【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
結婚指輪のギメルリングに新型(下2つ)を追加しました。合計3型できたのでコンビリングにしてワークス(作品集)のページに投稿したのでその内容について書いていきます。
ギメルリングとは
ギメルリングとは繋がっている2本がパズルのように重なり1つになる指輪でルネッサンス期(15~17世紀)に流行しました。ギメルとは言葉はラテン語のゲメルス(gemellus)、「双子」という意味に由来します。
ギメルリングは指輪全体が緩く捻じれる形も定番ですが、当店で用意しているサンプルはデザインを崩さずにサイズ直しができる指輪の上半分を捻る形でご用意しています。
ギメルリングはパズルのように外れるのでコンビリングで作ることが多い指輪の一つでもあります。仕上げを2色の地金で変えるといったアレンジも人気があるのでテクスチャーを変えた見本も用意しています。
このギメルリングは2連と同じ幅で3連リングもご用意しています。こちらの指輪も長く使うことを考えて指輪の下半分には捻りが入らないようにしてサイズ直しができるデザインになっています。
金額は3㎜幅の2連ギメルが1本あたり15万円で3連ギメルが18万円となっています。
3連のギメルリングは写真のオリジナルリング(ギメルシグネット)のように3本の指輪を6種類の素材の好きな組み合わせで作ることができます。
2連のギメルリングは画像のようなソリッドなデザインも定番となっています。2連の甲丸のギメルでベストな形と思ってサンプルにしましたが、今回、改めてホームページを見直して微妙な違いですが平打ちリングならソリッドなギメルリングのほうが好きな事、
画像のような2本の角棒を捻って丸めたタイプも他店のHPでよく見かけるので合計で2型を追加することにしました。
形状が似ているのですでに用意してあった上段の甲丸タイプを①、今回作った下段左のソリッドなタイプを②、下段右の角棒を捻るタイプは③として順番に作り方の説明をしていきます。
ギメル①
結婚指輪サンプルのギメル①は幅3㎜で上半分に捻りが入ったタイプです。一周捻りが入ったタイプと違い、下半分がストレート腕なので綺麗にサイズ直しができて指に着けた時に正面を捻りコンビ、上下コンビの2種類から選ぶことができるという利点があります。
①はコンビ見本として下段右の真鍮とシルバーの甲丸リングがあるので今回は新しく作らずにこれをメッキします。
制作方法はCADを使っていて原型データを持っているのでオーダーがあれば、幅、厚み、サイズなどの調整や模様を入れるなどの応用にも対応することができます。
原型は左右対称に作ってあるので片側だけ樹脂造形してゴム型を取り、WAXパターン2本を地金で鋳造します。
もし地金が同色であれば画像のようにWAXパターンの状態で指輪同士を湯道(赤線部分)で繋いでおけばロー付けの手間を省くことができます。
鋳造から2本上がってきたら片側の真下部分を糸鋸でカットしてもう片側と組み合わせてカットした断面を溶接して1本の指輪にします。
結婚指輪のサンプルは原型は平打ちで作って地金になってからヤスリで削って甲丸にしています。ヤスリ作業の時は2本が動かないように接地面に真珠用の接着剤を塗り、最終仕上げの前に外しています。
ギメル②
ギメル①と一緒に捻り部分が直線で構成されたタイプも
CADデータを作っていました。
今回はこちらもサンプルとして作ります。
制作方法は同じで平面上に捻り部分のパーツを作って
コピーして反転、左右対称になっていることを確認して
指輪のアールに沿って丸めます。
今回は他のサンプルと一緒に樹脂造形するので捻りの部分のみ他の原型とくっつけて平打ちの腕部分はWAXパターンになってから別で合体させて鋳造に出します。
前回のフェデで作ったワイヤーワックスと同様にローラーで断面が2㎜×2㎜に伸ばして画像のように繋げます。腕の部分の幅が4㎜でなので地金になってから削って捻り部分と同じ3㎜にします。
真鍮地金になって鋳造から上がってきたらギメル①と同様に組み立てていきます。
捻り部分の角は丸くしてスムーズに外せるように調整しました。
あとはメッキをして完成です。
ギメル③
①と②は手作りの場合地金の捻り部分を調整するのに時間がかかりそうですが、このタイプは2本を一緒に捻って出っ張った部分を削って丸めればできるので加工難易度は低めです。このデザインは手作りオーダーのお店で置いていることも多いので今回3㎜幅で作ることにしました。
まずは2㎜×2㎜の真鍮角線を用意します。当店では東急ハンズで売っている1メートル数百円の真鍮角線をカットして使っています。
これをバーナーでなまして柔らかくしてから2本重ねてズレないようにヤットコで捻って、
断面をロー付けして、
新円を出して膨らんだ部分を削って角を丸くして、幅3㎜、厚み2㎜に収まるように全体を削ります。
②と一緒に全体を仕上げます。③の膨らんだ上部は削らずに板の状態からローラーで2㎜厚に伸ばすことも考えましたが隙間が詰まって外れなくなるかもしれないと思いやめました。
スムーズに外れるかどうかも確認もしてあります。
あとは他のギメルと同じ工程を経て①②と一緒にメッキをして完成です。
メッキの手順は以前に逆のK18メッキのあとにロジウムした際にマスキングをはがすとK18が曇っていたことがあるので、先に全体をロジウム、片側にマスキングをしてK18メッキ、その後マスキングをはがしてコンビギメルの完成です。
HPで公開する
これで3種類のギメルリング(コンビ地金)ができました。
左側のギメル①はサイズが少し小さく、②の原型依頼後に気が付いたのですが、捻りが②③と逆向きのため画像修正ソフトで修正しました。なので①は時間を見て作り直す予定です。
出来上がった画像がこちらです。
画像ができたらHPへの投稿です。まずは結婚指輪ページのギメルの内容に「ギメルは3型から選べます・・・」といった文章を書き加えます。
その後、WORKSに投稿します。WORKSに投稿するアイキャッチ画像は3本を三角形に配置してその下に分解した状態を並べた画像にしました。
文章の内容はマリッジとほぼ同じです。3本とも幅3㎜、厚み2㎜で作ってあるのでどれを選んでも金額は同じです。
まとめ
合計で3型の2連ギメルリングが出来上がりました。当初は①だけあれば良いと思っていましたが、比較してみるとそれぞれに良さがあります。
これで新型のローレル&ミル、フェデ、ギメルというヒストリカルデザインの結婚指輪の追加修正は終わりです。
次からは表面に模様が入った結婚指輪の基本デザイン パターンの編み込み模様指輪を作っていきます。
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