【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
オーダーメイドの指輪を作る過程#030でお客様からご注文を頂いた上下のコンビリングについて書きました。
この時は他に捻りにする、ギメルリングにするなどのアレンジも併せてご提案しました。
それから#035では天球儀の指輪を作って3㎜幅、2㎜厚のリングを4分割して重ねる部分が動くという新しいパターンに挑戦しました。
オーダー依頼の上下コンビと同じように天球儀リングの金色と銀色コンビアレンジを考えていて「通常のコンビリングをパズルのように外せる指輪」は作れないかと思いサンプルを作ることにしました。
こちらが最終的に完成した指輪で凹凸のある指輪を上下に重ねることで外側と内側の模様が変わるコンビリングになっています。
この指輪は溶接をしていないので写真のように単色と2色に交換ということもできます。
2本の指輪がパズルのように組み合っているので英語で 「組み立て/組み合わせ」という意味のASSEMBLE(アセンブル)という名前を付けました。
今回はこの指輪の完成までを解説していきます。
写真は完成品の制作途中にできた試作品です。
当初はこちらが完成品の予定でしたが、地金にしてから正面から見て左右に分かれるハーフコンビが構造的に重ねてもズレる事に気が付いたので溶接をして取り外し不可のこちらをASSEMBLE1、取り外し可能な完成品をASSEMBLE2ということにしました。
このブログ#037 パズルコンビリング①では完成するまでに作ったASSEMBLE1について書いていきます。
原型データ制作
こちらはCADでの原型制作風景です。
当初はハーフコンビリングを上下に取り外しすことができるデザインを考えていたので、凸凹の噛み合う部分をどうするかで斜めや段差など何パターンか試しました。
色々と試した結果、上の形なら指輪正面から見ても通常の正面から見て左右に分かれるハーフコンビと変わらず、上面から見ると違う地金のラインが半周は入っているように見えてデザインのアクセントになります。
ハーフコンビが出来たのを見て重なる部分を少し変えて上下コンビも作りました。
構造に問題はなさそうなので原型になるCADデータを作っていきます。
平打ちリングの状態からパーツの重なった部分が消えるCADのブール演算という機能を使って原型を作ります。
外パーツは赤、内パーツは青で重なった部分を消すと写真のように凹んだ指輪が現れます。
幅は3㎜、厚み2㎜の指輪でできています。
これでハーフ、上下のコンビがペアで完成しました。
内側の模様はそれぞれの指輪と左右対称のなっていているのでペアリングとして着けるならお互いのデザインを共有するという意味も生まれました。
同じ形の指輪が重なって1本の指輪になっているので片方を余分に作って単色、コンビをその日の気分で交換するといったこともできます。
ここから一歩踏み込んで考えます。
写真のギメルシグネットリングは4つのパーツ同士を合体させて指輪同士を繋ぐパーツの役割をさせています。
この発想でそれぞれの「繋ぎリング」を作って単体の指輪2本で上下に挟んでみます。
画像のように交差するコンビリングと中心が幅広の3層リングの2種類が出来ました。
ハーフと上下の指輪でつなぎパーツを作ってみるとアシンメトリーのデザインも1つ出来上がりました。
この指輪はパーツの交換でコンビ、単色などの変更だけでなく、繋ぎパーツを入れることで2連から3連に変更ができます。
また、溶接をしないので上下コンビリングもきれいにサイズ直しをすることができます。
単体でのデザインはシンプルですがただの重ね付けとも違い、ほかでも見たことがないのでサンプルを制作することにしました。
並べるとインパクトもありそうなのでTOPページの目立つところにも写真を並べます。
サンプル制作
データ上では計算すると5個の指輪の組み合わせで3㎜幅の2連が2本、6㎜幅の3連指輪が3本作れることになります。
ギメルシグネットリングの制作手順と同じように6㎜幅用のつなぎパーツは写真の2本の指輪を合体させて樹脂原型を造形、ゴム型をとって出来上がったWAXパターンをくっつけてからシルバーで鋳造に出します。
3連に関しては金銀の2色かPGメッキを入れた3色にするか迷いました。
今回は両端は真鍮、中心は銀で作って撮影、その後、片側の真鍮リングのみPGメッキをして撮影して2色と3色を比較して写真は良いほうを使うことにしました。
鋳造から上がってきたら湯道をカットして仕上げていきます。
デザインの変更
地金になった状態から早速作ろうとして、失敗に気が付きました。
写真右側の上下は問題ないのですが、写真左側のハーフタイプはカチッと重ならず横にずれてしまいます。
上下とハーフはセットで見せたいので色々考えた結果、両方とも溶接することにしました。
当初の予定の3色ではなく、金、銀、金の3層リングを作っていきます。
湯道をカットして、地金同士が重なる部分はダイヤモンドポイントで削っていきます。
木槌で叩いて出来るだけ指輪同士の隙間が埋まるようにします。
ここまで終わったらカラゲ線で指輪を固定してロー付けをします。
この後、全体をヤスリで削って、
サンドペーパーで磨き、スポンジヤスリで艶消しにして内面を研磨材で磨いたら完成です。
今回は2連のみもう1セット作って片方は平打ち、もう片方は甲丸にしました。
まとめ
パズルのように取り外しできる指輪が作る予定が途中で失敗したことで溶接したコンビリングになってしまいました。
#038 パズルコンビリング②ではこの指輪を改良してパーツの交換ができる完成品を作っていきます。
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