【 オーダーメイドの指輪を作る過程 】
結婚指輪を作るときに制作に手間がかかりそうで候補から外れた指輪に「天球儀リング」があります。
NET検索すると海外サイトでは良く見ますが、日本国内では関西で1店しか作っているお店が見つからず、見た目のインパクトがあるので結婚指輪の基本デザイン ヒストリカルに追加することにしました。
今回はこの指輪ができるまでを書いていきます。
天球儀リングとは
「天球儀」とは紀元前の古代ギリシアで発明されたとされ、地球の周りの星の動きを説明するのに使われる模型で17世紀にヨーロッパで望遠鏡が発明されるまでは天文学者にとって、天球上の星の配置を決定するための重要な道具だったそうです。
「天球儀」に関する詳しい内容はウィキペディアを見てもらうとして、海外のサイトでarmillary sphere ring(アーミラリ スフィア/天球儀)かastro ring(アストロリング)で検索するとこのデザインをベースにした指輪を見つけることができます。
アンティークでも見つけることができ、天文学がとても盛り上がっていた17世紀の天文学者たちは自分の職業、天文学への興味があることを示すためにこの天球儀リングを身につけたそうです。
ちなみに同時代には万有引力の法則を考案したアイザックニュートンや地動説のガリレオ・ガリレイがいます。
デザインを考えて原型データを作る
まずはこのarmillary sphere ringを画像検索でどんなデザインがあるのかと穴とビスの部分をどこにつけるかやどういう仕組みで動くのか調べます。
おおよそ仕組みがわかったら、サイズ15号で幅3㎜、厚み2㎜の平打ちリングのCADデータを作っていきます。
構造自体はシンプルなので出来上がりを見ると作り方はわかると思うので省きますが、データ上で分割と結合を繰り返して4本の指輪にしています。
これで内側には天球儀リングではよく見かける星座のマークを入れることにしました。
模様は上下で分割したときにバランスがいいように微調整しています。
指輪1本の板厚は1㎜なのでイラストのへこみは0.5㎜で作りました。
これで4本の指輪ができたので動かしたときにどうなるか見ます。
樹脂造形とサンプル制作
データをもってお見積りに行くと星座の模様がある部分にサポートを立てるので造形できないといわれました。
他にに3件の造形屋さんに聞きに行きましたが同様の回答でした。
そこで文字はなしで見積もりを出してもらい、一番安かったお店に造形をお願いしました。
出来上がったので受け取りに行くと樹脂ではなく、直接鋳造タイプのWAX樹脂でした。
シルバー、焼きゴムと手順は普段と今までと異なりますがこのまま進めることにします。
今回は文字なしになったので結婚指輪用にペアで金、銀メッキの2本とアレンジ例として内外コンビ2本でこちらにレーザー刻印で星座を入れることにしました。
鋳造作業を経て地金になって上がってきた指輪を仕上げていきます。
樹脂原型の積層ピッチが荒く仕上げは大変そうですが極力薄くしないように気を付けて作業していきます。
湯道を切って指輪を組み立てていきます。
ここで指輪同士が重なる厚み0.5㎜の部分が割れるという問題が発生しました。
内外のコンビリングは制作を止めてマリッジリング用の単色2本だけを作ることにしました。
銀と真鍮で1本ずつ作ります。
可動部分の隙間にメッキが乗らない場合も考えて銀の指輪をロジウムメッキ、真鍮の指輪を金メッキにします。
完成したら結婚指輪ページに追加とSNSに投稿します。
結婚指輪ページに追加する
まずは写真のアイキャッチ画像を作りました。
指輪を閉じた状態と開いた状態でどのように動くかがわかりやすいと思います。
内容は
・天球儀の指輪の歴史
・指輪の寸法
・アレンジ見本
・サイズ直し不可
などここまでに書いた内容をまとめました。
インスタグラムにも投稿します。
天球儀とその関連画像を全部で12枚投稿しました。
料金表のページに加える
このブログを書いている段階ではまだ追加していませんが、PRICEのページには基本料10万円+幅3㎜に変更2万円+それに3連ギメルと同じくらいの難易度だと思うので特殊加工6万円で18万円から制作にします。
幅は3㎜から製作可能ということにします。
それからこの指輪だけはアフターフォローでのサイズ直しは不可と書いておきます。
まとめ
結婚指輪のヒストリカルに見た目のインパクトがある天球儀リングが追加されました。
2㎜圧で作った場合は可動部分は0.5㎜と強度が不安なのでオーダーの際は0.7㎜(指輪の厚みは2.8㎜)と少し厚めに変更してをおすすめする予定です。
厚みを増せば甲丸タイプなども作ることができそうです。
アレンジ例としては4本の指輪でできているので内外、上下のコンビリングなども面白いかもしれません。
これでクラダリングの修正とフェデリング、ポイズンリング、スネイクリング、ヘラクレスノットリング、天球儀リングの合計5セットを追加しました。
結婚指輪の基本デザイン ヒストリカルに追加はひとまず終わりです。
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