【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
#007セットジュエリー①の続きです。
お客様からピアスもペンダントも石座はカルティエタイプ希望とのご連絡がありました。
既成枠で対応できるティファニータイプではなく、飾りが入るカルティエタイプになったので石座をオーダーメイドで作ります。
PGネックレス&ピアス①で書きましたが通常は石座自体のオーダーメイドは別料金です。
今回は石座の数が多いのでまとめて一つの原型としてCADデータを作ることでコストを抑えて既成枠での制作とほぼ変わらない金額でお受けしました。
ペンダントの石座を作る
石座の左右に丸カンがついてチェーンで吊るす形のネックレスはウサギの形に似ていることからバニータイプ、チェーンの形から中切れタイプとも呼ばれます。
ネックレスでは定番の中石を覆輪留めするデザインはブランドではティファニーの「バイザヤード」が最も有名です。
今までオーダーのご依頼ではほぼこの「バイザヤード」だったのでカルティエのディアマン レジェタイプは作ったことがありません。
まずはインターネットで「カルティエ ディアマン ネックレス」などで画像検索して形状を把握します。
お客様はピアスの石座も同じ形をご希望なのでCADに画像をインポートして寸法を測りながら作っていきます。
石枠が大きくなってもチェーンは同じ大きさなので丸カン部分もサイズは変わりません。
カルティエの公式サイトを見るとディアマン レジェはLMという一番大きいサイズのネックレスでもダイヤモンドは0.2ctまでしかありません。
もし0.3ctがあれば寸法はおそらくこの位というのを想像しながら作っていきます。
ピアスの石座を作る
ペンダントの石座データを使って3種類のピアス石座を作っていきます。
ピアスのダイヤモンドの大きさは上から直径3.3㎜、3.0㎜、3.0㎜です。
一番上の直径3.3㎜の石座は「裏板」を貼り、ポストを溶接する穴を開けます。
マルカンは上と下の石座が1つ、真ん中の石座は2つ必要です。
今回の丸カンは正面から見たときに1㎜以下の極小サイズです。
地金の流れが悪く折れる可能性も考え予備として上と下の石座にも丸カンは2つ付けました。
ペンダント用1個、ピアス用3個の合計4個の石座ができました。
4つの石座はちゃんと地金が流れてゴム型が取れる隙間を開けてデータを完成させます。
石座同士をつなぐ湯道代も石座の料金に含むの極力軽くなるように考えてデータを作っています。
今回は4つの石座を一つにまとめました。
今回の石座はCADで一つ作ってそのサイズを多少変えるだけ、原型を作る手間はほとんど変わらないので価格も安く設定しました。
これが地金の手作りの場合、ゴム型でピンクゴールドに変換するとしてもシルバーで原型を最低4つは作る必要があるので価格もそれを反映したものになります。
樹脂原型上がり
こちらが出来上がった樹脂原型とVLTと呼ばれるゴム型です。
このゴム型からWAXパターンを2個取り出し、ペンダント石座を一つ切り取って鋳造に出します。
鋳造上がりと制作
画像は加工前のペンダントとピアスに材料画像です。
ピンクゴールドはバレル研磨してありますが、色は黄色っぽくなっていて磨くと下からピンク色の地金が見えてきます。
まずは石座を繋ぐ湯道をカットして磨いていきます。
石座は小さく手では掴みにくいことと、ヤットコでは持つと変形させてしまうので「からげ線」を通して指で固定して磨いていきます。
「からげ線」を通して持っているおかげで研磨の最中にリューターで弾いてしまっても紛失するのを防ぐことができます。
研磨の注意点は丸カン部分です。
本物に忠実にチェーンのコマと馴染むようにかなり小さめサイズで作ってあるので磨きは研磨材で光らせるだけでにしておきます。
ピアスの一番上の石座にはポストを溶接します。
ピアスは強度を考えて石座と一緒に原型としては作らず、後で既成のパーツを溶接します。
お客様にはこういったことは伝えませんが、長めのポストをカットして画像のように接地面が多くなるように溶接しています。
ざっと仕上げたら石留め、ペンダントとピアスそれぞれに石目刻印を打ってチェーンを取り付けます。
まずはペンダントネックレスから作っていきます。
マルカンを金切りハサミで切り、前後に動かして口を開きます。
そこにチェーンを通して口を閉じます。
後で切断面はレーザー溶接をしてチェーンが外れないようにします。
ネックレスが終わったら次はピアスです。
チェーンは12㎝の長尺をカットして石座に繋ぎます。
完成予想より短くならないように余裕をみてチェーンは少し長めに仕入れておきます。
全長が6㎝で3つの石座がちゃんと正面を向くようにチェーンは偶数コマでカットします。
あとは丸カンの溶接と不要なマルカンの切り取り、最後の仕上げをして完成です。
まとめ
お客様がご希望のカルティエのディアマン レジェタイプのネックレスとピアスができました。
ネックレスは実際のカルティエ ディアマン レジェにはない0.3ctの大きさで作ってあり、
ピアスはティファニーのダイヤモンド バイ ザ ヤードの形で石座の形はカルティエタイプという2つのブランドを組み合わせたデザインになっています。
お客様向けのWORKSにはセットジュエリーというタイトルでペンダントネックレスとピアスは別にして投稿しています。
今回は大きさの違う石座を一つのパーツとして考えることで合計金額をご予算内で納めることができてお客様にも喜んでいただくことができました。
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