【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
前回は指輪の表面に文字を入れるカリグラフィーリングを作ってサンプルとしてホームページで公開しました。
平成元年生まれで一番多い名前の翔太さんと愛さんのイニシャルを取ってS&Aで作ってあります。
この指輪を作った後にアルファベット一文字のイニシャルリングも用意したくなりました。
イニシャルリングは正面部分が縦長のシグネットリングをベースにしたデザインが多いイメージですが、現在用意しているシグネットリングは正面部分が横長です。
結婚指輪として身に着けるなら正面部分が小さいほうが需要がありそうなので、写真のような正面部分が縦長のイニシャルリングを作りました。
今回はその流れを説明していきます。
イニシャルリングのデザインを考える
結婚指輪のデザインで印台リングの正面にアルファベットがある指輪をよく見かけるのでNETで名称を検索しました。
シグネットリングのイニシャル入りはシンプルにイニシャルリングと呼ばれていることが多いように感じたので今回のブログのタイトルは同じようにイニシャルリングにしています。
印台の正面部分の形状は真円、楕円、八角形、盾形などが多く、どれを作るか迷ったので縦6㎜、横5㎜の長方形で原型を作り、地金になってから成型して数パターンの形を作ることにしました。
原型データを作る
どういった形を作るかはおおよそ決まったので原型を作っていきます。
WAXでも作れますが、他の原型と一緒に造形するのでCADを使って指輪の上半分だけを作ります。
これまで模様指輪などは平面の状態で作って指のサイズに合わせて丸めて原型を作っています。
印代リングの場合はこの方法で平面で作って丸めると中心が凹んでしまいます。
細かく微調整するか、上部をスパンとカットすることで平面を出すこともできますが、平面の形を丸、四角などボタン一つで変更できる方法があるのでそちらを使っています。
そこまで頻繁にする作業ではないので忘れてもいいようにエクセルで写真のようなマニュアルを作っています。
CADの操作の細かい話になるので省きますが、大筋は色の線を順番に選択することで印台の上半分のパーツを作ることができるテンプレートのような仕組みになっています。
それを指のサイズの円柱と重ねて削ることで印台上部が完成します。
指輪を作る
原型になる印台上部ができたら他の原型と合体させていつも通り樹脂造形、ゴム型取りをしてWAXパターンの完成を待ちます。
印台上部ができたら
幅3㎜のワイヤーワックスをくっ付けて真鍮で鋳造を依頼します。
真鍮になって鋳造から上がってきました。
まずは指輪の下半分を甲丸状に削ります。
今回のイニシャル(シグネット)リングはフォトギャラリーにも追加するので印台リングの形状見本として縦長の長方形、八角形、楕円、盾型の4種類を削って作りました。
マリッジリングのサンプルとしてはイニシャルのSとAが入った盾形を作ることにしました。先に作った4種類の盾形を見ると淵があるほうが輪郭がはっきりしていて恰好良いので残しておきます。
ここまで出来たらSとAのレーザー刻印データを作っていきます。
筆記体で定番を検索してアルファベット画像をCADにインポートしてAからZまでを並べました。
書体の種類は不明ですが、印台リングにはこのアルファベットを入れるデザインが多い印象です。
原型データで作った盾のシルエットと一緒にイラストレーターにデータをインポートします。
この盾の中に文字が収まるようにSとAは多少変形させています。これでレーザー刻印を依頼します。
メッキをして完成した指輪がこちらです。
実際のオーダーの場合に完成形がイメージしやすいようにA~Zの見本をレーザーで彫った真鍮板も用意しました。
大き目の真鍮板の端にレーザー刻印で彫ってから糸鋸で切って作っています。
HPで公開する
今回のイニシャルリングはシグネットリングのアレンジになるのでマリッジページではなく作品集、ワークスのページに投稿します。名前はイニシャルシグネットにしました。
内容はここまで書いてきた内容とほぼ同じでイニシャルリングとはどういう指輪なのかという説明とオーダーメイドなので印台の形状の形、大きさも自由に選べるということを書いています。
金額は1本あたり17万円です。正面は印台部分が縦6㎜×横5㎜、厚み3㎜、背面は腕の幅3㎜ 厚み2㎜なので、幅は4.5㎜、厚みは3㎜の金額で計算しました。
マリッジリングのシグネットにはアレンジ例としてこのイニシャルリングの写真と説明も追加しました。
今回作った指輪はトップページのフォトギャラリーにも追加します。
①の画像は真鍮で作った正面部分が長方形、八角形、楕円、盾型の4種類の指輪です。
②の画像は正面部分のデザイン見本で全部で9種類作りました。
③にはアルファベットの文字AからZまでの真鍮板の写真にしています。
②③の組み合わせで④の指輪になったというイメージです。
まとめ
新しい結婚指輪サンプルが完成しました。
正面部分の形を変えたり、文字を入れることでシンプルでもインパクトのある指輪になったと思います。
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