【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
別々のお客様から結婚指輪のご注文で指紋リングを作りました。
今回は受注の流れが分かるように
1、店頭で用意しているサンプル
2、ご依頼いただいた甲丸タイプ
3、ご依頼いただいたギメルタイプ
の順番で指紋リングについて説明していきます。
1、サンプル指紋リング
指輪の外側(もしくは内側)にお相手の指紋を入れるデザインはマリッジリングでは定番で、Fingerprint(フィンガープリント)は表面に世界で一つの模様、指紋を入れる結婚指輪です。
指輪に指紋を入れる方法は大きく
1、WAX原型に指を押し付ける
2、レーザー刻印
3、樹脂原型に模様として入れる
の3つあります。
よく見かけるのがWAXと呼ばれるロウソク状の指輪原型に直接、指を押し当てて原寸大の指紋の型を取って地金で鋳造する方法です。
この方法はアナログの作業なので手間がかからないというメリット、指紋は原寸サイズのみというデメリットがあります。
レーザー刻印は手書きの刻印と同じように紙に押した指印をPCに取り込んでデータ化し、地金にレーザーで彫る方法です。
WAX原型に指を押し当てる方法と違い、指輪の幅や形状に合わせて指紋部分の大きさの調整ができます。
同じマリッジリングページのWORLDはこのレーザー刻印で表面に模様を彫っています。
この方法は当店の場合は刻印機を持っている外部に依頼をするのでお客様にとっては追加料金がかかる、細かい部分はお任せになるので、完成形を見ることはできないというデメリットがあります。
3つ目は紙に押した指印をPCに取り込んでデータ化し、CADで指輪データを作ってから3Dプリンターで原型を造形してから地金の指輪にする方法です。
表面は凹みだけでなく膨らませたりと形を大きく変えることもできる自由度の高いこの方法は指紋の大きさの調整ができる点は同じですが、指紋を樹脂原型に模様として入れておくことでレーザー刻印のように追加料金がかかりません。
写真の指輪、Fingerprint(フィンガープリント)は最もおススメの3つ目のCADを使った方法で作っています。
原型データ、樹脂原型で指紋がどのように入るかの確認もできるというメリットもあるので、当店ではこの方法一択で指紋リングを作っています。
指紋の取り方
お客様の指紋は打ち合わせの時に専用シートを使ってその場で取ります。
指紋の取り方はこの専用シートに説明もかいてあるので、宅配でのご依頼があっても問題ありません。
写真の指紋シートは今回のご注文後に作り直したものになります。
以前は試着リングにスタンプ台と専用シートを同封してご自宅でお客様自身で指紋を取ってもらうようにしていました。
ただ、ご依頼のお客様からうまく取れないという声があったので、今回のご依頼からご来店できるお客様に関しては店頭での打ち合わせ時に取るようにしました。
シートには打合せ時の確認、了解事項として
①指紋を入れる範囲(長さ)を決める
(←見本のメンズは19㎝、レディースは17㎝)
②レディースは指紋間隔が小さいので
拡大してメンズに合わせる
③長さを揃えるときに
どちらかの指紋の端を削除する
という3点を載せてあります。
説明後に2本のリングゲージにマジックで指紋の範囲を描くことでメールでのデザイン上の質問を減らすことができます。
指輪の指紋模様はPCに取り込んでデータを作ります。いくつかある中からスキャンしやすい濃淡の指紋を選ぶので、スタンプ台を使って同じ指で10マスに綺麗に指紋が取れるまで押印してもらいます。
指はスマホの指紋認証機能で通常使わない、結婚指輪を着ける左手薬指がおすすめしています。特に指定がなければ男性の指輪には女性の指紋、女性の指輪には男性の指紋を入れています。
2、客注甲丸指紋リング
こちらは一組目のお客様の指紋指輪です。
どちらの指輪も幅は2.5㎜で仕上げはつや消し、素材はK18イエローです。レディースリングは指紋の中心に1.3㎜のダイヤモンドが入っています。
指紋リングを作れるお店をNETで探していて、少し遠方にお住まいの中、当店に来て下さいました。
ご来店の打ち合わせの時に写真のように専用のシートに何個か押印してもらい、一番はっきりした指紋を選んで模様として指輪に入れています。
これまで説明した通り、制作方法はCADです。
メンズリングはサイズが大きく、模様部分が小さくかったので通常の指紋の1.3倍に拡大して模様の範囲を拡げました。レディースリングもメンズと同じ範囲に合わせています。
オーダーメイドではお好きな角度から確認できる立体データをメールでお送りして、OKをいただいてから樹脂原型を造形、宅配でお送りして形を確認していただいてから本番の金の指輪を作っています。
完成まで時間はかかりますが、立体のデザイン画、樹脂原型の2つを確認していただくことで出来上がりイメージとの誤差をなくすことができます。
18金で鋳造した指輪は仕上げ、石留め、
レーザー刻印を入れて完成です。
刻印はお二人の手書きメッセージ、2本を上下に重ねると現れるアイコンが入っています。
こちらがご納品前の風景です。
お客様は遠方にお住まいなので、ご納品はご来店ではなく宅配になりました。
指輪のご納品セットには特典のフォトアルバムを同封、フォトアルバム用に作った画像はメールでお送りしています。
3、客注ギメル指紋リング
2組目のお客様は 指紋を模様として表面に入れたギメルリングをお作りしました。
どちらも幅は3.5㎜、仕上げは鏡面仕上げ、素材はメンズがプラチナ950/18金イエロー、レディースが18金ピンク/18金イエローです。
18金イエロー側だけに指紋模様が入っていて、結婚指輪を着ける左手薬指の指紋がお互いの指輪に入っています。
もともとはギメルリングをご希望でご来店され、サンプルを見てデザインのアクセントとして指紋を入れることになりました。
この指紋部分も先ほどと同じようにご来店時に専用シートに押印してもらい、それをデータ化して原型に入れています。
このデザインはレーザー刻印では調整していれるのが難しいのではないかと思います。
今回も女性の方が指紋、リングサイズが小さいので、男性の指輪と並べた時に模様部分で違和感がでないように微調整しました。
ちなみにギメルリングは繋がっている2本の指輪がパズルのように重なり1つになる指輪です。
ルネッサンス期(15~17世紀)に流行した結婚指輪で、ギメルとはラテン語のゲメルス(gemellus)、「双子」という意味に由来します。
このギメルリングはその形状からコンビ素材で作ることが多い指輪で、当店では画像の6種類から選ぶことができます。
お客様のご希望のギメルリングの形状は店頭見本がなかったので、メールで打ち合わせをして細かい部分まで1から決めていきました。
こちらも制作手順はまず立体データをメールでお送りして、お客様のOKが出たら樹脂原型を作ります。
貴金属で鋳造して指紋のある18金イエロー側の真下をカット、もう片方の指輪を組み込んで、カットした断面を溶接、
指輪の真円とサイズを出して全体を仕上げたら、
レーザー刻印をいれて完成です。
制作過程で出来た原型などは木箱に入れて特典としてお渡ししています。
指輪はお客様自身でスムーズに外せるかの確認もしてあります。
このギメルリングはキチンと隙間なく組み外しができるか不安だったので、本番前にシルバーで試作を作りました。
ギメルリングは2本が同素材の場合は写真のように重ねらないようにWAX原型を作っておくことで溶接の手間を省くことができます。
今回、画像のように片方は地金の状態で先ほどのような重ねらないような形で鋳造にできれば手間が省けると思い、鋳造屋さんに相談しに行きました。
2件相談に行きましたが、完成後の重量が測れない、鋳造で失敗するかもしれないということで断られたので、これまで通り、通常の溶接ありの方法で組み立てています。
こちらがご納品一式です。
今回からこれまでの白いミニリングケースだけでなく、木製のペアリングケースも選べるようになりました。
こちらのお客様はご来店納品だったので特典のフォトアルバムはご納品風景の記念撮影をして後日発送しています。
まとめ
今回は偶然同じ時期に指紋リングのご注文が続きました。
二組のご依頼があったことで、指紋を取る時に決めておいた方が良いこと、効率の良いデータ制作方法も分かったので、PDF1枚に指紋リングの作り方もまとめてみました。
こうしてみるとCADを使って樹脂原型に模様として入れる方法は
1、事前に完成形が確認できる
2、ギメルリングの片側だけのような変わった形にも指紋を入れられる
3、樹脂原型に模様として入れれば追加料金は不要
といったメリットがありますが、WAX原型やレーザー刻印よりも制作に手間がかかっています。
CADで原型に模様として入れる指紋を入れる金額は無料から1本あたり¥5,000に変更しました。
結婚指輪ページ、価格表のページも修正しています。
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