結婚指輪として甲丸と捩(ねじ)りの2連リングをお作りしました。
幅、厚みは1.5㎜の2連で鏡面仕上げで、
素材はメンズがK18YG、レディースはK18PG、
甲丸の内面には異なる書体で文字刻印と
新郎様の指輪には新婦様の指紋、
新婦様の指輪には新郎様の指紋が
入っています。
指輪のデザインを決める
今回のオーダーは新婦様がお持ちの幅と厚みが1.0㎜の2連リング(画像右上)をデザインのベースにして、指紋模様を内側に入れた結婚指輪を制作したいというご相談でした。
指輪の形は幅1.8㎜の3連リングと幅1.5㎜の細身の指輪を比較して幅、厚みを1.5㎜の2連に決定、指紋は甲丸側にだけ入れることになりました。
見本の2連リングと同様に片方は甲丸、指輪は丸線を捩(ねじ)ったようなデザインです。
店頭サンプルの角線捩じりの指輪を見て、デザインのはっきりしたこちらの方が良いという事で角線の捩(ねじ)りタイプと甲丸の2連で作ることになりました。
手作りでの制作では地金を板の状態で
※捩(ねじ)りや捻(ひね)りを加えてから
丸める事で指輪にします。
国語辞典では力を入れて回すときは「ねじる」、指先で軽く回すようなときは「ひねる」という違いで説明されています。
ここでは板に連続した均等な回転を加えるなら捩(ねじ)り、板に数回の回転を加えるなら捻(ひね)りの指輪としています。
内面を平らにした幅、厚み1.5㎜の捩(ねじ)りは手作業では難しい事とお客様が好きな捩じりの間隔を選べるようにCADで作っていきます。
画像のようにツイストリングで定番の90、180、360度捻(ひね)り、捩(ねじ)りデザインは平面データを作ってあるので、これを変形させていきます。
お客様が持っていた指輪と似たピッチ(間隔)の捩(ねじ)りの2番を作り、それより緩めの1番、きつめの3番を作って、
外側と内側が分かる正面図を作ります。
この捩(ねじ)りについての説明、3択から選ぶだけでなく、「3よりも細かい捩じりで」「1と2の中間」のように細かく指定して制作も出来る事も書いてPDF1枚にまとめてお客様にお送りしました。
捩(ねじ)りデザイン、リングサイズが決まったら指輪状にした立体データを作っていきます。
指輪のサイズを決める
指輪のオーダーメイドでは店頭のリングゲージで指のサイズを測り、同じサイズの真鍮リングを決めたデザインと同じ幅で作ってお送りしています。
リングサイズは1号が内径で1㎜しか違いません。
この真鍮試着リングを数日試着してもらい、同封のリングゲージと比較してもらうことで、納得したサイズ、フィット感で本番の指輪を作ることができます。
真鍮試着リングはご指定のサイズで出来ている事の証明として画像のようにサイズ棒に入れた画像もお送りしています。
今回の2連リングは真円でテーパー型のサイズ棒に入れても左右に多少の隙間が空くため、本当にサイズが出ているか証明ができません。
サイズ棒に入れた場合、ご指定サイズよりも小さいサイズで止まることになります。
下記は今回の真鍮試着リングの制作手順と注意点です。
====================
1.5㎜幅、厚の2連での制作。1.5㎜の真鍮角棒を用意
1、おおよそのサイズで作って
同じフィット感のリングゲージを探す
2、レディースの指定サイズへサイズ直し
(大き目に作って縮める、2本とも1号縮めると
サイズ棒に入れた時に1号縮む。
リングゲージで9.5号のフィット感なら
サイズ棒では8.5号で止まる)
3、今回は3.5号大きめの2本を組めば
指定サイズになると判明
4、同じ手順でメンズも指定サイズより
3.5号大き目で作る
5、サイズ証明画像と説明をPDFにまとめて
お客様に見てもらう(重要)
2連は真円が出せないので、サイズ棒でのサイズ証明ができない。幅3㎜のサイズゲージと1.5㎜幅の2連リングではフィット感が違い、お客様ごとの指の感覚の違いもある(1号は内径で1㎜しか違わない)→本番前の試着リングでそのお客様が納得してから原型制作。
1㎜厚、2㎜厚で作った場合は違うので3.5号UPは絶対ではない。
====================
試着リングは2本とも1.5㎜厚の甲丸で作りました。
本番の捩(ねじ)りリングは同じ厚みで、内面は平らに作るので、試着リングとフィット感が違うということはないはずです。
サイズ確認は2連リングとリングゲージを交互に着けて、
①指の曲げと②回して抜く時のフィット感を確認する。
③指の途中で止まっていいので、入る指全部で上の作業を繰り返す。(例:今回のレディースは小、薬、中指で確認)
という手順を踏んでいます。
届いた試着リングとサイズゲージを比較して、もしサイズが違うと感じた場合は同封の返信用スマートレターに試着リングだけ入れて発送、何号変更するかをご連絡していただくことにしました。
ご納得したサイズで原型制作にすすめるようにこの2連リングだけは特別に1回のサイズ直しまでは無料で行うことにしました。
以上のサイズ選びの話もPDF1枚にまとめて送りました。
指輪を作る
デザインとサイズが決まったら原型データを作っていきます。
1.5㎜幅の指輪に原寸に近い指紋は目立たない気がしたので、少し大きめに拡大しました。
ちなみに画像のMFPはMENS FINGERPRINT、LFPはLADIES FINGERPRINTの略語で、どちらの指輪に入れるか間違えないように指紋データの近くに文字データも添えています。
立体の原型データが出来たら、画像のように刻印完成図を入れた正面図を作ってお客様にメールします。
お客様から原型データのOKが出たら造形用に4本の指輪を1つのデータにまとめます。
この後、宅配で樹脂原型を確認していただいたらご納品まで一気に進みます。
樹脂原型の液ゴムを取ってWAXパターンを作り、それぞれの貴金属での鋳造となります。
2連は同素材なので写真のようにWAXの状態で、2本の指輪が重ならないように固定して鋳造しています。
こうすることで試着リングを制作したときのような2本を組み合わせて片方を溶接する手間を省いています。
指輪は鋳造で多少の歪みがでるので、WAXリング用の木芯に溝を入れて芯金の代わりにして、2連リングでも真円が出るようにしました。
刻印を入れて、全体をご希望の鏡面仕上げにしたら完成です。
指紋模様もしっかり入っています。
指輪のお渡し
こちらがご納品セット一式です。
試着リングで納得したサイズを選んでいただいたので、心配だったフィット感も問題ありませんでした。
天気が良かったので特典のフォトブックに入れるご納品時の写真の撮影は屋上で行っています。
2連の指輪では写真のギメルリングも定番です。
今回作った2連リングは
・デザインが2本で大きく異なる
・真円が出ないので、サイズ棒でのサイズ確認ができない
という点で制作はギメルリングよりも大変でした。
ご依頼は単色でしたが、コンビリングにするのも個性的で良いと思います。