【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
お客様からのご注文でアンティークなどでよく見るクラダ、メメントモリ、フェデリングをお作りしました。
当店ではご注文いただいた3種類は基本デザイン(形状)のヒストリカルというカテゴリに分類しています。
基本デザインのヒストリカルは名前の通り、歴史の篩(ふるい)に掛けられ、今に残っているデザインの指輪です。
店頭でご用意しているサンプルは昔の形をそのままでは少々古めかしく感じるデザインもあるので、アレンジしやすいように現代風のプレーンな形で作ってあります。
今回はこの「アンティーク系」デザインの指輪ができるまでを説明していきます。
アンティーク系リングについて
基本デザインのヒストリカルは
シグネット(印台)リング
リガードリング
ギメルリング
月桂樹&ミル打ちリング
ポイズンリング
スネイク(蛇)リング
フェデ(握手)リング
3連フェデリング(両手とハート)
クラダリング(アンティーク風)
クラダリング(ケルト模様入り)
ヘラクレスノット(結び)リング
天球儀リング
メメント・モリリング
スイベル(上部回転)リング
ホースシュー(馬蹄)リング
カレッジリング
の16種類をご用意しています。
クラダリングやフェデリングのように同じ名前でも大きくデザインが異なる場合はサンプルとページも分けています。
今回は3連続でヒストリカルリングのご注文でした。
それぞれ
Claddagh (modern)
Mement mori
Fede (trinity)
をベースにご注文を受けています。
ここからは個別に打合せからご納品の流れまでをどのようなアレンジがあったかも込みで説明していきます。
Claddagh (modern)
写真のクラダリングは
関西にお住まいのお客様から
メールでご注文をいただきました。
アレンジは無しでサンプルと全く同じ形をご希望でした。
クラダリングはアイルランドの伝統工芸でハートが愛、両手が友情、王冠が忠誠を表し、「愛と友情に支配させよ」という意味がある指輪です。
お客様はアイルランド旅行でクラダリングを知って、日本に戻ってきてからオーダーできるお店をNET検索して当店を見つけたとのことでした。
一般的にオーダーメイドは何度もお店に足を運んで打ち合わせをするイメージがあります。
当店で結婚指輪をご依頼の場合、
1回目のご来店で打ち合わせをして以降は
メールや宅配でのやり取りをして
2回目のご来店はご納品日だけです。
この1回目の打ち合わせで説明している内容は
30分の動画にまとめ、
デザインの決め方もHP内で記事を公開していて
ご注文のお客様にはそのURLをお送りしています。
説明をまとめてあるので、
遠方にお住まいでご来店は難しい場合は
宅配での注文が可能です。
通常のオーダーメイドでは
この後、試着リングセットをお送りしています。
今回のご依頼はHPに載せているデザインをそのままということだったので、ご希望の住所に
1、サンプルクラダリング(真鍮にメッキした)
2、リングゲージ(1~30号)
3、ご希望の内石(シトリン)
をお送りしました。
その後、ご注文依頼の連絡が来て、
・お送りしたリングゲージと同じ3㎜幅での
注文なので試着リングは不要、
・指輪のデザインもサンプルリングと同じなので
原型確認も不要
ということになりました。
通常のオーダーでの
1、真鍮試着リングを郵送してフィットするサイズ決め
2、CADで作った立体デザイン画(原型データ)をメール
3、宅配で立体のデザイン画と同じ形の樹脂原型を確認
という3つのチェックを省くことになったので、
ご注文から1か月以内に発送することができました。
Memento mori
2つ目はメメント・モリ(Memento mori)の指輪です。
お客様はアンティークでこのメメント・モリの指輪を探していて金額が高すぎて悩んでいた所、当店ならそれに比べてリーズナブルにオーダーできるという事に興味を持ってご来店して下さいました。
どちらも幅は3㎜、素材はK18ピンクゴールド、仕上げは艶消しです。見本と同じ形にブラックコーティングをしてほしいというご依頼でした。
メメント・モリとはラテン語で「死を忘るな」という意味の警句で、終末観の高まった中世ヨーロッパでは骸骨を描いた絵画など、この言葉を連想させる多くの芸術作品が生み出されました。
その時期に流行したメメント・モリの指輪は写真のような金の地金に骸骨が入った黒エナメルのデザインが有名です。
サンプルはアンティークと同じような黒色部分ありのタイプもご用意しています。
この黒色部分は紫外線で硬化するジュエリー専用塗料で固めています。
七宝焼きのように専用の炉で色を焼き付けるといった手間はかからないので、エナメル(七宝)と同じ見た目でコーティング加工代は1本5000円しかかかりません。
打合せの結果、この黒色塗料はアリで作ることになりました。
クラダリングと同様に幅と形はサンプルと同じなので原型確認は無しで、試着リングでサイズの確認だけしっかりしていただいてCADデータとデザイン画をお送りしてご納品まで進みました。
こちらの納期は1か月半ほどでした。
Fede (trinity)
3つ目は3連のフェデリングです。
見本の形をベースに
・3本がバラバラにならないように根本を
同素材のピンで固定(pin-fixing)
・袖のデザインをタキシードとスーツ袖に変更
・ハートに石留め
というアレンジを加えています。
左側のメンズはプラチナ、右側のレディースは18金ホワイトゴールドです。
フェデリングは2~3世紀のローマで流行した指輪で、フェデ(FEDE)とはイタリア語で信頼や忠実を意味します。
3本で一組の指輪だった当初のデザインは中世になると、手が開く仕掛けはなくなり、手を握ったデザインが主流になっていきます。
新婦様はNETで見つけた3本で一組のタイプを気に入ってご来店して下さいました。
打合せの結果、サンプルそのままではなく、先ほど書いた
・3本をピンで固定
・袖のデザインを変更
・ハートに石留め
というアレンジを加えることになりました。
袖のデザインは依然にご注文のあったデザインと同じだったので、その原型を打ち合わせ後にお送りして、指輪も樹脂原型での形状確認はせずにご納品まで進みました。
作業手順としては指輪のサイズ出しが終わったら3本の根本を0.7㎜のドリルで穴を開けます。
そこに同素材のピンを差し込んでかしめて、3本がスムーズに動くかを確認して刻印入れと石留め作業という流れで完成させました。
ちなみに同素材のピンはワックスパターンの時にφ0.7㎜のワイヤーワックスを指輪の目立たない箇所に1㎝程くっ付けて鋳造に出して、上がってきてからカットして使っています。
こちらがご納品風景です。
ご納品時にはお客様自身で組外しができるか確認していただきました。
まとめ
アンティーク系リングについては以上です。
3種類とも店頭にあるサンプルと同じ形をベースにしたご注文だったので、樹脂原型の確認を省くことで通常よりも納期が短くなりました。
前の記事 | > View More |
次の記事 | > View More |
職人向け 記事一覧 | > View More |