコンを使う
②文章を書く
③話す
が多少なりともができていたからだと思っています。
働いていると気が付きますが加工+多少なりともこの3つができるという人がほとんどいないからです。ものすごくではなく多少できるだけで違います。長く会社に在籍することができればその分技術を覚えることができて独立や転職に備えることができます。
それから早く始めれば出来るようになるのも早いです。
接客で必要な3つの技術を覚えた方がいい理由は以上です。
ではまずはパソコンから説明していきます。
次の記事 | > View More |
職人向け 記事一覧 | > View More |