【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
3本の指輪同士が絡み合った3連リング、トリニティリングをモチーフにして結婚指輪の新型を追加しました。
合計4型作ったので今回はこの指輪について書いていきます。
デザインを考える
ジュエリー用語辞典にも載っているトリニティリングとは画像のように3つの指輪が絡み合った3連リングの事を指します。
これは1924年にルイ・カルティエが考案し、イエローが忠誠、ピンクが愛、ホワイトは友情という意味が込められた3色ゴールドタイプが有名です。
トリニティ (trinity) という言葉は、3重や3組などを意味するトライン (trine) の名詞形で、キリスト教で神・キリスト・聖霊を一体と見る三位一体はthe Trinity と表記されます。
3連リング自体は色々なブランドから出ていて、それこそシルバーアクセサリーなどでも見かけますが、結婚指輪として身に着けるというのはあまり聞きません。金額的に3連リングを当店のオーダー料金で作るとカルティエよりも高くなるのでサンプルも作っていませんでした。
ただ、この指輪を見ていて3本の輪が絡み合ったデザインを模様として3㎜幅に収めて1本の指輪にしたら結婚指輪としてふさわしいデザインになるかも知れないと思いCADでデータを作ってみることにしました。
まずは3連の指輪、イラストなどを集めます。
3本の輪を絡ませるタイプで考えていましたが、画像を集めてみると1本の線を3重に絡ませて1本のリングにするデザインもあり、とりあえず両方作ってみることにしました。
3㎜幅に収まるようにして1本の線を3重に絡ませて1本のリングにするデザインを作ってみると、3連タイプに比べて模様が間延びして物足りない印象になりました。
そこで今回のサンプルは画像の3連タイプと
甲丸リングの外側に三連リングが模様として入るタイプの2種類を作ることにしました。
それからトリニティリングは3色タイプが定番です。先ほど説明した3㎜幅とは別に画像のような分解できる3連リングを作ることにしました。
普通の3連リングと違い、着けていて指輪が動くことがないように指輪同士に凸凹のポッチを付けました。
指輪1本の幅は1.5㎜で3本が合わさった時の幅は5㎜です。できるだけ3本が重なった時の厚みを抑える目的で重なる部分の片側は凹むようになっています。
このデザインもポッチの位置や深さ、オーダーでご注文が入った場合のサイズ調整のしやすいデータ制作などに大分時間を使いました。この指輪は分解できる3本とも同じデザインです。
先ほど説明した3㎜幅リング2本と一緒に樹脂造形するので1つにまとます。
分解できる3本セットはそのうちの2本を原型にしてまとめました。
指輪を作る
樹脂原型が出来てWAXパターンが上がってきたら真鍮で鋳造に出します。
分解できる3本は後でロー付けしなくて済むように画像のように3本を1セットにして鋳造に出します。鋳造から上がってきたら指輪同士を繋ぐ湯道をカットして磨けば溶接する手間が省けます。
幅1.5㎜のワイヤーワックスでシンプルな3連リングも作ったので一緒に鋳造に出します。
鋳造から上がってきたら仕上げてメッキに出します。
完成したのがこちらです。
幅3㎜の3連模様で指輪の内側が埋まったタイプ、
幅3㎜の甲丸リングの外側に三連模様として入るタイプ、
幅5㎜で分解のできる3連タイプの3つです。
それぞれ結婚指輪サンプルとして金色、銀色の1ペアでメッキをしています。
分解のできる3連タイプは画像の3つのテクスチャー違いと
3色地金タイプも用意しました。
分解する仕組みは仕上げやコンビ素材で作るためなのでオーダーの場合は動かないように最後にロー付けします。
ワイヤーワックスから作ったシンプルな3連リングは金メッキしました。
幅5㎜で分解のできる3連タイプと比較する画像も作りました。
上の写真は今回作った4種類を1つにまとめた画像です。結婚指輪には中段右の幅3㎜の3連模様で指輪の内側が埋まったタイプをメイン画像として使います。
HPで公開する
まずは結婚指輪ページで公開します。
3連リングを結婚指輪にするというのはあまり聞かないので基本デザインのパターン(模様)カテゴリーに3連模様で指輪の内側が埋まったタイプを追加をしました。名前はそのまま「Trinity」です。
制作は幅3㎜からで金額は1本120000円からです。
幅3㎜の甲丸リングの外側に三連模様として入るタイプと幅5㎜で分解のできる3連タイプはアレンジ例として載せています。
ワークスのページにはアイキャッチ画像は幅5㎜で分解のできる3連の3色リングにしたのでトリニティ/トリコロールという名前で投稿しました。
1.5㎜幅のリング3本を重なる部分もあるので5㎜幅で計算、3本の指輪同士を動かないようにする溶接加工6か所を特殊トリニティリング加工として追加料金がかかるようにしました。
フォトギャラリーには画像のように投稿して一番下の正方形画像にはワークスページのトリニティ/トリコロールへのリンクを張ってあります。
まとめ
三連(トリニティ)リングについては以上です。
三連リング自体は結婚指輪向きではありませんが、「模様」としてデザインすることで結婚指輪として違和感のないリングになったのではないかと思います。
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