結婚指輪としてアンティークでよく見る手を握った形が特徴の「フェデリング」をお作りしました。
素材はメンズがK18WG(YEL)、レディースはK18YGでどちらも手と袖部分は艶消しで、腕には樹皮(bark)をイメージした木肌仕上げを入れています。
指輪の内側にはバスカヴィルという書体で「It Had To Be You」というメッセージ刻印が入っています。これはお二人が好きな「恋人たちの予感」という映画で使われたKenny Rankinの曲だそうです。
フェデリングは男女が手を握った形がモチーフになっています。
そこで両袖はアンティークのフェデリングでよく見るタキシードとフリルに変更してアクセントを効かせています。
今回も制作過程でできた原型などは特典としてお渡ししました。
指輪のデザインを決める
お客様はフェデリングをオーダーできるお店を探していて、NET検索で当店を見つけてお越し下さいました。
フェデリングは2~3世紀のローマで流行した指輪でフェデ(FEDE)とはイタリア語で信頼や忠実を意味します。
様々な派生デザインがありますが、男性と女性が握り合う手を解くと愛情を意味するハートが現れる形が一般的で、婚約が決まるとこの3本で一組の指輪を花嫁、花婿、立会人が1本ずつ持ち、結婚式の時に一つにしたと言われています。
中世になると手が開く仕掛けのない、手を握ったデザインが主流になっていきます。
店頭ではオーダー見本として2~3世紀に流行した3連の仕掛けタイプと中世以降のシンプルな手を握ったタイプの両方をご用意しています。
当店ではアンティークでよく見るデザインを現代風にしたサンプルリングを多数ご用意しています。
アンティークベースの指輪はデザインソースとなった指輪の説明をするときに写真も見ていただきたいので、以前はPCで画像表示をしていました。
現在は主に2種類の本を使って説明しています。
一冊は上野の国立西洋美術館が出版している写真メインのアンティークリングの本で、「The Rings」というタイトル通り、紀元前から現代までの指輪史をまとめたような内容になっています。
この本に載っていて、当店でも同じ系統のデザインを作っていた場合はその指輪画像付きの付箋を貼って、大元のデザインがどんな指輪なのかを説明するのに使っています。
もう一つはこれまでに作った結婚指輪サンプルを一つにまとめたフォトブックで2冊あります。
こちらは接客時に使えるようにアレンジ例のイラストや指輪の写真、短い説明分なども添えています。
ちなみに当店ではアンティーク系の結婚指輪は基本デザインのヒストリカルというカテゴリに分けていて、MENUバーのTOPとMARRIAGEから一覧で見ることができます。
ヒストリカルの指輪は画像の日本ジュエリー協会から出版されているジュエリー用語辞典から指輪名を調べて、海外の検索サイトで画像を集めて日本人向けのシンプルなデザインとして作っているものがほとんどです。
いわゆるプレーンな形で作ってあるので、オーダーの際は見本そのままではなく、個性的なアレンジを加えるのもおすすめです。
今回の打合せでも見本のフェデリングをベースに
・メンズは手と腕の幅が3㎜、レディースは手が4㎜、腕の幅が2㎜
・素材はメンズがK18WG(YEL)、レディースはK18YG
・どちらも袖はタキシードとフリルに変更
・どちらの仕上げも手と袖は艶消し、腕は木肌
と、こだわりのアレンジを加えたデザインに決まりました。
指輪を作る
写真の店頭サンプルはプレーンな袖で、
銀色のメンズは手、袖、腕の幅が3㎜で
金色のレディースは手5㎜、袖4㎜、腕の幅3㎜となっています。
今回のオーダーではメンズは手と腕の幅が3㎜、レディースは手が4㎜、腕の幅が2㎜です。
メンズは見本と同じ幅なのでイメージとのズレは起こりません。
レディースは見本にはない、手が4㎜、腕の幅が2㎜のご指定だったので、ご注文いただいてから袖の幅を0.5㎜ごとに作ってご提案して、一番バランスの良い3.5㎜に決まりました。
真鍮製の試着リングをお送りして最終サイズを決めてもらったら、メールで指輪の原型データ=立体のデザイン画を確認してもらいます。
これでOKが出たら宅配での樹脂原型の形状確認となります。
樹脂原型はデザイン画(原型データの画面を撮影したもの)と同じ形で造形されるので「修正なし」を前提にオーダー基本料の価格を抑えています。
今回はメンズの原型を腕の部分はそのままで、手の方を1mm大きくしたい=レディースの手と同じ大きさにしたいという変更があったので、1本だけ再造形(追加5000円)と地金代をいただいて手と袖をレディースと同じ幅に変更しました。
修正したデータでは腕の絞りをありとなしの2パターンを作って選んでいただきました。このように一部の大きさを調整した場合にはほかの部分も調整しています。
今回はレディースで手の形は確認できているので、宅配で修正した樹脂原型は確認せず、次の工程に進むことになりました。
最初の樹脂原型のメンズとレディースを2つに分けて、修正したメンズとレディースの樹脂原型を接着剤でくっつけて、
液ゴムを取ってWAXパターンを作り、それぞれの貴金属での鋳造となります。
鋳造からそれぞれの地金で上がってきたらまずは指輪のサイズ出しをします。
その後、ご指定通りに手と袖は艶消し仕上げ、腕には木肌(きはだ)仕上げを入れていきます。
ちなみに当店の仕上げは全10種類から選ぶことができて複数を組み合わせても金額は変わりません。
木肌(きはだ)は樹皮をイメージした仕上げです。手仕事のアンティークのような雰囲気の出る仕上げなので、今回のフェデリングにもピッタリです。
仕上げ後にレーザー刻印を入れてさっと仕上げたら完成です。
フェデのデザインや大きさだけでなく、腕の仕上げにもこだわったアンティークのような指輪ができました。
指輪のお渡し
こちらがご納品セット一式で、
ご納品時の写真です。
フェデパーツ部分は艶消し仕上げで指に着けるとこんな感じの肌になじむ指輪になっています。
レディースはアンティークでもありそうな定番の18金イエロー、メンズは当店ではホワイトゴールド(イエローイッシュ)と言っていますが、他店ではシャンパンゴールドとも呼び、男性にもおすすめできる目立ちすぎない18金です。
最近は天気が良ければ屋上でも記念撮影をしています。
ちなみに今回は新婦様から結婚式で利用する各種紙物や画像等で、フェデのイラストを使いたいというご希望がありました。
特典のフォトアルバム用に作った画像はメールでダウンロードURLをお送りしていて、イラストも含めてSNSなどご自由にお使いいただけます。
今回は構図を指定したいという事だったので、当社のPINTERESTという画像共有SNSのアカウントをお送りして、過去にUPしてある画像を参考にご希望のフェデリングの構図と線、背景色を指定したスケッチを返送用の試着リングセットに同封してもらい、
数枚の画像をお作りしました。
折角なので特典のフォトアルバムにも入れようと思い、画像修正ソフトを使って手書き風に見えるカラーのイラストも作りました。フォトアルバムには右下の指輪を拡大した画像を入れてあります。
指輪だけでなく、イラストも喜んでいただき、ご納品後に新婦様がフェデリングのイラストを使ったペーパーアイテム画像を送って下さいました。
今回作った数枚のシンプルな線画イラストは原型データを角度を変えてスクリーンショットと画像修正をしただけなので、手書きのデザイン画と違ってそこまで制作時間はかかりません。
同じような線画なら打合せの時にペーパーアイテムに使いたいなどご相談の上、構図を指定していただければ、無料でお作りします。