【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
マリッジページの基本デザインにカレッジリングを追加しました。
元々はネットでカレッジリングの石座回り部分にイニシャルや記念日などを入れた結婚指輪のオーダーメイド事例があり、ウィキペディアでカレッジリングを調べた所、「結婚時のマリッジリングをカレッジリングと同じ形状で作る場合もある。」という記述があったので作ることにしました。
今回はこの指輪が完成するまでを書いていきます。
カレッジリングとは
カレッジリングとは、大学卒業記念リングのことでリング上部に宝石、石座周りに学校名、その両側に校章、卒業年度、専攻、学位、名前などを入れるデザインが一般的です。
クラスリング(Class Ring)とも呼ばれ、大学だけでなく、高校、専門学校・単科大学の卒業記念で作ったり、デザインのベースはほぼ同じでスポーツの優勝時に作るチャンピオンリング、クラブやグループなど仲間の証しとして作るクラブリングなどもあります。
1835年にアメリカの陸軍士官学校卒業生が作ってから世界中に広まったカレッジリングは元々はヨーロッパで封蝋に用いられるインタリオリング(貴族が自身の紋章をリング上部に彫刻した印台リング)が、その源流と言われています。
イメージとしては中心に楕円形の宝石が入った細かい模様付きの指輪が思い付きますが、今回は結婚指輪として使うことを考えてできるだけ幅を細く、中心の宝石はラウンドの形を模した地金で作ることにしました。
指輪を作る
まずはNETでカレッジリングの画像を集めます。日本よりは海外サイトのほうがたくさん見つかりました。
カレッジリングは石座の周りに文字と左右の腕回りに模様が入っているデザインが一般的です。
文字と模様を考えるのは後にして先にカレッジリングの形を決めていきます。
まずはおおよおの形をCADで原型を作っていきます。
カレッジリングのデータ自体は作った事があるので今回は再利用しました。
テンプレートのような形で手前側平面上の文字や模様を動かすと連動して指輪の文字や模様も動くようにしています。
上面図で石座の淵は1㎜、石座回りの文字は幅2㎜、その外側の淵は1㎜、指輪の外縁は0.5㎜とスケッチして立体に起こしていきます。中心の宝石部分の直径は3㎜にしました。これだと幅は11㎜になります。
次は石座回りの文字をどうするか決めます。
お好きな言葉を入れられるので指輪の内側に入れる刻印の20××.11.22 S&Aで模様を作ることにしました。
模様は細かすぎると原型のゴム型からWAXを取るときに潰れてしまいます。書体はいくつか作ってみて型取りで問題のないメイリオにしました。スペースが埋まらない部分にはカレッジリングではよくある星を入れています。
石座回りの文字が決まったら次は腕の両サイドの模様を考えます。
この部分に入る模様はその大学に関連する建物、鳥の翼、盾、紋章、巻物(スクロール)、植物、西暦などを入れるパターンが多いようです。今回はいままで作ったデータの盾と月桂樹を使うことにしました。
オーダーで依頼が来ることを考えて模様はシンプルに、書体はオールドイングリッシュでSには月桂樹、Aは盾の中に入れました。
両方の下の巻物(スクロール)はスペースがあったので入れました。本来はモットーなどを入れるようですが、この巻物自体が小さいので無地にしました。
こちらが完成したデータです。
樹脂原型から鋳造作業を経て真鍮で指輪が上がってきました。
上の3本以外にワックスパターンの段階でトップ上下の淵を削って修正し、正面から見たときに幅10㎜に収まるようにした1本も作ってみました。
こちらは完成した比較画像です。
カレッジリングでは写真のように正面から見たときに宝石回りと淵が同じ幅のタイプ、淵が外側に出るタイプの2種類があったのでどちらかを選べるように両方を作ってみました。
マリッジのレディースは金色で3㎜のキュービックジルコニアを入れて作ります。
画像のように地金になってからドリルで穴を開けて石留めしました。
淵がトップパーツの外側に出るタイプ(CAD原型と同じ形)を銀色、残りは金色でメッキをして完成です。
金色は正面から見たときに宝石回りと淵が同じ幅のタイプ(幅10㎜)、淵が外側に出るタイプ(幅11㎜)とその中石アリの3パターンを作りました。
ちなみに当初は金色は文字なしのプレーンタイプも作ろうと思い、ワックスパターンで文字と模様を消してみましたが、これは寂しいデザインになったので止めました。
マリッジページのアイキャッチ画像にはこの2本を使います。
HPで公開する
指輪が出来たのでマリッジページに投稿します。アイキャッチ画像はメンズは銀色で、レディースは金色で中心には直径3.0㎜の透明石を入れてあります。
文章はカレッジリングとはどういう指輪かの説明と結婚指輪として使うこともあるという事や装飾は好きな文字や模様で作れる事などを書いています。
結婚指輪のオーダー基本料は幅2㎜まで10万円で幅1㎜追加ごとに2万円です。トップの幅が11㎜、指輪の真下の幅が6㎜なので17÷2=8.5㎜幅で計算します。幅2㎜で10万円の基本料に6.5㎜幅の追加で1本当たり23万円となります。多少トップは膨らんでいますが厚みの追加料金はかからないことにしました。
写真のような宝石入りの指輪は通常は覆輪留め代4000円とがかかります。今回のカレッジリングに関してはブリリアントカットの地金分が削られて減るの相殺で留め代は無料ということにしました。
通常グレードの直径3.0㎜(約0.1ct)のダイヤモンドはブライダルグレードのH&CのVSクラスは通常グレードのGOOD、SIは14000円です。カレッジリングの料金事例には通常グレードの金額を載せました。
宝石価格のページには直径3.0㎜の誕生石の値段を載せてあるのでそのままカレッジのページにもコピーしておきました。
まとめ
結婚指輪の基本デザイン ヒストリカルにカレッジリングを追加しました。
幅が広いので結婚指輪サンプルの中では最高値ですが、デザインできる面積が大きいので他と比べてもオリジナリティの強い指輪を作ることが出来ます。
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