お客様からのご依頼で
内部に遺髪と遺骨を納めた
メモリアルリングをお作りしました。
幅は3.0㎜、素材はPt950、仕上げは鏡面です。
刻印にもこだわって作っています。
3パターンご提案して1つを選んで頂きました。
メモリアルリングについて




メモリアルとは「記念の」「記念碑」という意味で、ただの記念というよりも「追悼の」「故人を偲ぶ」の文脈で用いられます。
この指輪はお持ち込みの「大切な何か」をリング内部の凹みに収め、透明樹脂で閉じ込めて身に着けることが出来るので、大切な故人やペットの遺骨を入れることも多く、メモリアルリング、カロートリング、遺骨リング等とも呼ばれます。
遺骨を取り入れたジュエリーの歴史は古く、死者を悼む目的で19世紀(ヴィクトリア中期)に流行した遺骨、遺髪や黒色のエナメル、ジェット(化石化した木)を使ったモーニングジュエリー(センチメンタルジュエリーとも)が有名です。
アンティークのメモリアルリングは同時代に流行した
1、詩やメッセージを入れるポージーリング
2、骸骨等の模様を入れるメメント・モリリング
3、故人を偲ぶ言葉と七宝を入れるモーニングリング
という3種類との組み合わせたもよく見られます。
フルオーダーではそういった指輪との組み合わせも可能です
ポージーリングについて | > View More |
メメント・モリリングについて | > View More |
モーニングリングについて | > View More |




結婚指輪としてペアでのご注文ではなく、遺骨リングとして一本だけご希望のお客様向けには宅配でもご依頼可能なセミオーダーをご用意しています。
甲丸、月形甲丸、楕円印台の3種類から選べて、原型がある事でフルオーダーよりも納期が早くリーズナブルです。
- メモリアルリングについて > View More
今回ご依頼いただいたメモリアルリングは甲丸のセミオーダーで、凹み部分を2分割した「分室」加工をしたものになります。
指輪のデザインを決める




当店のオーダーメイドは
指輪の①幅 ②素材 ③仕上げ(テクスチャー)
④石留め ⑤刻印 ⑥基本デザイン(形状)を
順番に選ぶことで誰でも簡単に
デザインを決める事ができるようになっています。
店頭サンプルを見ながら
幅、素材、仕上げなど
デザインの詳細を決めていきます




セミオーダーは①幅と⑥基本デザイン(形状)が決まっています。
メールで事前にお見積りを出していたこともあり、
デザインはセミオーダーの幅3.0㎜の甲丸で
素材はPt950、仕上げは鏡面とスムーズに決まりました。
指輪の内部凹みには
1、亡くなったお父様の髪
2、亡くなった愛犬の骨(歯、足、尻尾の3つ)
を入れたいということで、凹み内を2分割する仕切りを付けることになりました。
今回こだわった部分が刻印です。
刻印はオーダー特典として15文字か同程度のイラストを無料でお入れすることができます。
画像のように鼻の部分は飼っていた愛犬(フレンチブルドック)の写真、全身のシルエットはお持ちのキーボルダーの写真から
・鼻の部分
・全身のシルエット
の刻印データをこちらで作って、鼻の部分のアリ・ナシの2パターンから選んでいただくことになりました。
文字刻印は愛犬の名前のみで、書体は打ち合わせのときに書体変換サイトに文字を入れて、比較した中から写真の書体を選んでいただきました。
指輪の完成まで
打合せ後に金額や納期の詳細をお送りしてOKが出たので、制作と並行して刻印データを作っていきます。
上記の画像はお客様にお送りした刻印完成図でA~Cの3択から選んで頂きました。
ちなみにCの鼻の部分の写真は流行している「ChatGPT」にお願いしてみました。
ChatGPTは
Chat:会話する
GPT:Generative Pre-trained Transformer(生成型・事前学習済み・変換器)
という意味の生成AIです。
OpenAIが開発した対話型AI(人工知能)モデルで、人間の言語を理解し、自然な文章で返答することができます。
Cの画像はこのChatGPTに写真をアップロードして
・この写真をモノクロのイラストにして
・もっとシンプルに
・白黒を反転させて
などの指示をして作りました。




指輪の制作も進めます。
セミオーダーメモリアルリングはWAXパターンを用意してあります。
これをカットして指定サイズで作り、




プラチナで鋳造、サイズ出しをします。
指輪の仕上げをしたらお預かりした遺髪と遺骨を納めていきます。




遺骨はニッパーで先端をカットします。
遺髪は束にまとめて透明樹脂で固めてから凹みに収まるサイズにカット、
凹みに収めて上から再び透明樹脂で固めて盛り上がった部分を仕上げで均していきます。
この後にレーザー刻印を入れ、最終仕上げをしたら完成です。
指輪のお渡し
こちらがご納品前の写真です。
お預かり時にビニールの小袋に入っていた遺髪と遺骨の余った分は白いケースに入れ直してお返ししました。
ジュエリーの歴史の話をすると最古の素材とされるものは、金・銀・銅といった金属ではなく、アフリカのブロンボス洞窟(南アフリカ)で発見された約7万5千年前の貝殻ビーズです。
これらの貝殻には穴が開けられており、糸を通して首飾りやブレスレットにしたと考えられています。
その時代に使用された素材は動物の歯や骨、貝殻、石や木片、鳥の羽などでした。
これらは「身分」や「所属部族」、または「魔除け」の意味を持っていたとされ、人間の知性や社会性の進化の証拠でもあります。
今回お作りした指輪は見た目はシンプルな甲丸リングですが、ペットの遺骨は生前の姿をイメージして歯、足、尻尾の3つを順番に並べたりとこだわりました。
お客様のアイデアで愛犬の遺骨の前(左側)にはお父様の遺髪を入れる事で、生前のリードを着けて散歩をしていた姿を彷彿とさせるデザインになっています。
このように内側のデザインにこだわる事で、お客様にとって「手元供養」というだけでなく、お父様と愛犬を身近に感じられる「お守り」という意味も込められた特別な指輪になったと思います。