2つの指輪を向かい合わせに重ねると
∞(無限大)マークが現れる指輪をお作りしました。
指輪には新郎新婦の指紋と誕生石が
お相手の指輪に入っています。
素材はどちらも18金で
メンズはピンクとホワイト(イエロー)のコンビ、
レディースはイエロー、
仕上げはどちらも荒らし(浅め)、
幅はメンズが3㎜、レディースが2.5㎜です。
誕生石は新郎様が4月でダイヤモンド、
新婦様が6月のムーンストーンです。
指輪には外石だけでなく、
内石もお相手の誕生石が入っています。
お客様のアイデアで
指輪の形と同じ無限大を刻印し、
その中にお相手の誕生石を留めました。
写真のように2つの指輪を向かい合わせにして
重ねることで無限大が現れます。
指紋はご来店時に専用シートでお取りして、
お互いの左手薬指輪の指紋を
指輪の表面に模様として入れました。
こちらはご納品の一式です。
特典のリングケースは木製を選ばれました。
天気が良かったので屋上でも記念撮影して、
特典のフォトアルバム用に作った画像と一緒に
メールでお送りしました。
Infinity(stack) / Fingerprint
ベースとなった指輪はこの2つです。
インフィニティは「無限大」、スタックは「重ねる、積み重ねる」という意味です。この指輪は本来は繋げる断面同士に段差が設けることで2本を重ねて上から見ると∞(無限大)マークが現れる指輪になっています。
フィンガープリントはその名前の通り、指紋のことでお客様の指紋をお取りして指輪に模様として入れます。
無限大をモチーフにした結婚指輪は人気があり、
今回ベースとなった
・2本を重ねて上から見ると
∞(無限大)マークが現れる指輪
だけでなく、
・正面から見ると∞に見えるカーブリング
・大きな輪を中心で捻って∞を作ってから
2つに折り畳んだ指輪
・折りたたまれた∞(無限大)の形を
甲丸リングの縁(ふち)に重ねた指輪
も定番なので、サンプルをご用意しています。
指紋は世界で一つの模様なので
結婚指輪では刻印や指輪表面の模様として人気の
モチーフの1つです。
当店では
従来のWAX原型に指を押し当てて型を取る方法や
地金になってからレーザーで印字する方法ではなく、
専用シートに押印した指紋をPCに取り込んで、
CADデータに変換、樹脂原型に
模様として入れています。
指紋の大きさ、深さの調整、
複雑な面への模様入れが可能です。
原型に模様として入れておくことで
金額も抑えらるだけでなく、
立体データで完成図を確認することができるので、
出来上がりがイメージと違うということがありません。
ご注文の指輪ができるまで
今回ご依頼のお客様は
欲しい形の指輪がHPに載っていた事と
職人と直接打ち合わせができるという点に
興味を持ってご来店して下さいました。
他のオーダー店を何件か見てからのご来店だった事と当店のデザイン決めのブログも見てから来て下さったこともあり、作りたい形はかなり具体的にイメージされていました。
幅、仕上げはすぐに決まり、
無限大リングに指紋を入れたいということで
マジックでサンプルのインフィニティリングに
指紋範囲、レディースはどこまで
ダイヤモンドを入れるか目印をしてもらいました。
斜め斜線が指紋範囲、レディースの横線が
宝石の入る範囲になります。
レディースの石留め範囲はノギスで測ると
直線で1.3㎝でした。
幅2.5㎜に1.5㎜の宝石を入れることになり、
指輪はカーブしているので
少し多めに10PCのダイヤモンドで金額を出して、
打合せ後にお送りするCADデザイン画で
正確な個数と金額をお伝えすることになりました。
素材に関しては18金の
イエロー、ピンク、ホワイト(イエロー)の3種類で
考えたいという事でその場では決まりませんでした。
素材に関してはこのあとお送りする試着リングで最終サイズを決めるまでに選んでもらえれば大丈夫ですと、お伝えしました。
今回のオーダーではメンズは正面の交差する四角部分にムーンストーンを後光留め、レディースは指紋の入らない反対側の腕に4本爪の連留めで入れることになりました。
石留めはCADで作る場合は原型に石座と爪を作っておけるので、手彫り留めの半額です。
写真のようなCADで作る手彫り風の留めでよければ、
後光留めも見た目はほぼ同じで金額は半額になります。
内石は手での4点留めのみとなります。
店頭で約40種類用意している小粒宝石は
幅3㎜の指輪に内石として留めることができる
最大直径1.5㎜で揃えています。
留め見本リングは彫り模様部分が入るので、
宝石直径は1.0㎜です。
ダイヤやモンドと違って色石は最小サイズが
1.0㎜以上のものも多いので調べたところ
ムーンストーンは1.3㎜でした。
なのでこの1.3㎜で留めることにしました。
色石の金額は1.5㎜以下はすべて同じにしています。
試着リングのリングサイズを決めて、
お二人の指紋を専用のシートで取って打ち合わせは
終了、翌日にお見積りとデザイン画をお送りしました。
この段階ではまだご注文ではないので
指紋はサンプルと同じ仮のものを使ってデザイン画を
作ります。
お見積りとデザイン画はメールはそれぞれPDF1枚に
まとめてお送りしています。
お見積りは「ご注文内容とご納品までの流れ」というタイトルにして決まったデザインの詳細、金額とその内訳、特典、振り込み口座、ご注文からご納品までの流れと目安の日数、その他注意点などをまとめてあります。
文字だけだと見にくいので、写真やイラストも使って、この1枚にお客様が知りたい情報をスマホで拡大して見やすいように2列にして詰め込むようにしています。
デザイン画は打ち合わせで決まったデザインそのままだけでなく、アレンジの参考になりそうな指輪画像やお客様に決めていただきたい事などを選択形式の質問にして載せたりもします。
今回の場合は指輪を正面に向けたときに
1、重なる腕の左右どちらを上にするか
2、指紋とダイヤモンドのどちらを上にするか
で、全4パターン考えられるので
「Q1、指紋は指輪を正面に向けたときに上向きで入れます。レディースを①から④のどれににするか1つ選んで下さい。メンズはレディースに合わせます。」
という質問と
お客様がマジックした正面の交差する四角部分は
指紋がないデザインもよさそうなので
「Q2、正面の交差する四角部分に指紋を入れる場合は①、入れない場合は②でメンズ、レディースそれぞれどちらにするか選んで下さい。」
と質問を載せて選んでいただくことにしました。
こういった質問に関してはどうしますか？という質問だとお客様が深く考えないといけないので、できるだけ比較画像を載せて選択するだけで決められる質問にするようにしています。
打合せ後のメールで指輪の厚みは全て均一ではなく、上部が厚く、下部に向かって薄くなるようにして欲しいという追加のデザイン変更があったので、まずは上部2.5㎜、横1.8㎜、下部1.6㎜厚のレディースCADデータを作りました。
こういった場合の数字は特にご指定がない場合はこちらで強度を考えたバランスの良いデザインをご提案して変更することもできますとお伝えしています。
その後、ご返信が来て、正面の見た目は
Q1、腕は右側が上で宝石入り、左側に指紋
Q2、正面の四角部分には指紋なし
と決まり、指定口座にお内金を振り込んでいただいて試着リングセットを発送しました。
試着リングは真鍮板を曲げて
決まったデザインとほぼ同じ形を
打合せで測ったサイズでお作りします。
今回のように指輪内面の形が
リングゲージと形が大きく異なる場合は
サイズが同じでもフィット感が変わります。
手間はかかりますが、
ご納品時にサイズが合わないとならないために
オーダーの特典として
追加料金なしで作っています。
ちなみにきちんとサイズが出ているかお客様は確認ができないので、サイズ棒に入れてリングサイズが出ている証明画像も発送するデザインシートに載せています。
まずは試着リングで最終のリングサイズを決めてもらっている間にメールでデザインの細かい部分を決めていきます。
入金後にデザイン変更をしたいというご相談はよくあります。
検討中だった素材については、他社の斜めに切り替えられたコンビリング画像が添付されて見本のように2色に変更できますかという質問がきました。
画像のイラストはできますという回答ともにメールで送ったコンビ画像です。
コンビリングに関しても
定番の形は料金のページで
一部 ¥10,000
半分 ¥15,000
上下 ¥30,000
内外 ¥30,000
捻り ¥30,000
(ギメルの溶接)
という風に価格を公開しています。
ご希望の特殊形状をコンビリングにする場合、
料金表に当てはまるコンビ加工がないからといって
これより高くなるわけではありません。
金額の違いは加工難易度、作業時間の長さで決めています。
半分と捻りの組み合わせのような2か所の溶接ですが、
正面の一部と背面の広い範囲を斜めに溶接するのは
半分のコンビよりも明らかに難しく、
捻りのコンビよりは難易度が低いと考え、
捻りコンビよりも少し安い金額を
ご提示しました。
それに加えて見本画像は添付されていましたが、このコンビは切り替えの斜めの角度を反転させるパターンも斜めの角度を全体の半分ではなく、４分の１位にしてもデザインとしておかしくありません。
イラストのように指紋と石留め部分にかからず、背面から見たときにバランスの良い切り替え位置を提案するだけでなく、自由記入欄を作って画像をお送って記入をお願いしました。斜めの線を一本引いて、指紋と宝石側それぞれの素材を指定するだけなので、難しいことはありません。
その後、切り替え部分はこちらのご提案でOK,
コンビはメンズのみでOKということになり、
素材、最終サイズ、刻印も確定したので、
お客様の指紋で樹脂造形用の原型データを
作っていきます。
こちらが決定したデザインのイラストです。
・指輪の下部だけは平甲丸
・無限大刻印の中に外石と同じ宝石を留める
という変更も加わりました。
これで立体データを作っていきます。
今回のデータ制作でのポイントは2つあります。
１つは画像のように２本の指輪を重ねたときに
きちんときれいな∞マークになること
もう一つは溶接でずれないように
溶接面に凸凹のポッチをつけることです。
画像のように上部1か所、下部2か所で
凸凹のポッチで固定してから溶接することで
左右対称なコンビリングになるようにします。
お客様には最終デザイン画と刻印完成図をPDFにまとめて、完成する指輪と原型の立体データをメールでお送りします。
これでOKが出たら樹脂原型を造形、
宅配で送りして、こちらもご了解が出たら
返送していただければ
お客様のすることはご来店日を決める事だけです。
納期は樹脂原型が工房に戻ってきてから1か月後がご納品日となります。複雑な形状でなければコンビや石留めアリでも納期は変わりません。
樹脂原型が工房に戻ってきたらゴム型を取って
WAXパターンを取り出して3つに分割、
素材ごとに鋳造したら、
コンビリングだけロー付けをした後に2本の指輪のサイズ出し、石留めをして、
レーザー刻印と内石留めをします。
写真のような無限大刻印に内石を入れる場合、
3㎜幅はφ1.3㎜、2.5㎜幅はφ1.0㎜が最大サイズで
2.0㎜の腕には入れることができません。
メンズは2つの素材とも18金なので刻印は750のみ、
レディースの指輪はダイヤモンドなので、
外石、内石の石目を分けた刻印を入れています。
ちなみにダイヤモンド以外の宝石では
中石石座があるような指輪でなければ
石目刻印は入れないので
ムーンストーンの石目は入れていません。
刻印と内石留めが終わったら
全体をサッと仕上げて完成です。
このようにベースとなる指輪を選んで
①幅 ②素材 ③仕上げ(テクスチャー)
④石留め ⑤刻印などの要素を組み合わせることで、
世界で一つの指輪を作ることができます。