【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
表面にお好きな言葉(アルファベット)を模様として入れる結婚指輪サンプルを三種類追加しました。
メッセージなどを彫った指輪はフランス語で詩を意味するポージーリングと呼ばれ、13世頃から始まったとされるほど歴史があります。
今回作った指輪も最初のアイデアはこのポージーリングで、デザインもそのアレンジに当たるので、これまでに作った指輪も含めてまとめて説明していきます。
ポージーリングとは
ポージー(poesy/もしくはposyポジー)とはフランス語で詩「POISE」のことです。
ポージーリングはその名前の通り、メッセージなどを彫った指輪のことで13世頃から始まったとされています。
日本ジュエリー協会から出版されているジュエリー用語辞典には
・贈る人の感情を表した詩や字句を彫刻した指輪
・16から17世紀にイギリスで結婚指輪として流行
(別ページでは13から18世紀のイギリスと記載)
・近年、プラチナギルド・インターナショナル社が
キャンペーンを展開し一般化した
という趣旨の記載がありました。
現代の結婚指輪では刻印としてメッセージを入れることは普通の事なので取り立ててポージーリングとは言いません。
なので結婚指輪ページにもポージーリングは用意せず、メッセージなどについては刻印のページで説明しています。
ただ、アンティークでは指輪の内側だけでなく、表面に彫った模様の指輪も見かけるので、この形なら指輪のデザインとしてお客様におすすめすることができるのでサンプルを作りました。
Poesy/divide
ヨーロッパでポージーリングが流行した時は「愛は全てに打ち勝つ」などのメッセージをリングに刻んで恋人に贈ったりしたそうですが、現代の日本には合わないと感じました。
そこで写真の指輪は通常は内側に入れる記念日と名前の刻印を外側に模様として入れました。
記念日は当店がオープンした2018年、結婚記念日に多い11月22日(いい夫婦の日)、平成元年生まれで一番多い名前の翔太さんと愛さんのイニシャルを取って「S&A」を入れています。
一見模様にしか見えない2本の指輪を上下に重ねると隠れたメッセージが現れる仕組みなので、目立ち過ぎないデザインになっています。
このポージーリングは制作方法の説明も兼ねてCADで作りました。記念日と名前を模様として一周入れた原型データを3Dプリンターで造形、鋳造後に分割(divide)しています。
Calligraphy
先ほどのPoesy/divideリングの文字自体はシンプルなゴシック体にしました。
文字を分割しないデザインで書体が選べて、幅の比較ができるサンプルもあったほうが良いと思い、作ったサンプルが写真のCalligraphy(カリグラフィー)リングです。今度の文字は膨らみではなく、反対の凹みにしてみました。
Calligraphy(カリグラフィー)とは西洋や中東における文字を美しく見せるための手法で日本語では書道と訳されます。
この指輪は記念日は入れず、先ほどと同じ翔太さんと愛さんのイニシャルを取って「S&A」を入れた4種類を作りました。
指輪の幅は3、4、5、6㎜で4種類の文字にはそれぞれの幅に合わせて植物の装飾を施してあります。
制作方法はCADを使っているのでレーザー刻印とは違い追加料金はかかりません。
新型のポージーリング
これまで作ったポージーリングは文字の形も変えられるので具体的なデザインが定まっていないため、結婚指輪ではなく、作品集ページに投稿しています。
結婚指輪ページに投稿できるようにアルファベットのデザインを絞って見本を作った指輪が写真の3種類です。
表面にどんなメッセージを入れるかはお客様の自由なのでアルファベットA~Zを固定の形でオリジナルのブロック、点字、モールス信号の3つのCADデータを作りました。こちらも同じように「S AND A」です。(&はないのでANDになります。)
どれも指輪の幅は3㎜で、アルファベットそのままではないのでシンプルな模様の結婚指輪として身に着けやすいのではないかと思います。
画像のように文字の入る指輪の上半分だけを1つにまとめて他の原型と合わせて樹脂造形、
WAXパターンになってから指輪の原型にして鋳造出し、
仕上げてメッキをして完成となります。
オリジナルのブロックはAlphabet block(アルファベット ブロック)、
点字はBraille(ブレイル)、
モールス信号はMorse code(モールスコード)という名前でそれぞれ結婚指輪ページに投稿しました。
ここからはその3つの指輪について順番に説明していきます。
Alphabet block
アルファベット ブロックは①三角形、②正方形、③円弧、④カマボコ形を足したブロックの4つを組み合わせてアルファベットを表した模様リングです。
ピンタレストのアルファベットの画像検索でタイポグラフィーのアイデアを参考に4つのパーツを組み合わせて幾何学模様のA~Zを表現できないか考えて作りました。
この当店のオリジナルデザイン、アルファベット ブロックはAからZまで1から作ったので今回の3つの中では最も時間がかかっています。
Braille
続いては平面から盛り上がった点によって文字や数字を表す点字の指輪です。
ブレイルは英語読みで、画像の横2×縦3の6つの点でのアルファベット表記方法を考案したフランス人ルイ・ブライユの名前から、多くの国ではブライユと呼ばれています。
一見ただの点が並びによって意味を持っているという所、触って意味が分かるというデザインがとても優れていると思ったので結婚指輪に追加しました。
Morse code
最後はモールス信号です。
無線の通信などで使われる短点と長点という長さの異なる符号を組み合わせて文字や数字を表す信号で、1840年前後にアメリカの発明家サミュエル・フィンレイ・ブリース・モールスによって生み出されました。初期の通信では写真の伝鍵と呼ばれる送信機が使われていました。
モールス信号も点字と同じようにAからZでの表記ができる所が暗号のようで面白いので大事な文字を指輪の表面に入れるデザインの発展形として、結婚指輪に加えました。
欧文モールス符号のアルファベットAからZまで好きな腕の形と幅を選んで指輪の模様として入れることができます。
今回作った指輪はTOPページのフォトギャラリーにあるカリグラフィーにも画像を入れてクリックしたページ内でも説明を追加しました。
まとめ
ポージーリングについては以上です。
内側にメッセージを入れた指輪は全てポージーリングなのでポージーリングという言葉は使わず、今回作った指輪は現代風にアルファベットでお好きな文字を選んで表面に模様として入れる結婚指輪としてマリッジページには追加をしました。
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