結婚指輪としてギメルリングと印台リングを組み合わせたギメルシグネットリングをお作りしました。
どちらも幅は4㎜、素材はPt950、仕上げは艶消しです。
指輪の側面にはお二人の手書き刻印とそれぞれお好きな動物アイコンのヒヨコと熊が入っています。
指輪のデザインを決める
お客様はHPに載せている写真のギメルシグネットリングを見てご来店して下さいました。
この指輪は4種類の組み合わせで幅2㎜の2連から幅5㎜の5連まで作ることができます。
お客様から幅2㎜の2連タイプを倍の幅4㎜に変更できないかということでオーダーメイドでお作りしました。
Signet
シグネットとは認印や印鑑のことで、かつてのヨーロッパでは貴族が自分の紋章を指輪正面の平らな部分に入れて封筒の封印する蝋に押し当てて使っていました。
アメリカなど欧米の大学で卒業の記念に作られるカレッジリングもこの指輪が元となっていて、日本では印台リングとも呼ばれます。
Gimmel
ギメルリングは繋がっている 2本の指輪がパズルのように重なり1つになる指輪です。
ルネッサンス期(15~17世紀)に流行した結婚指輪で、ギメルとはラテン語のゲメルス(gemellus)、「双子」という意味に由来します。
ギメルリングは絡み合う2本の指輪を別素材にしたり、仕上げを違うものを選ぶアレンジがおすすめしています。
打合せを重ねた結果、見本の幅2㎜の2連タイプを倍の幅4㎜に変更、正面から見たときにアシンメトリーなデザインでインパクトが十分あるので、素材はプラチナ1色のシンプルな艶消し仕上げにすることになりました。
打合せ後にお見積りのメールを送り、指輪代をご入金いただいて試着リングを発送、指輪のサイズはメンズは18号、レディースは8号に決まりました。
サイズが10号違うので、正面の長方形部分の形は変えないようにデータは中間の13号を作って5号サイズ変更することで2つの指輪を比較したときの違和感をなくしています。
お客様にはその説明と3つの3Dデータをお送りして、ご了解をいただいてから原型制作に進みました。
ちなみに打合せの時に納期は急ぎであること、店頭サンプルと形がほぼ変わらないので、樹脂原形での形状確認は省いています。
指輪を制作する
ご依頼の指輪はメンズとレディースの幅が同じです。通常は個別のサイズで原型を作りますが、今回は中間サイズのデータがあります。
1つの原型からお二人のサイズに直したほうが2つの指輪のデザインの誤差が少なく、木箱に綺麗に収まり、何より同じお母さん(原型)から生まれた双子のような意味を持たせることができます。
そこでお二人の中間サイズ、13号で樹脂原型も作ることにしました。
作業は樹脂原型を造形、ゴム型を取り、WAXパターンを作ります。
13号のWAXリングを2つ用意して、片方の指輪真下を5㎜切り取り、もう片方に移植します。
これで無駄なく18号、8号のWAXパターンができます。
今回の素材は1種類だけです。なので、写真のように指輪の真下に2本が重ならないようにWAX棒を立てて鋳造に出します。
こうすることで鋳造上がり後に通常はどちらかの指輪をカット、もう片方を組み込んでカットした断面を溶接するという手間を省くことが出来ます。
こちらが鋳造上がりの状態です。
2本の指輪の間の棒に湯道(地金を流し込む場所)を付けてもらいたかったのですが、鋳造工場から湯道がその位置だけだと鋳造が上手くいかないかもしれないということで外側の捻りのない部分2か所に湯道が付きました。
指輪がプラチナになって鋳造から上がってきたら、2本の指輪を繋ぐ棒をカットして湯道を削り、組み合わせた状態で指定のサイズ出しをします。
そのあと艶消し仕上げまで終わったらレーザー刻印を入れます。
ちなみに可動する指輪はデータ上は問題なくても真鍮の指輪で試して不具合がないか確認してから鋳造に出しています。
今回はWAXパターンが出来た段階できちんと2本が重なるかの確認もしました。
刻印は組み合わせた時に見えない側面部分に入れることになっていて、お客様の手書き文字、お好きな動物アイコンが上部に来るように配置しました。
指輪の真下には刻印が来ないので、将来のサイズ直しも可能です。
画像のようにレーザーで刻印を入れて、
仕上げたら完成です。
こちらがご納品の一式です。
お客様が海外と日本を行き来していて、ご希望納期に来店が難しくなってしまったので、ご納品時の記念撮影はせずにフォトアルバムを制作、
ご納品一式をまとめて日本のご住所に宅配でお送りしました。