ジュエルクラフト東京

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Encircle & line
- エンサークル アンド ライン -

結婚指輪として
メンズは3層コンビのフリーサイズリング、
レディースはラインの入った平打ちリングをお作りしました。
 

 

オーダーフリーサイズ&ラインリング5-2
オーダーフリーサイズ&ラインリング6-1
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加23
オーダーフリーサイズ&ラインリング6-2

指輪の幅はどちらも3㎜です。
素材はメンズがK22/Pt900のコンビ、
レディースはK18YGで中心には直径2.0㎜の
ダイヤモンドを留めて、
刻印はバスカヴィルという書体で
お二人の結婚記念日が入っています。
 

 

指輪のデザインを決める

オーダーフリーサイズ&ラインリング1-6
今回のご依頼は新婦様から写真の添付付き※で

1、新郎様の指関節が出ているので、
見本のようなフリーサイズリングを作りたい
2、他店では難しいと言われたので、
できない場合は代替え案を提案して欲しい

というお問い合わせでした。

※実物の写真が使えないので、イラストにしています。
 

 

すでにサンプルで似た形を作っていたので、メールでは画像の指輪のURLをお送りしてご希望の形で制作できますと回答、ご来店の流れとなりました。

この指輪はエンサークル(encircle)という名前でen-「その状態にする」+circle「輪」=「囲む、取り巻く」という意味で、形状は繋ぎ目のない完全な円ではなく、指に巻き付くような形、いわゆるフリーサイズ※リングです。

※「フリーサイズ」は和製英語で英語では「one size fits all」、「one size fits most」や頭文字をとって「OSFA」と表記されます。

どちらも幅は3㎜で、メンズは厚み1.8㎜の板が上部で重なり、レディースは厚み3.0㎜の丸線を巻いた形になっています。

メンズは上部で2枚の板が重なり、レディースは下部の内面を削って1.6㎜厚にすることで上部厚め、下部薄めのお揃い感を出しました。

通常の指輪のように円ではないので、全体的に曲げて変形させることで、関節が出た指でも根本でフィットさせることができます。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング1-6
このフリーサイズリングは断面が出ている形状を活かしてメンズが直径1㎜、レディースは直径2㎜のラウンド石が2PC留まるように作ってあります。

見本指輪のようにダイヤモンドも素敵ですが、ご自身とお相手の誕生石を留めるのもおすすめです。
 

 

オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加17
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加17
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加17
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加8

打合せでは
レディースは店頭サンプルのLINEを見ていただいて、3㎜幅に対して中心の溝は0.5㎜に指定、中心のダイヤは直径1.5㎜を覆輪留めとすぐに決まりました。(後日サイズを2.0㎜に変更)
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング6-1
メンズのフリーサイズリングはご希望の形で中心はPt950、上下はK18YGの3層コンビリングをご希望でした。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング7-1
3層の比率は1:2:1をご希望で構造上は問題なさそうなので、打合せ後におおよその形のデザイン画とお見積もりをお送りしました。
 

 

指輪のサイズの選び方31

指のサイズはリングゲージと呼ばれる専用の測定器具で測っていきます。
 

 
指輪のサイズの選び方15
指の根本でフィットさせる指輪の場合は通常のリングゲージではなく、ベルト状のリングゲージバンドで測ります。
 

 

オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加5

今回は

1、指の第二関節が通る部分まで広がって、
2、指の根本にフィットするデザイン

なので第二関節はリングゲージ、指の根本はリングゲージバンドで測りました。

この後、メールでご返信があり、ご依頼前に確認したい事として

・強度について問題になりそれ以降注文をお断りしていると言うお店があった
・本当に強度は大丈夫でしょうか

というメールが来ました。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加6
こういった内容の場合はメールではお客様に不安を与えない事と正直に説明する事を心がけています。

メールそのままはご紹介できないのですが、今回のデザインが決まった流れに関係するので大まかな内容を回答を説明すると

・複数店舗での3層コンビフリーサイズリング加工の可・不可と見積もり、強度の質問の推奨

・当店の場合は以前に他社製品も含めた修理もしていたので、素材と強度に関する知識はある程度あり、今回も負荷のかかる可動域に対して問題ないと思える厚みと幅でご提案している事

・それでも目に見えない鋳造不良や想定以上の無理な力が加えると割れることもあるので、絶対ではないこと。

・万が一、壊れても修理可能ですが、お送りした加工規約にはご了解の上、ご依頼いただきたい事。

というような内容に追加して、第一希望のフリーサイズとは違う、強度を上げた改善型のデザインをご提案しました。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加13
第一希望のデザインは1色なら問題ないのですが、3層コンビでは途中から先細で単色になるので、模様が不自然に途切れる形に違和感を感じるかもしれないと思い、

1、3層のコンビ
2、フリーサイズ
3、①より強度もある

と、ご希望の条件を満たしていて、背面部分を正面に向けても断面がデザインの一部として成り立っていて違和感がないデザインをご提案しました。

サンプルのエンサークル(encircle)はフリーサイズの形状をデザインの特徴として正面に向けて着けることを想定して作っています。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加15
新たにご提案した指輪はフリーサイズの形状を目立たせないようにリングの厚みは2㎜に収まるように作っています。

可動する部分は背面に隠れるので、指に着けて正面から見てもフリーサイズリングとはわかりません。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング6-1
この後、ご希望のデザインのままでオーダーを依頼したというご返信がありました。
 

 

指輪を作る

オーダーフリーサイズ&ラインリング3-1
デザインが決まったので、原型を作っていきます。今回も制作方法はCADで、画像は制作過程も載せています。

お見積りでお送りしたデザイン画はおおよその形なので、まずは細かい部分を微調整、ご希望の形を幅3㎜、厚み2㎜の範囲で強度が出るように考えていきます。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加10
画像のような板状でコンビリングの形を作っていきます。

画像のデザイン画は完成図です。

今回は3層のコンビリングなので、

1、3つのパーツ状で原型を制作、
2、ゴム型を取ってWAXパターンを取り出し、
3、中心パーツはプラチナ、両端パーツは金で鋳造、
4、溶接して仕上げ

という工程で作っていきます。

完成したときに重なる部分は指輪の内側の溝はゴム型を取れる形で原型を作らないといけないので、画像のような大き目の円形にします。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加11
この原型が地金になったあとはコンビリングにするために溶接という作業があります。

今回のような3層構造で3つのパーツの広い面同士をズレなく溶接するのは鍛造技法などの手作業だと調整に時間がかかります。

CADでコンビリングの原型を作る場合は溶接個所には凸凹の突起部分を付けています。こうすることでパズルのように面同士が合わさるので、今回のようなリング内部が凹んだようなイレギュラーなパーツでも問題なく溶接することができます。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加9
凸凹の突起部分は1つの面につき3つほどあります。0.1㎜単位で微調整ができるので、このデザインに対して最適と思える場所に凸凹のデータをつけて、3本のパーツを隙間を開けた状態で柱状パーツを足してゴム型が取れる形にします。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング3-1
シンプルなレディースの原型とメンズの原型を合体させたら、お客様には指輪の平面展開図、完成形と原型データの3つを1つにまとめたデザイン画を作ってメールで送ります。この時にメンズは完成形と原型は形が違うことはお伝えしています。

オーダーのデザイン確認では3Dの原型データとそれをカラーで撮影したイラストをまとめたPDFの2つを送っています。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング6-1
普段はこれだけなのですが、今回はこのデザイン確認と一緒に何度も指輪の着け外しをしても壊れずらい工夫として素材の変更をご提案しました。
 

 

オーダーフリーサイズ&ラインリング4-1
オーダーフリーサイズ&ラインリング4-1
オーダーフリーサイズ&ラインリング2-2
オーダーフリーサイズ&ラインリング2-2

指輪の素材は
プラチナ950、900
18金イエロー、ピンク、
ホワイト(ライトイエローとライトグレー)
の6色をご用意しています。

18金(K18)は75パーセントの金に25%の別素材を混ぜることでイエロー、ピンク、ホワイトなどの色を出すことができます。

ブライダルリングで使われる高品位の地金素材はプラチナ1000、純金、K22、グリーンゴールドなどもありますが、他のジュエリーと合わせて使うことやサイズ直しなどのアフターフォローができる事も考えて定番と呼べる6種類に絞りました。

どうして金やプラチナに別素材を混ぜるとかというと単体では柔らかすぎてジュエリー加工に向かないからです。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング4-5
今回の指輪には下半分を外側に少し開いて、指の根元にフィットさせてまた元に戻すという動きを何度も繰り返すとい負荷がかかります。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加18
画像は客様にお送りしたPDFで

おおよその内容は

1、形状での強度の改善

最初にご提案したデザインよりも強度が上がるように厚みを調整、下半分を可動域にして曲げる力が分散される、折れづらい構造にしています。

2、地金での改善

硬度一覧にあるようにK18は硬い素材のため、傷は付きにくいのですが、薄くても変形させるには少し硬めで力が必要です。

内径の3.5号分を何度も動かすならK18より柔らかくバネが効いていない素材のほうが適しているので、何度も曲げるならPt950Hd/K18のコンビよりも強度と柔らかさのバランスが良いのでPt900/K22に変更をご提案しました。

Pt900…通常のハードプラチナではない
K22…91.7パーセントが金。K18より純度が高く、柔らかい。色はよ~く見るとK18よりやや赤味がある。ブランドのクロムハーツの金はこのK22を使用

PDFにはお客様に納得していただけるように素材ごとのビッカース硬度も乗せています。

このメンズの素材変更もOKをもらいました。レディースはK18YGのままです。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加9
これで樹脂原形の確認をしていただいたら完成まで進めます。
 

オーダーフリーサイズ&ラインリング3-2
オーダーフリーサイズ&ラインリング3-3
オーダーフリーサイズ&ラインリング3-4
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加4

樹脂造形のゴム型を取ってWAXパターンを取り出したら、
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング3-5
パーツごとにカットして、指定の素材で鋳造して仕上げていきます。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加16
今回のPt900/K22コンビリングは
鋳造から上がって仕上げる前に
SV925/真鍮で溶接の練習をしてから
本番に挑んでいます。

これはCADのデータ上は問題がなくても地金になってからな何らかの不具合がある場合があるからです。

練習のSV925/真鍮で作ってみて何度かサイズ調整で動かして強度を確認、ヒビが入ったりといった問題はおきませんでした。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング3-5
練習はうまくいったので、本番のPt900/K22コンビ加工に移ります。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング4-4
Pt900/K22は溶接をして、
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング4-3
オーダーフリーサイズ&ラインリング4-2
メンズとレディースをそれぞれサイズ出し、

さっと仕上げたらPt900/K22コンビリングは練習した指輪と同じように動かしてヒビが入ったりといった問題が起きないか確認をしました。

硬さについては予想通り、SV925/真鍮よりも柔らかく片手の指輪の力で曲げられました。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング6-2
この曲げの確認が終わったらレーザー刻印を入れて、
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング5-1
最終仕上げをして完成です。
 

 

指輪のご納品

オーダーフリーサイズ&ラインリング7-2
オーダーフリーサイズ&ラインリング7-1
こちらがご納品セット一式で、
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加22
ご納品時の写真と
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加23
手元のUPで、メンズの指輪は指の第二関節が出ていても根本でフィットしているのがわかるかと思います。

練習用で作ったSV925/真鍮リングも特典としてお渡しするので、見本として曲げて根元にフィットさせる手順の説明もしました。
 

 

まとめ

オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加19
2018年にお店を初めて今回の納品があった2024年1月で7年目となります。

画像は少し前に撮影した打合せ前の写真で、現在は大きめのリングトレイは6枚+ミニトレイ2枚の合計で約500本分のサンプルリングをご用意しています。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング 追加20
こちらの写真はお店を初めてすぐの頃に撮影した打ち合わせ用セットです。

リングサンプルはミニトレイで4枚に収まる位の数しかなかったので、今見るとよくこのサンプルの数でお店を始めようと思ったなぁ(汗)という感じです。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング5-1
この数年間でサンプルの数と共に加工のレベルも徐々に上がってきて、今回のような他店で断られたというご依頼もCADという技術の進歩のおかげでお受けできるようになってきました。(手作り技法だけでお受けすると金額は大分高くなっていたとおもいます。)
 

 

指輪の作り方1
指輪の作り方2

指輪の制作方法はデザインに合わせて4つから選べるようにしていますが、現在はオーダーメイドはほぼCADを使って作っています。
 

 
オーダーフリーサイズ&ラインリング1-2
CADを使ってオーダーリングを作る場合のメリットとして

・手作業では難しい複雑な形を作れる。
・原型データは立体のデザイン画としてお客様に見せられる。(手書きのデザイン画のような出来上がりとの誤差がない)
・原型制作の納期が短い
・原型制作の試作をPC上で何パターンも試して比較できる

などがあります。

お見積りは無料ですので、今回のご依頼のように他店で断られた場合などもお気軽にお問合せ下さい。


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