【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
先日、ご予算は10万円位で成人式のお祝いにおじい様からお孫さんにジュエリーをプレゼントしたいとのことでご相談を受けました。
成人のお祝いというご相談は珍しく、贈るものをインターネットで調べたところ現金、財布、腕時計、万年筆、スーツ、名刺入れなどのビジネスグッズ、花のギフトなどが人気の中、ジュエリーではペンダントネックレスが成人祝いのギフトランキングで上位に入っていました。
海外では成人したときにジュエリーを送る慣習があるらしく、初めて贈られたジュエリー(もしくは自身で購入)をファーストジュエリーと呼ぶとのこと。
ほかにも生まれたときに作ったベビーリングをファーストジュエリーとして成人のお祝いに贈ることもあるようです。
調べた限り、ファーストジュエリーという慣習は日本でも知られるようになっていて冠婚葬祭で使えるパールジュエリーや誕生石、ダイヤモンドを贈ることが多い印象でした。
このファーストジュエリーを作るという流れで最終的に写真のダイヤモンドが入るスリムリングに決まったのでオーダーメイドの指輪を作る過程#002ではその流れを説明していきます。
ご来店前の準備
お孫さんも一緒にご来店されるとのことでどんなデザインになるかわからないので事前に準備をしておきます。
お店のオープン当初はマリッジリングとエンゲージリングのみでしたが、今回のような「予算は10万円以下で成人のお祝い」などに対応できるように
アザースのページを用意してあります。
どちらのページにも加工、材料代などをホームページで公開しているので組み合わせでどんなものが作れるかも分かるようになっています。
ご予算10万円というのは小粒の宝石や地金だけの既製品のジュエリーでは問題ない価格帯だと思います。
ただ、オーダーメイドでは少し大きい宝石を選ぶだけで予算をオーバーすることもよくあります。
そこでご予算内で収まるように大粒の石ではなく、直径3㎜と1.5㎜の誕生石や
パーツのオーダーをメインにオリジナルジュエリーを作る方法をご提案することにしました。
プレゼントなどで贈る相手の好みがわからない場合に一緒にご来店してデザインを決められるという点は既製品にはない、オーダーメイドの強みだと思うのでお客様が予算内で気に入ったジュエリーを作れるように説明する内容も考えておきます。
打合せ
ご予約いただいておじい様ご夫妻とお孫さんの3人でご来店されました。
お孫さんは何を作るか全く決めていない状態だったので順番に説明していきます。
Q1、指輪、ネックレス、ブレスレットなど
どのジュエリーを作るか
→指輪
(指輪以外のオーダーをご希望の方向けには
アザースというオーダーメイドをご用意しています。)
Q2、指輪のメインは宝石か地金チャームか
→宝石
Q3、宝石はダイヤモンド、誕生石(お客様は
12月生まれなのでタンザナイト)、その他の宝石か
→ダイヤモンド
Q4、ダイヤモンドの形、大きさ、
グレードはどうするか
→ラウンドブリリアントで0.1ct、
クラリティーはVSで
カットはハート&キューピッド
Q5、石座は4本爪、6本爪、覆輪のどれがいいか
もしくは他の形がいいか
→セミオーダーの覆輪
Q6、腕はどの形、テクスチャーがいいか
→甲丸で大きい槌目模様、艶消し
Q7、素材は18金、プラチナ、もしくは
石座と腕は別地金のコンビリング
→プラチナ
という風に順番に選んでいただきます。
デザインが決まったらお見積りを出します。シンプルなデザインで当初のご予算内に無事おさまりました。
指輪の制作
スリムリングの受注は今回が初めてです。
通常であればワイヤーWAXで鋳造、プラチナ石座を仕入れて溶接ですが今後の依頼も考えて原型を作ってゴム型をとっておきます。
0.1ctの覆輪石座は見本の誕生石で用意しているので今後もご依頼がありそうなので一緒にくっつけて原型を作っておきます。
ゴム型を取ったので石座なしのタイプなら鋳造依頼時に石座部分を取ってのサイズ直しをお願いします。
こちらが鋳造上がりの状態です。
鋳造から上がってきた指輪の腕の形を成型して仕入れてきたダイヤモンドを合わせます。
今回はスリムリングのご依頼が初めてだったので手打ち刻印はサービスしました。お客様のお名前を入れています。
また原型はSV石座を使ったので既成のプラチナ石座を仕入れるよりは安くなったので指輪の素材をPt950にグレードアップしました。
リングケースは安っぽくない小ぶりなサイズの箱が見つかったのでスリムリングには今後も同じ箱を使う予定です。
サプライズプロポーズなどで男性がポケットに忍ばせるのにもちょうどよいサイズになっています。
WORKSに投稿する
出来上がった指輪の画像修正をしてワークスのページに投稿します。
今回のようなダイヤモンドを覆輪留めタイプは今後もご依頼が多そうなのでワークスではスリムリングを使ったご依頼はすべて「Slim #」で番号をつける名前で投稿することにしました。
内容はここまでに書いた文章をお客様向けに簡潔にまとめたものになっています。
まとめ
成人式のお祝いで10万円位でお孫さんにファーストジュエリーを贈りたいというご依頼で準備していたスリムリングが役に立ちました。
既製品と違ってオーダーメイドは身に着ける人が好きなデザインを決められるので好みがわからない場合など今回のような贈り物としても最適ではないかと思います。
ただ、ご提案内容はまだまだ不十分なので予算内でより幅広く選べるように今後もサンプルや事例を増やして行きたいと思います。
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