【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
遠方にお住まいのお客様からのご依頼で握った両手からネズミが現れる仕掛けのフェデギメルリングをお作りしました。
今回はこの指輪のご納品までの流れを書いていきます。
デザインを提案する
最初のご依頼はワークスで公開しているフェデギメルリングの袖に
お持ち込みの宝石を入れて作れないかというメールでのご相談でした。
こんなデザイン画も送っていただきました。
お持ち込みのサイズの宝石を使ってデザイン画を作ると写真のように側面から見るとだいぶ袖が出っぱったデザインになります。
金額は中石が2つようなデザインなので、結婚指輪ではなく、婚約指輪のオーダーメイドに石座の追加料金でお見積りをお出ししました。
このあと、打ち合わせをした結果、
1、ハート部分はネズミに変更
2、袖はフリルとタキシード
の結婚指輪タイプに変更になりました。
そこでその見積もりをお送りして、正式なご注文となったので、ご希望のデザインをご提案することになりました。
フェデリングは検索で調べてみるとタキシード袖の男性の手とフリル袖の女性の手が握ったタイプも何種類か見つけることができました。
そこで画像を集めて袖のアレンジ例と
ネズミのイラストを集めてハートの代わりを数パターン作りました。
作ったイラストをPDF1枚にまとめて「袖とネズミのデザインを選んで下さい、気に行ったデザインがなければ作り直します。」とメールしました。
こういったデザイン変更は加工の手間と地金の重さが変わらなければ基本的に無料です。
指輪を作る
この後の返信で作った中からネズミと袖を選んでいただけたので、CADで原型データを作っていきます。
以前に作ったフェデギメルリングは指輪部分と上部のパーツ部分を別で樹脂造形、メンズサイズで作った指輪部分をレディースサイズにWAXの段階で修正して原型1つでペアリングを作りました。
そのため、ギメルリングを作ってから、上部のパーツを溶接するという手間のかかる作りになっています。
パーツも鋳造後に曲げて両手をぴったり合わせるという手間もかかっています。
今回のご注文は1個です。サイズ直し不要なので画像のように上部パーツがついた状態で原型を作りました。
この方法なら地金の状態で中心の指輪の下をカットして、3本を組み合わせてカットした断面を溶接すればいいので加工の手間がだいぶ省けます。
ただ、この方法でうまく行くか試してみないとわからない事、うまく出来てもお客様が自分で組み外しができないといけないのでまずはシルバーで試作を作ることにしました。
通常は樹脂原型での確認をシルバーの試作にする了解をお客様にもらって早速試作リングを作っていきます。
CADデータの完成、
樹脂造形、
ゴム型取り、
WAXパターンをシルバーで鋳造後に
カットして組み立て、カットした断面の溶接、
サイズ出しをして
全体を艶消し仕上げで完成させました。
ここでデータ状は問題なかったのですが、
組み合った両手が予想より1㎜程手前で止まりました。
おそらく原型から地金になった時の縮みが大きく、サイズ出しの時に伸ばしすぎたせいで両手のパーツが外側に逃げてしまったためだと思います。
そこでプラチナになる本番用WAXでは画像のように外側の指輪の1本を1㎜内側になるように修正しました。左の指輪の膨らんだ2か所が修正箇所です。
これでお客様には
・サイズ11号のシルバーリングが出来ましたので
形状の確認をしてご返送をお願いします。
・組み立てたシルバーは
両手がデザイン画より少し外側で止まり、
握手部分が1㎜程届きませんでした。
(こういった可能性も考えて原型確認は
組み立て後のシルバーにしています。)
←次回のプラチナ鋳造用WAXは写真のように
届かなかった握手部分のズレを修正しておいたので
ご安心下さい。
・指輪の「組み、外し」についてですが、
店頭で実演してご説明できないので動画にしました。
慣れると難しくないので、動画を見ながら
「組み、外し」ができるか確認して下さい。
できない場合は他の説明方法を考えます。
それでは指輪の確認と返送をお願い致します。
といった内容をPDFに画像付きでまとめて送りました。
動画はスマホで撮影しています。
その後、お客様からデザインのOKと自分でシルバーリングの組み、外しができたという連絡がきたのでプラチナでの制作に入りました。
試作で作ったシルバーは真ん中の指輪をカットして組み立てました。
本番にあたるプラチナ用のWAXは画像のように先に組み立てておきます。
シルバーリングを並べて指輪の向きが間違っていないかは確認しておきます。
このWAXの状態で3本の指輪同士が重ならないように湯道を立てます。
指輪同士が重ならないように石膏を流して下さいとお願いして鋳造から上がってきた指輪がこちらです。
この方法ならあとは仕上げるだけなので糸鋸でカットして溶接する手間が省けます。
樹脂原型でこの形状だとゴム型を切ることができないのでWAXでこの3本の指輪同士が重ならない形で鋳造に出しました。
あとは仕上げていきます。
お客様の手書き刻印、当店のロゴ、日本製、金種刻印を入れて、
仕上げ直したら完成です。ネズミのパーツには直径1.0㎜のサファイアが入っています。
ご納品の一式をまとめて
フォトアルバムも作って発送しました。
HPで公開する
指輪を発送したらHPの作品集のページで公開します。
今回ベースになった指輪は当店で用意している結婚指輪のフェデ(トリニティ)と
ギメルがベースがなっているので、
タイトルは2つを組み合わせたフェデ (トリニティ) / ギメルにしました。
内容はここまで書いてきた内容です。
まとめ
宅配フェデギメルリングについては以上です。
ほぼ同じご注文が以前にあったので今回は新しく作業効率の良い制作方法を考えて試してみました。
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