ジュエルクラフト東京

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#059
リアル動物ペンダント

【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】

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お客様からのご注文で羊のペンダントを作りました。
今回はこのペンダントが完成するまでを説明していきます。

画像のようなリアルな形はジュエリーのデザインでは具象系○○と言ったりしますが、ブログのタイトルはわかりやすくリアル動物ペンダントにしました。
(具象とは具体的な対象物を極端な捨象なしに具体的に描いた物で反対語は抽象)

 

最初のお問い合わせ

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最初のお問合せは電話で「持っていた羊のペンダントを紛失したので同じものは作れますか?」というご質問でした。

ブランドなどで著作権のあるデザインの場合はお断りする事もあるので「メールかライン@から画像を送っていただければお見積りをお出しできます」とお答えして画像を何枚か送っていただきました。

海外のジュエリー工房で購入した作品でサイズは羊本体が縦横10㎜、厚み3㎜で素材や宝石は不明との事でした。

自分で加工をする職人さんであれば、この小ささでリアルな表情や毛並みなどを再現できるかどうか、どの程度まで似せればお客様が納得してもらえるかの線引きが難しいので受けるかどうか悩むご依頼です。自分で加工をしない方にとっては依頼する職人や外注先を探すのに苦労するデザインだと思います。

具象系のデザインは出来上がってみたらイメージと違うというのが起こりやすい形なのでお客様には「ほぼ」同じ、微妙に表情は異なるという点を協調してご説明してからメールでお見積りをお出ししました。

 

原型データを作る

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制作方法に関しては手作りの職人さんであればワックスを削って作る方がほとんどだと思います。

オーダーメイドでは原型を1から作るので金額は当然、既製品に比べて高くなるので
お見積り額が高くなるのを抑えるために必要な地金重量は正確に出します。

当店は
1、原型データを地金にした際の重量計算機能がある
2、受注した場合におおよその羊の形から削りだしが出来る
という理由でCADを使って原型を作りました。

現在使っているライノセラスというCADソフトは面同士を張り合わせて原型データを作るので今回のような具象系の毛並みなどを再現するのには向いていませんが、工夫して作っていきます。。使ったことはないのですが、ZBrush (ゼットブラシ)や3Designなどのソフトがリアルな動物の原型を作るのには向いているようです。

 

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送っていただいたペンダント画像をCADに取り込んで輪郭をスケッチしてから風船のような頭、顔、胴体、足、尻尾などの簡単なパーツを作って合体させて羊本体を作ります。ワックスになってから削って見本に近づけるので少し肉厚にしてあります。

 

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羊本体が完成したら石座とそれに付いている小さい丸カン、ペンダントのバチカンになる大きい丸カンを作って合体させて原型データは完成です。

 

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ペンダントのバチカンになる大きい丸カンはパーツ屋さんで購入やちょうど良いサイズの地金線を購入して丸めて作ると手間がかかる分、お見積りに足さないといけなくなるので羊の背中に2か所の湯道で固定して原型の一部に含めることにしました。大きい丸カンの大きさは手持ちのチェーンのプレートが通るサイズにしてあります。

宝石は直径1.5㎜が留める石座を取り付けました。長く使っていて壊れるとしたらこの石座の丸カンか羊の頭の繋ぎ目部分なので接地面が増える強度補強の工夫をしてあります。

 

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原型データが出来たのでK18で作った場合の重さ=地金代が分かったのでお見積りを作っていきます。

 

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ペンダントはアザース(指輪以外のパーツオーダー)の料金体系で計算していきます。ホームページでは料金表を公開していてパーツのオーダー基本料は30000円で地金は1g1万円で計算します。

 

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今回は具象系でWAXになってからの加工の手間もかかるので追加料金を足しました。(受注品の価格は非公開にしているので他の価格部分はピクセル化しています。)

金額に関しては1点物は量産品よりも高くなるのでお客様に納得していただけるように画像のように項目ごとに分けて詳しく書いています。

 

ペンダントの制作

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お見積り、ご来店して打ち合わせ後にお客様からご連絡があり、チェーンは無しでペンダントのみご注文となったので樹脂造形を依頼します。今回はコストを抑えるために他のサンプルリングと一緒にゴム型を取りました。

 

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WAXが出来上がったら早速削っていきます。

大きい丸カンは作業の邪魔なので一度切り離してペンダント本体が削り終わってからアルコールランプで熱した針を使って再度くっつけました。

 

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お客様には大きさが分かるように定規と100円玉WAXを削る前と後を並べた画像をお送りします。おおよその形でOKが出たら鋳造に出して地金になってから最終調整をします。

 

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18金イエローゴールドになって鋳造から上がってきました。

ここからはより細かく糸鋸、笹刃ヤスリ、鏨、ドリルなど各種工具を使って作業をしていきます。

 

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まずは背中の大きい丸カンをカットして全体をある程度成型します。その後、大きい丸カンを小さい丸カンに通して断面を溶接してから本体の毛並みなどを再現に移ります。

彫金机に取り付けてる卓上ライトは中心に2倍に拡大できる拡大鏡が付いているので最初はこのレンズを通して作業していました。

 

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普段は見本の画像を印刷して参考にしますが、今回は見本の画像をスマホに表示、指で画像の大きさを調整して実際のペンダントと並べて加工作業をしました。

 

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作業途中で以前に中古で購入した鑑別用の顕微鏡があったことを思い出したので、下に小さな彫刻台を置いて両手が使える状態でペンダントの顔や毛並みの再現、

 

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その後、石留めをしました。

 

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地金になってお客様に完成写真のメールを送り、この形で問題ないか、希望修正箇所も聞きます。

 

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その後、顔を小さく、首や足を細く、後ろ脚をより見本に忠実に削り直し、全体を鏡面仕上げに変更してお客様からOKが出たら金種と石目の刻印を打って完成です。

 

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全長10㎜なので肉眼で見る分には見本と比較してもそこまで大きな違いはないと思います。

 

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今回はチェーンなしでのご依頼なのでお客様が自分でペンダントの取り付けができるように手持ちのチェーンで丸カンがスムーズに出し入れできることも確認してあります。

 

ホームページで公開する

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タイトルはシンプルにSHEEP PENDANT(羊のペンダント)にしてホームぺージの作品集のページでご納品後、しばらくして公開する予定です。

 

まとめ

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全長1㎝のリアルな羊ペンダントのオーダーについては以上です。普段はこういった具象デザインのご依頼はほぼないので受注するか迷いました。

手作り職人でも地金メインの仕事が得意分野の人にとっては(自分もそうです、CADもオペレーターのレベルではないので)全長1㎝のリアルな動物の原型を作る作業は不慣れな作業で時間がかかると思うので詳しくまとめてみました。

1、CADを使っておおよそのWAX原型を用意
2、顕微鏡を使って両手が自由な状態で細かく彫る

という2つの工夫でお客様に納得して頂けるクオリティまで持っていけると思います。

 


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