ジュエルクラフト東京

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オーダー結婚指輪を作る職人用
貴金属装身具1級

オーダー指輪を作る職人向け 貴金属装身具1級2
正式名称は貴金属装身具製作技能士と言って
1級の受験資格は
・実務経験のみで7年以上
・専門学校で関連する学科を修了後、
実務経験が6(4)年以上ある者
・2級資格を取得してから実務経験が2年以上ある者
・3級資格を取得してから実務経験が4年以上ある者
となっています。

自分は1度で合格できなかったので取得に関しての反省など含めて今後受験する方向けに合格する方法をまとめてみました。

仕事で会社が支援してくれる場合ではなく、個人で取得する場合を想定して説明します。

学科に関しては実技試験の翌週などにあるので過去の問題集をやっていけばそこまで難しくありません。

合格点も低いので1週間あれば十分だと思います。

問題は実技試験です。

 

オーダー指輪を作る職人向け 貴金属装身具1級2
実技試験は毎年同じで画像のペンダントを18金で7時間以内に作ります。

知り合いに聞いたところ、ミキモトの職人さんが考えた課題で彫金で使う技法の基礎が詰まっているそうです。その完成度の高さからなのか、ありがたいことに毎年同じ課題なので試験対策ができます。

申し込みをしてから試験を受けるまでの流れをまとめると

1、シルバーで一つ作ってみる
2、説明会に参加する
3、技能士会主催の講習会に参加する
4、材料、道具を用意する
5、マニュアルを作る
6、シルバーで練習する
7、金で練習する

となります。

 

1、シルバーで一つ作ってみる

オーダー指輪を作る職人向け 貴金属装身具1級3
受験の申し込みをすると製作図がもらえるので、まずはシルバーで良いので1つは完成までやってみるのがいいと思います。

それをこの後の講習会に持っていきます。

最初は下手で見られたくないと思いますが、作っておくと難しかったところが分かるのでそこをどうすればよいのかを聞くことができます。

 

2、説明会に参加する


説明会では採点の検品ポイントなどを教えてもらうことができるで参加した方がいいです。

赤字部分が検品ポイントになります。

自分は受からなかった翌年に参加しましたが、検品ポイントを知らないと受からないので必ず参加してください。

 

3、技能士会主催の講習会に参加する

説明会には技能士会所属の職人さんが来ていて無料で参加できる実技講習会に誘ってくれます。

講習会では技能士会所属の職人さんの自宅などで実際のやり方を見せて説明してくれます。

もし説明会に参加していなければ貴金属技能士会に電話して講習会がいつなのかを聞いて下さい。

会社で先輩が持っている場合は教えてもらえるので参加不要のような気もしますが、職人さんによって作業の仕方が違うので勉強になります。

簡単なやり方や試験に受かるための道具の加工方法なども教えてもらえるので教わった後でノートにまとめられるように教えてくれる職人さんの了解をもらって使っている工具をスマホで撮影させてもらい、使っている工具はどこで買っているか等のメモもしっかり取って下さい。

 

4、材料、道具を用意する

講習会でどういう道具が必要か分かったと思うので試験用の道具を用意します。

それから練習用のシルバー材料と1つでいいのでK18の練習用材料も用意します。

地金屋さんで練習用のシルバー板と丸線で注文して20枚分で当時5万円ほどでした。

これに銀の5分ロウで練習しました

今なら素材は真鍮でジュエリーの工具屋さん、ホームセンターや東急ハンズで1㎜厚の板とφ(ファイ)1㎜の丸線を買って来て自分で最初の段階までカットしてしまいます。

ロウ材は御徒町のGOSHO(ゴショ)2階の工具売り場で「真鍮ロウ」が売っていて、5㎝×5㎝で500円位なので練習では到底使いきれない量が入っています。

個人的には硬さ、ロウ材の流れ方もシルバーよりも真鍮の方が本番の金に近く練習になると思いますし、材料代は同じ20枚でも3000円位で済むと思います。

キュービックジルコニアは1つだけ買って留め、外しを繰り返して使い回します。

K18の材料も1つだけ用意して試験前日に練習します。

特にロー材が流れる火の強さ、タイミングなどはシルバーや真鍮と少し違うのでお金はかかりますが、本番で慌てないために1度は18金で練習してみてください。

K18の材料代は高かったので自分は試験が終わってから地金屋さんに売却しました。

 

5、マニュアルを作る

数人の合格者に制作方法を聞き、道具と材料も用意出来きて、色々と試行錯誤して本番での具体的な制作手順が決まったら講習会で書いたメモを元にパソコンでマニュアルを作ります。

自分が作ったものはA4で全7枚です。

 

1枚目は制作図(検品ポイントの書き込み)、
オーダー指輪を作る職人向け 貴金属装身具1級3

 

2、3枚目は工具一覧(どの作業でどの工具を使うか書き込み)、作業の時間の割り当て、
1枚目 制作図(検品ポイントの書き込み)41枚目 制作図(検品ポイントの書き込み)5

 

4~7枚目は作業手順となっています。
1枚目 制作図(検品ポイントの書き込み)6

1枚目 制作図(検品ポイントの書き込み)7

1枚目 制作図(検品ポイントの書き込み)8

1枚目 制作図(検品ポイントの書き込み)9

当時はイラストを描いたりができなかったので手書きで書きこんでいます。

一つの作業でもどの方法で作業するか、実際にやってみて自分に合った方法を取り入れてマニュアルも修正していきます。

マニュアル制作用に写真を撮りながら練習で一つ作り、まとめたらプリントして後はそれをもとに数をこなしていきます。

 

6、シルバーで練習する

1枚目 制作図(検品ポイントの書き込み)11
練習では画像のように工程ごとの目標時間を決めて銀で行います。

ヤスリ掛けや糸鋸でのカットは練習時間が増えれば自然と時間も短くなります。

誤差0.1㎜でのすり合わせやロー付けが難しいので1から完成までを何度も繰り返すのではなく、設定した時間内に終わらなかった自分が一番苦戦する部分を重点的に練習します。

 

オーダー指輪を作る職人向け 貴金属装身具1級 1
自分の場合はパーツがずれないように精密なロー付けが苦手でした。

普段は確実で速いので①レーザー溶接で仮付けしてから②ロー材も一緒に仮着、③ロー付けという弱点を補う方法で仕事していたので基本のロー付けがおろそかになっていました。

本番ではレーザー溶接ができません。

なので溶接でパーツが動かないようにロー付けを重点的に練習しました。

試験会場のミキモト装身具の本社工房ではブローパイプですが、普段使っているのはプロパン直結タイプと酸素バーナーです。

落ちた試験ではロー付けで苦戦して完成まで行かなかったので、次の試験では普段使っているハンドバーナーを持っていきましたが試験官に注意もされませんでした。

石留めに関しても普段の中石留めは彫刻台を使ってタガネとオタフク槌で行います。

ただ、配布される使っていい工具一覧を見ると彫刻台は書いていないので、ほとんどの人はスリ板に石座を固定して石留めヤットコで留めます。

これも近くの席にいたミキモトの受験生が画像のような小さい彫刻台をスリ板の上に載せて作業しているのを見て翌年真似して持っていきました。

固定は松脂ではなくヒートフォームでハンドバーナーで柔らかくしてガスボンベにガスを充てて冷却しています。

ヒートフォームは使い古しを適温で温めるとベタベタせず外すことができるので洗浄も不要です。

このように苦手部分をどうすれば上手くできるか考えながら練習をしていきます。

 

1枚目 制作図(検品ポイントの書き込み)10
それからどの作業にどの工具を使うか決めておきます。

山ほど工具を持って行って試験本番で作業に合いそうなものを選ぶと時間が無駄になります。

マニュアルの工具一覧にヤスリなど数が多くて紛らわしいものはどの作業で使うかも書き込みます。

 

1枚目 制作図(検品ポイントの書き込み)13
作業の手順も細かく決めておきます。

画像はどうすれば無駄がないか考えて決めたケガキ線の書き順です。

このように一つ一つの作業を短くできるように考えれば、その分を苦手な作業に時間を注ぐことができます。

 

7、金で練習する

1枚目 制作図(検品ポイントの書き込み)14
銀で練習したら最後は本番と同じ条件で金で練習します。

試験の前日に7時間で終わるか本番のつもりで望んで下さい。

貴金属装身具1級の取得する方法の説明は以上です。
 

 

20210412追記


先日、このブログを偶然見つけた昔の職場の後輩がお店に遊びに来てくれました。

今年の技能士試験を受けるという事で出来る範囲でアドバイス等を伝えたので、この記事を読んでいる方にもその時に話した内容を補足説明します。

お店に来てもらってまずは技能士試験の話の前に、オーダーメイドの接客方法の説明をしました。というのも、会社員時代に勤めていた宝飾店でその後輩に教えていた接客方法と比べて、お店を初めてから3年が過ぎて出来たサンプル、動画を使った説明方法などは大分変化したからです。その時に説明した内容も現在の良いと思う方法で、変化するので、他の人のやり方、他社のHPも見て、自分で考えて工夫することが大事ということを伝えました。

技能士試験も同じで、このブログの「マニュアルを作る」でUPした画像7枚は当時の自分が考えたやり方で、あくまで参考程度、正解とは思っていないのでダウンロードPDFにはせず、あえて画像も文字が見えにくくしています。7枚のPDFは渡していますが、これをそのままやっても試験には受かると思うけれど、自分で考えるという工夫をしないと間違ったことや正しくない事を教わってもそれを判断することができないでそのまま続けてしまう・・・という風な話をしました。

もちろん会社で上司、先輩はこちらのためを思って教えてくれるので言われた通りにすることも大切です。ただ、試験には受かるためにはそこから一歩踏み込んで自分に合った方法を探すほうが大事だと思います。

というのも手先の器用なベテラン職人が口頭で感覚的に方法を教えても手先の不器用な新人にできない場合があります。

教えている側は「正解を教えている」ので教わる側は同じようにできるまで努力するか、道具の工夫などで不器用でもカバーできる方法を考えないといけません。

技能士会の講習会に参加して感動した事の一つにその時教えて下さった職人さんは何人かに教わった方法の中で自分に合うやり方を見つけるようにとこちらの自主性を尊重するアドバイスをして下さったことです。

その助言を元に自分の場合も会社の先輩、技能士会の職人さん達に教わり、試験会場にいた受験生の持ってきた道具、やり方を見て試験に落ちた翌年にマニュアルをまとめて何とか受かりました。言われた通りにしか練習していたら受かっていなかったと思います。

1、シルバーで一つ作ってみる
2、説明会に参加する
3、技能士会主催の講習会に参加する
4、材料、道具を用意する
5、マニュアルを作る
6、シルバーで練習する
7、金で練習する

なので、遊びに来てくれた後輩にも1~7をそのまま真似する必要はなく、会社の人だけではなく、講習会でいろんな職人さんからも話を聞いて自分でどうすれば試験に受かるかを考えて頑張って下さいと伝えました。

それと自分で考えてまとめた手順のノートなどは今後試験を受ける人に聞かれたときにどう説明するのが一番良いかを考えてまとめておくと良いとも伝えました。

自分は後で他の人に渡せるようにPCでマニュアル化していましたが、今なら具体的な内容をブログにUPする、ユーチューブに作業動画をアップするなどもいいかもしれません。

補足内容は以上です。
 

 


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