アンティークの指輪では定番の
フェデリング※¹とギメルリング※²を組み合わせ、
プラチナ素材の結婚指輪をお作りしました。
両袖の模様部分には
お二人のイニシャルYとMを入れて、
指輪を解くと現れるハート部分にはそれぞれ、
3月の誕生石アクアマリンと
12月の誕生石タンザナイトを留めています。
ハートの指輪側面には
お名前とご入籍日、
お二人が知り合うきっかけとなった
バスケットボールの刻印が入っています。
伝統的な彫金技法と
最先端のデジタル技法を組み合わせて
オーダーメイドでお作りしました。
フェデリング※¹
フェデ(FEDE)とは
信頼や忠実を意味するイタリア語で
2から3世紀のローマで流行した指輪で
男性と女性が握り合う手を解くと
愛情を意味するハートが現れます。
ヴィクトリアン期以降は
(1837年から1901年のヴィクトリア女王の統治期間)
両手を握り合う開かないデザインが
主流になっていきます。
ギメルリング※²
ルネッサンス期(15~17世紀に流行った結婚指輪で、
ギメルとはラテン語のgemellusゲメッスル、
「双子」という意味から来ています。
繋がっている複数の指輪が
パズルのように重なり1本の指輪になります。
日本では結婚指輪を身に着ける習慣が定着して
大正時代に流行したと言われています。
フェデギメルリングができるまでの流れ
1、メール対応、ご来店打ち合わせ
1週間
2、両手パーツサンプル、CADデータ確認
2週間
3、樹脂原型確認、サイズ確認リングをお渡し
2週間
4、真鍮試作リング確認
3週間
5、お渡し
初めてのご来店から約2か月後、
五回のご来店でご納品となりました。
1、メール対応、ご来店打ち合わせ
メールでフェデリングの制作の
お問い合わせをいただき、
何度かメールで打ち合わせをして
お見積りをお出ししてからの
ご来店となりました。
事前にご相談のメールをいただいていたので
参考になりそうなフェデリングの
画像を集めておきました。
指輪の素材、幅、テクスチャー、刻印など
決められる部分の打ち合わせをしていきます。
腕の部分は3連のギメルリングにすることに
なりました。
ご希望の納期に間に合うように
まずは1週間いただいて
両手のパーツのサンプルをシルバーで手作り、
出来上がりのイメージを確認してもらいます。
腕はCADで作りました。
CADデータは360度回転するので
色々な角度から見ることができます。
2、両手パーツサンプル、
CADデータ確認
シルバーで作った両手パーツと
ギメルリングの
CADデータを確認していただきます。
3本の違いがわかりやすいように
色を変えています。
前回決めなかった袖のデザインなど
細かい部分を決めていきます。
画像はお客様が書いたデザイン見本です。
両手パーツはもっと小さく、
指輪の幅も細身に変更になりました。
ギメルリングの形状も
オリジナルリングと同じような
3連タイプの変更しました。
メールで出来上がりのイメージ画像をお送りします。
この後CADデータの修正を何度かして
画像のデザインに決まりました。
袖のデザインは
お客様がメールで
送って下さった画像を参考に
作り直しました。
デザインのOKがでたら
3Dプリンターで樹脂原型を造形します。
今回の指輪は特殊なので
画像のようなパーツの状態で造形して
地金になってから手作業で
組み立てていきます。
画像のようにギメルとフェデのパーツを
それぞれ一つにまとめることで
お客様にとっては追加料金なしで
お作りできるというメリットもあります。
3、樹脂原型確認、
サイズ確認リングをお渡し
メールでのOKが出た
樹脂原型が出来上がりました。
両手のパーツを
指に乗せて大きさの確認をして頂きます。
OKなら2週間後に
真鍮の試作リングの確認です。
サイズ確認用の指輪で試着期間も
スタートします。
2週間のサイズ確認期間に
樹脂原型の型から
真鍮のパーツを取り出しで
指輪を組み立てます。
4、真鍮試作リング確認
真鍮のパーツを組み立てできた
試作リングを確認していただきます。
3本の取り外しの練習もしていただきます。
大きな修正がなかったので
3週間後に刻印と誕生石が入った
プラチナリングのご納品となります。
真鍮と同じように
組み立てて作っていきます。
5、お渡し
出来上がった結婚指輪のご納品です。
今回、指輪の制作過程でできた
ゴム型、樹脂原型なども
ディスプレイにして
一緒にお渡ししました。
CADデータは青く着色、印刷して制作順にグラデーションになるように並べました。
フェデギメルリング制作の流れ
①フェデパーツ(シルバー)
②サイズ確認用リング(真鍮に銀色メッキ)
③CADデータ
④樹脂原型
⑤ゴム型
⑥WAXパターン
⑦試作リング(真鍮)
シルバー板から①フェデパーツの見本を作ります。
本番制作前に②サイズ確認用リングで
2週間ほど試着をしていただきます。
フェデパーツを参考に③CADデータを作り、
④樹脂原型を3Dプリンターで造形します。
樹脂原型の⑤ゴム型を取って
⑥WAXパターンを作ります。
このWAXパターンを真鍮で鋳造して
パーツを組み立てて⑦試作リングを作ります、
スムーズに3つのリングが1本に重なるか確認します。
OKなら再びゴム型からWAXパターンを取り出して
今度はプラチナでパーツを鋳造、組み立て、
刻印、石留め、仕上げをして結婚指輪の完成です。
制作後記
ご納品時に見ていただくと
両手が重なる親指部分の引っ掛かりが
気になるとのことで後日、
写真のように微調整させていただきました。
日常生活で出っ張りが気にならないように
トップの大きさは幅5㎜位の
小さめで作ってあります。
今回は3本ギメルとフェデパーツが
カチッとなるように調整するので
試行錯誤しました。
手作りでは難しい形だったので
CADも併用して作ることで
お客様のご希望の形に近い指輪が
できたのではないかと思います。
制作工程上の理由と
コストを抑えるために
ギメルリングとフェデパーツの原型を
それぞれ一つにまとめたことで
同じ原型から取り出した指輪を
お二人が共有するという意味も
持たせることができました。