【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
オーダーメイドでダイヤモンド、石座、腕のすべてが八角形の婚約指輪を作りました。
この婚約指輪のオーダーでは八角形石座のサンプルリングがあったことで打ち合わせがスムーズでした。
腕の形に関しても他社のホームページを見ると腕の形が八角形の指輪も取り扱っているお店は多い印象でした。
結婚指輪で用意している多角形の指輪はカット面を施した10角形の指輪です。
受注した腕回りが平面な八角形の指輪は扱っているお店が多く、ご依頼がありそうなので結婚指輪用のサンプルを作ることにしました。
デザインを考える
当初はイラスト左下のデザインを結婚指輪の見本としてメンズは銀色で3㎜幅、レディースは金色で2㎜の2本セットだけを作る予定でした。
ただ、これだとどのお店にも置いてあるので写真にしたときにインパクトに欠けます。
こちらはデザイン案とホームページでどう使うかを描いたスケッチです。
数を多くして並べることでインパクトのある写真も撮影できるので何十本かをまとめて作ることにしました。
この後、順番に詳しく説明していきますが今回は3㎜幅と1.5㎜幅を合体させて一つの原型として作ってページ右側の指輪を作っていきます。
コンビリングやWAXを修正して地金にする指輪もあるのでシルバー、真鍮、WAXパターンを何個注文するかも書いておきます。
素材は真鍮メインで一部シルバーを使うだけなので金額もそこまでかかりません。
作った指輪を同じデザインカテゴリーとして並べて撮影すれば、一つ一つは比較的シンプルでもインパクトのある写真になりそうです。
ページ左側では制作スケジュールと必要なイラスト、TOPページでどう見せるかなどを書き留めてあります。
サンプル制作は出来上がりまで時間があるので、どんな写真が必要かと制作手順を先に考えて文章の下書き、イラストなどは用意しておいて指輪の撮影後、すぐにホームページに投稿できる状態まで終わらせておきます。
原型を作る
写真は原型を作ったあとにゴム型から鋳造したシルバーと真鍮の指輪です。
完成形が3㎜幅と1.5㎜幅の指輪の間の上下に湯道がついていて指輪の隙間は2㎜なので高さは約5.5㎝強です。
時間を考えたらCADでの制作が一番早いのですが、今回は一番お金のかからない作り方で説明していきます。
まずは3㎜幅と1.5㎜幅の平打ちリング2本を削って八角形リングを作ります。
WAXで作って鋳造待ちをするよりもこのほうが早いです。
2本の指輪の間に2㎜幅の真鍮棒を挟みます。
動かないように接着材かカラゲ線で固定したらロー付けをします。
その後、リング内側の角棒をニッパーでカットしてやすりで軽く整えます。
指輪の外側にはみ出た湯道は地金の流れやすさ、仕上げのしやすさを考えて余計な面に当たらない位置につけておきました。
希硫酸で洗ったら仕上げはせず、ゴム型取りと鋳造に出します。
指輪外側の湯道は出来上がりではカットをお願いします。
ニッパーで簡単に切れる位置に湯道をつけたので作業する人も手間はかからないはずです。
ゴム型、原型上がり
ゴム型と鋳造品が出来上がってきました。
今回はシルバーリングが原型のままの状態で2本と1.5㎜幅のシルバーリング3本が必要でした。
3㎜幅は3本は不要だったのでWAXをカットして1.5㎜は鋳造、3㎜はそのまま返却をお願いしました。
完成までが分かりやすいようにここからは完成品の画像を見てもらってからどうやって作ったかを説明していきます。
右上のエンゲージを抜いたこちらが出来上がりです。
幅違いのリング、
3㎜幅の形状違いのリング、
3㎜幅の4種類のコンビリング、
4.5㎜幅のコンビリングと3層のコンビリング、
1、外が六角形、内側が丸、
2、通常の平打ちリング、
3、外が丸、内が六角形
4、外が六角形、内が六角形の4種類で
ロシアの民芸品マトリョーシカのように
1つに収納できる指輪です。
ここからはこの収納できるタイプはマトリョーシカリングと呼びます。
ここからは以上の合計20本をどう作っていったかを説明していきます。
サンプル制作
まずは1.5、3、4.5㎜、6㎜幅のリングです。
鋳造から上がってきた真鍮リングを1つ選んで、
1.5と3㎜幅はニッパーでカットして磨けば完成です。
ロー付けではロー目が出るので4.5㎜、6㎜幅はワックスパターン同士を上下にくっ付けて鋳造に出します。
4.5㎜幅は1.5+3.0㎜、6㎜幅は3.0㎜+3.0㎜です。
地金になってからのほうが仕上げやすいのでコンモリとさせたまま鋳造に出して戻ってきたら仕上げて完成です。
次は「形状違い」のリングです。
基本デザインスタンダートの八角形版になります。
3㎜幅の平打ちをやすりで削れば、甲丸、鎬、三角を作ることができます。
ライン入りに関しては平打ちリングに糸鋸で指輪の中心に溝を入れて、1㎜弱のシリコンゴムで磨きます。
鏡面仕上げなら研磨剤付きの紙のホイールで磨きますが今回は周りに合わせて磨きません。
次は4種類の3㎜幅コンビリングです。
これも結婚指輪で見本を作った4種類のコンビの八角形版になります。
そこまで金額は変わりませんが、価格の高いシルバー部分が最も少なくてすむように真鍮メインで作っていきます。
内外コンビは3㎜幅のWAXをリーマーで削って厚みを薄くします。
鋳造から真鍮になって戻ってきたら、内側に1㎜厚のシルバーリングを入れてロー付けします。
2枚を重ねた状態でサイズが大きくならないように注意しながら、芯金に入れて木槌でたたくと隙間が埋まって溶接するときにロー材の流れもスムーズです。
上下コンビは1.5㎜幅をロー付けするだけです。
ハーフと一部コンビはシルバーのリング1本を半分と4分の一2個に切り分けて真鍮リングと組み合わせます。
4分の1のシルバーは余ることになります。
ハーフと一部コンビのコンビリングは細身の糸鋸で分割する際に指輪の左右対対象を崩さないようにカットします。
次は4.5㎜幅のコンビリングです。
アシンメトリーな幅3㎜と1.5㎜のコンビはシルバーと真鍮のリング2本の片側を交換して溶接して作ります。
1.5㎜のサンドイッチ状コンビリングは3本を重ねて溶接します。
最後はマトリョーシカリング4本です。
まずは3㎜幅の八角形リング1本を仕上げて内外が八角形と内外が丸の指輪を作ります。
チューブWAXに八角形の地金指輪を乗せてハンドバーナーで地金板を熱します。
熱せられた地金板の重さで下の指輪がWAXに沈んでひっくりひっくり返すと写真のような状態になっています。
指輪をWAXから取り出して、はみ出した部分を削ってその輪郭をケガキで2㎜内側と外側に線を引きます。
このWAXが内外が八角形と内外が丸の指輪になります。
地金になったらケガいた線の外側を糸鋸で削ってヤスリで成形します。
この方法なら手間のかかる左右対称さの調整も簡単で制作時間も短くて済みます。
内外が八角形と内外が丸の指輪が鋳造から上がってきたら仕上げます。
一番外側の外は丸、内側は八角形の指輪は先ほどと同じように内外が八角形の指輪をWAX板の上に置いて熱で沈ませて作っていきます。
鋳造に出して真鍮になって戻ってきたら仕上げてマトリョーシカ状リングも完成です。
以上が20本の八角形リングのつくり方です。
納期を考えてWAXの指輪を先に作ってから、鋳造待ちの間に地金リングを作っています。
アイキャッチ用リング
ここまでに作ったサンプル以外にHPのアイキャッチ用にインパクトのあるアレンジ例として写真のペアリングを作りました。
制作方法はマトリョーシカリングと同じです。
外側八角形・内側丸と内側八角形・外側丸のペアリングを作ります。
素材は真鍮で、
ハーフコンビになるようにメッキをします。
今回は金メッキ後に半分マスキング、ロジウムメッキという順番で作業しました。
出来上がったこの指輪をWORKSのアイキャッチ画像として使います。
#022 八角形マリッジリング②ではできた指輪をホームページに投稿していきます。
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