結婚指輪として関節が出ている指用の開閉式リングをお作りしました。

幅は3㎜で素材はPt950、
正面はウェーブ腕(S字カーブ腕)で鏡面仕上げ、
背面はストレート腕で艶消し仕上げと
こだわりの詰まったデザインになっています。
 

開閉部分には「セーフティー」と呼ばれる留め具を付けたダブルロックの構造にしてあります。
 

刻印は手書きでお二人の誕生日とイニシャル、内石は1月の誕生石ガーネットと8月の誕生石ペリドットを留めています。
 

指輪のデザインを決める

当店では指の根本でフィットさせる指輪の見本は4種類ご用意しています。

当店の開閉式の指輪を見てのご連絡で、奥様から旦那様が骨折の影響で指の関節が出ているので、開閉式リングを製作したいというご依頼でした。

※結婚指輪は1本だけご注文も可能です。
ペアでご注文の場合と金額、特典が異なります。
 

 
指の第二関節が出ている場合、通常のリングゲージで根本のサイズを正確に測ることはできません。
 

 

そこで柔らかいベルト状のゲージを使って指の根本サイズを測っていきます。

通常のオーダーではサイズの確認用に店頭で測ったサイズで真鍮リングをお作りしています。

今回のご依頼では通常の真鍮リングではなく、このベルト状のゲージを同封して数日着けてもらい、最終サイズを決めてもらいました。
 

今回のベースとなる開閉式の指輪は手に力をグッと込めても開かず、片側を上から押すとロックが外れる仕組みになっています。
 

お客様は見本の形は何かの拍子に外れないか心配という事だったので、中折れ金具のセーフティーを付けるダブルロックをご提案しました。

セーフティー金具は指輪の側面に付くので、そこまでデザインの邪魔にもなりません。
 

指輪の形状は某ブランドの指輪画像の持ち込みで同じようなカット面ありのウェーブ腕にしたいというご希望でした。

店頭では

・U字
・M字
・S字(ウェーブ)
・V字
・正面から見てハート
・正面から見て無限大(∞)

と6種類のカーブ見本をご用意しています。

このサンプルも参考にカーブを決めていきました。
 

 

打合せ翌日にまずは金具の付く可動部分は省いて、ウェーブ(S字カーブ)腕でおおよそのデザイン画を3パターンを作ってお送りしました。

1、正面と背面が左右対称のウェーブ(S字カーブ)
→どちらを向けても同じ形

2、正面がウェーブ(S字カーブ)腕で
背面がストレート腕(今回の見本と同じ形)
→まったく違う2面から選べる

3、正面と背面が同じ向きのウェーブ(S字カーブ)
→指輪を外して正面から見たときに∞マークに見える

とそれぞれに良い点があります。

正面と背面の形を画像のように3パターン作ってご提案し、正面はウェーブ(S字カーブ)腕、背面はストレート腕の2番に決まりました。
 

指輪を作る

正面図が決まったら立体の原型データを作っていきます。
 

 

腕の形を作ったら可動部分とセーフティー金具のデータも作ります。
 

 
最初は市販の最小サイズのPt850セーフティー金具を仕入れて指輪に取り付けるつもりで寸法を測って、
 

 

完成イメージがわかるようにデータを作りました。
 

 
今回、ご依頼の素材はPt950のハードと言って少量のルテニウムという素材を添加することで通常のプラチナより硬くなっています。
 

 

パーツは細いですが、地金になってからの出来上がりを見て強度に問題がなければ、今後同じような依頼があった際に市販のパーツにはない素材でも対応できるので、試しに原型に付けておくことにしました。
 

その後樹脂原型にOKが出たので、ゴム型を取り、WAXパターン作りを経て、地金へと鋳造進みました。
 

 

写真左のパーツはプラチナ、
右の指輪の素材はシルバーです。

本番のプラチナの前にシルバーで組み立てて、動きに問題がないかを確認をしています。

仕掛けのあるギミックリングなどはCADデータ上は問題なくても実際に組み立ててみると不具合がある場合もあるので、基本的には安価な素材のシルバーか真鍮で試してから本番に進むようにしています。

シルバーのセーフティー金具の強度も動かしてみて問題なかったので、既製品は使わずに今回鋳造したハードプラチナパーツを使うことにしました。
 

指定のサイズピッタリに真円がでたら金具の可動も確認、内面だけ磨いてレーザー刻印をします。
 

 

ちなみに今回はレーザー刻印後に可動する部分の強度補強のために穴を開けて直径0.9㎜のピアスポストを差し込んで溶接という改善をしました。
 

 

今回の刻印は最初は手書き文字でお二人の誕生日とお名前のイニシャルを入れて、刻印の前にお二人の誕生石を入れるというご希望でした。
 

 

開閉式の指輪は刻印を目にする機会も多くなるので、
指輪の中心から左右対称に誕生石を配置して
それぞれの石と誕生日が紐付いた並びに変更を
ご提案して採用となりました。
 

指輪の完成

刻印から指輪が上がってきたら

1、正面のウェーブ(S字カーブ)腕が鏡面
2、背面のストレート腕が艶消し

という指定通りに仕上げて完成となります。

仕上げのあとに再度、可動部分の動きも確認しています。
 

 

こちらがご納品セット一式です。

試作のシルバーリングも特典として木箱に入れてあります。
 

今回は簡単な指輪の付け外し方もまとめておいて、
ご納品時にその確認と練習もしていただきました。